第102話 ぽんぽこ日和⑦
『古民家レストラン ハッピーエンド』でのB定食を味わいながら『近代化された精神を利用した武具』に関してチズミからアドバイスを淡々と貰っていた。
1、ファバーダの住人たちは基本、精神属性に対して『神秘的扱い』をしている。ここで言う神秘的とは『神として崇める』と直訳して構わない。
2、武具・日常雑貨・街頭の1本まで『スフィア』もしくは『素材が持つ精神』に依存度が高い。よって、鍛冶士による再付与が必要となる。武具に関しては戦闘をしないと劣化はしない。本人の精神も同時に消耗するが、その武具のもつ潜在能力に大きく左右される。
フライパンやお鍋に精神を大きく付与すると大変なことになる!本人のキャパシティオーバーの精神消耗も出来てしまう。
ここで重要なのが、『武器の潜在能力×使い手の精神=攻撃力』とはならず、『武器の潜在能力=使い手の精神の消耗度=攻撃力』となってしまう。その関係で、たとえ異世界転移でチート級能力を持っていたとしても『武器の潜在能力』を超えることは出来ないらしい。
その逆に精神が低い人間が『武器の潜在能力』の高い装備をすると一気に命を落とすほど持っていかれる可能性がある。
――ならば『街灯』はどうなる?
武器として使用するのと『設備』として利用するのでは対象が変わる事になる。 『街灯の精神付与値=土地の持つ精神=明るさや照射距離』になる。
シズクたちがせっせと設置した街灯の灯りが太陽が落ちてから光りだすのは、『土地の持つ精神(火属性<闇>)=街灯の属性(火属性<闇>)』となり、夕刻から上昇する(火属性<闇>)の精神を利用している。それを実現=リンクさせるために『夜の火の刻』に属性付与を実行した。
――エルチェが言っていった。
「それはね……シズク、この街の力で発光させるのよ」
――っと言っていた。
ここで重要なのが、付与出来る最大値だが『スフィアと鍛治士に依存』するとの事。『素材となるスフィアの質と量=鍛冶士の技量』との相関関係があり、最強の精神を持つ異世界転移者であったともしても、『武器の潜在能力=使い手の精神の消耗度=攻撃力』の関係性で、『最強で俺強えー!』が出来ない。
――何故か?
『大阪城を誰が建てたか?』
『それは大工だろ……』
っという、なぞなぞの解と一緒で、『鍛冶士の技量』を超えることは無い。
「なるほど……!排気量マウントするオジサンと一緒だね」
シズクは深妙な面持ちで答える。
「私が乗ってると、センダボもニダボに見えるらしく、舐めプしたオジサンによく声かけられる!」
『お!これ250シーシ?ああ!緑の枠付いてるから400か!嬢ちゃん!』
よくある悲惨な光景だ。
シズクは下手すると250ccより軽い1000ccに乗っている!
「……ふむ。それは一般人には例えとして全く判らんぞ!」
「……おち○ぽ騎士団の息子がリッターサイズだったとしても、使うことが無い無用の長物であったり、パパの財力でバイクを転がす姫との相関関係に例えたほうが解りやすい」
――シズクはジト目キメて……。
「いや……確か、護摩山で会った時に、『見よ!援の助の交』だと大きい声で指を指した花梨さんが言う事……私のセンダボは印税よ」
よって、シズクのバイクは……。
『シズクのバイクCBR1000RR SP2=シズクの印税=シズクのバイク』
力関係はとても綺麗だ。
パパ活レーシングどころか、親の金レーシングでもなく、世間から巻き上げた金で仕上がっていた。よって、バイクの能力を超越することもなく、シズクの技量も超えることは不可能である。
「話の持って行き方がアレだけど……」
チズミは前提条件的な素振りで返答はしているが、先程の花梨とシズクの会話について来るチズミの闇も深い。
「ようは、あのエスロクの事だよね?」
「まあ、このセカイの住人たちが意外とやらないことがあってね、それが3番目の条件にあたるんだけど……」
3、直列・並列が出来る!
「解りやすく説明すれば、科学技術を使って『消耗度の低い精神具』を使うのよ」
「大火力の兵器は消費量がバカでかい割に、効率がとても悪いの」
「カグツチのギガフレアを1000とした場合、ファイヤーは1ね」
「では、そのギガフレアを1発撃つに必要な精神量は?シズクくん!」
っと、自称物知り博士が出す嫌なクイズを出してきた。
「うーん、その問題の出し方ははっきり言ってダメだし、私は答えない。例え答えが、1000ではなく、1億回分のファイヤーと一緒だと知っていてもね」
シズクは若干機嫌を損ねた!……が結局答えているように思える。
「……って、やっぱり答え知ったのね……」
「ロケット部のロケットやエスロクがハイパーマシーンなのは、並列処理しているからなの。あと、カグツチ達の竈山神社の警備システムやドール、武具・パペット兵器に至るまでね」
――シズクは聞き逃さなかった!
「え!?あの神社にドールいるの!」
目をギラつかせながら問い詰める!
「えええ!?、ドルフィードリーミーの限定モデルが娘がいるわ。ただ、なんだっけ?……異世界転生モノの輪廻転生を繰り返す主人公をお世話するモーニングスタをブン回す」
よりにもよって、異世界転生もののドールであった!
「リムさん!がいるの!!しかも自立指向性ドールですと!」
「エルチェとはまた違うけど。それはそれでいい!」
「――ちょっと!シズク!私とユニゾンしたまま忘れてない!?」
絶賛シンクロ中であるエルチェから問いかけられる。
……危うくエルチェの存在を忘れて、『一体化』しかけていた。
「……あー……ちょーっと今、ユニゾン解除まってね!」
「――わかった……」
「どうかしました?シズク様……シズクさん?」
「ううん!何でもないけど……何でもある!けどなんでもない」
「で、リムさんを詳しく!」
――カグツチ達の竈山神社の警備システムに関してと合わせて『並列』について詳しく掘り下げる事になった。