君想ふ
赤信号。
かじかむ手に息を吹きかけた。
11月ってこんなに寒かったっけか?
息が白い。
視線を手元の液晶へと落とす。
メッセージの通知が次々と表示される。
「暇な人たち。」
誰に言ったわけでもないが何となく小さく呟いてみた。
あまりにも通知が五月蝿いのでミュートにして、そのまま画面を閉じた。
ふと空を見上げる。
淀んだ都会の空。
建ち並ぶ高層ビル。
雲の隙間から少し覗く月と星。
信号が青に変わると人は一斉に歩き出す。
人の波に呑み込まれる。
人混みは苦手だ。
その人混みにふと『君』を見つけたような気がした。
朝から騒がしい教室。
クラスのリーダー格のグループは、教室のど真ん中で手を叩きながら下品極まりない笑い声を上げている。
『マジ?w』『ウケるwww』『それなww』
あの人たちの会話はこの3語のみで出来るようだ。
頭と同じで会話の内容まで空っぽだ。
教室のあちこちから色んな会話が聞こえてくる。
私には関係無い。
友達なんて必要無い。
いつからそんな事を思うようになったのだろうか。
寂しいやつだと思うでしょ?
でも、本当にそう思う。
友達なんかよりももっと大切な人がいるから、なのかな。
今のは少しかっこつけすぎだ。
でも、本当のことだ。
『君』だけは空気みたいな私に気付いてくれた。
私を見てくれた、褒めてくれた。
『君』は私の存在を認めてくれた。
『君』は私にとって特別な存在。
でも、『君』からしたら私なんてきっと何でも無い大勢の中の一人なんだろうね。
あぁ、いつからだろうか。
『君』の特別になりたいなんて思いはじめたのは。