第97話 ぽんぽこ日和② 田貫 チズミ
宮前駅周辺に出ている文化祭の延長上のような催し物をウロウロしていて気づいた事が……!
「……ふむ、独自通貨かと思ったが、『円』が使えるのか……」
「……しかも、普通にタッチ決済出来るとか……どうなってもない異世界だな」
ハイパー未来感があるセカイだが、使える通貨と使用方法が普通に『スマホでタッチ決済』出来てしまう。ある意味困った事になっている。
異世界転移する度に『通貨危機』が!とはならなかったが、ある意味通貨危機だ!
「……私の探偵事務所の売上はとても低い……はやくもともセカイに戻らんと円が尽きる!」
花梨が出店の『焼きトウモロコシ』を買おうとしているが決済に戸惑いをみせる!
「あ!払いますよー!」
――『タントーン!』
――『250円(税込み)』
「……!?」
「……税金も取られたぞ!」
異世界に来て消費税まで支払うことになる!
「このセカイ?カグツチの妄想空間?って訳でもないのですね。普通に私達と同じセカイの通貨が使えて、かつ、『消費税8%』で減税措置されてる」
『焼きトウモロコシ』はお持ち帰りだ!店内飲食だと10%課税される為、やはりシズク達のセカイと全く同じ税だった。
「……で、良いのか買ってもらって?」
既に半分焼きトウモロコシはカリンの胃袋と吸収されていた!
「今回の事は、ワタシ絡みですし……経費です」
花梨よりハイパー稼いでいるシズクだ!
カーハー・ツヴァイで『マネーブリッジ』ができた。『カーハー・ツヴァイ支店』でアローナのゴールドを入金すると外貨預金が出来るというチートAMTがあった。
――外貨というのは『円』になる。
そのATMだが、実は『アローナ支店』が建ったお陰でシズクの工房の売上も入金できるようになった。
建てたのは『ナキちゃん』だが、それを可能にできたのが『名水探偵事務所』の周辺20M以内の敷地『1ブロック』だ。
どうやらシズク達のアローナに名水探偵事務所が建ったお陰で、『若干方向性の違う異物』が出来た為に、ビミョーに繋がっている。
カリンがアローナに転移する為には『名水探偵事務所』から出入りする。
名水探偵事務所周辺20Mだけ世界観に差異が発生しているとナキは分析していた。
探偵事務所のワンブロックだけがそうなっているので、もしかしたら『探偵事務所の勢力拡大』すれば『シズク達のセカイ』の施設を建築できるのではないか?と推測している。
20Mの敷地内に今建てているのは。
・当然、名水探偵事務所
・ATMコーナー
・小型図書館
の3施設になる。
当然、シズクにとって図書館は1番優先される項目だろう。
小型図書館の蔵書はシズクの書庫とリンクしている。
今までだとシズクの能力でシズクしか書籍を呼び出して読めなかったが、小型図書館を設置したことで、シズク以外がシズクの部屋の本を手にとって読書できるようになった。ただ、文字が『日本語・英語表記の本』だけだ。
『異世界リンク空間(仮)』とあえて名付けるが、それのハイパーデカイのがこの駅周辺に展開されていると勝手に思い込んでいた。
『部活間抗争』の成れの果てに異世界で文化祭までやっているとも考えられないが、如何せん出し物が東高校の文化祭と変わらない。
というのも……。
決定的な事が。
「え!千澄ちゃん!?」
シズク達が焼きトウモロコシを噛じっていると、祭りを仕切る『田貫 チズミ』が横切った!
腰まで伸びる白銀の神をなびかせながら可憐な美少女が爽やかな柑橘系の香水なのか、消臭剤かは解らないが、いい香りがした!
「シズク…様!!!!!……っと!!!水槽学部の暴君!花梨!!!」
今!シズク様と仰ったぞ!
あと、さらっと可憐な美少女が、『英国美少女風だが英語が全くしゃべれない系金髪の美少女の花梨』を罵倒した!
「え!?柊さん……どうしてここに居られるのですか?」
――田貫さんは『心の声』で……。
「何で!この牛糞以下のクソ野郎がシズク様と同じ空気吸ってるのよ!しかも!何!?トウモロコシデート!死ね!糞以下の糞が!」
「あ!牛糞様に失礼だわ!Gの糞以下だったわ!!」
「おっと!Gファンに失礼だっわ!……水槽学部的に言わせれば金魚のフン以下だわ!」
「って!『金魚を愛する寿さん』にも失礼だわ!」
どうやら、田貫は『花梨』をどの様な『クソ野郎』であるかを表現するにかなり悩んでいるらしい!
「…ふむ、では私の事は、『シズクの後ろを付きまとう金魚の糞のような女』と仮定しておこう!」
――花梨は『人の心』をある程度感じられるスキルが発動した!
――田貫さんは『心の声』で……。
「ご馳走さまです!!!スカトロ最高!!!じゃねーかー!」
「……シズク!ヤベーぞ……この田貫 千澄!さん<・・>はマジでヤバいぞ!精神がぶっ飛んでやがる!」
なまじ心の声が聞こえてしまう為に、『花梨の精神が崩壊』しそうだ!
澄ました顔で、かつ、東高校で5本の指に入るかもしれない程の美少女『田貫さん』だが、千澄……何処が千も澄んでいるのか?しかも、ヤベー程の百合属性持ちで、かつ『シズクの汚物』すら聖水の様に思っていた。
ここで言う汚物とは『花梨』の事を指す?のか?。
花梨はこの田貫さんは『シズクに寵愛されたい変態』と位置付けをした!
『芸術部』は『美術部・写真部・コンピューター部・陶芸部 ・書道部・華道部・茶道部・演劇部・手芸部・園芸部・漫画研究会・オカルト研究会・映画研究会・特撮研究会』の総称だが、花梨は『変態美人糞食部』も追加してやることにした!
「…シズク『芸術部』の総称を『変態美人糞食部』と位置付けしよう!」
「花梨さん!いくらなんでもいきなり何言い出すの!」
心の声に反応して花梨は思わず口に出してしまったが、チズミからは『一言もシズクチャンラブラブ!クソ食らうぞ!』とは発してもいないし、態度や精神にすら出ていなかった。
――花梨はただ『チズミを下劣に扱った!』だけになった!
「千澄ちゃんには、色々お世話になってるし、すっごく!仲良くしてくれてるの……」
まさか!友達が少ない系のシズクの友達だった!
シズクの友達では『川崎 七海』もいる。
東高校の5大美少女の2人がシズクの友達だった!
残り3人の一人が『水槽学部の神畑 日花梨』だ。
祭りの案内をしてくれそうな雰囲気で田貫はシズク達へと近づいてきた。