第3話 なれない日常
昼休み。俺はミラとララと一緒に弁当を食べていた。というよりは、俺の弁当を3人で、というのがつくけれど。
この二人は転校生ということもあって目立つんだ。んでもって二人とも綺麗だし可愛いしで特に目立っていた。
そんなわけで、俺がそばにいて見張っている。何かあった時に俺のせいにされてしまっても困るから。俺は平和に過ごしたいのに…。
俺が学校にきてみると、俺の変わりようにクラスのみんなはビックリして俺を見ていたり、正体を隠したままこの学校にミラとララは転校生としてやってきたり、実はミラは俺と婚約していましたーだったり。俺の静かな学校生活はどこにいったんだろう…。
え?内容が違うんじゃないかって?そんなことは気にするな。大体合ってるからいいんだ。
「ねえ神門。なんで私たちの分はないの?」
「お前らがくるなんて俺はこれっぽっちも思ってなかったんだよ。だから用意してるはずないだろ。食えるだけマシだと思え」
さっきも言ったような気がするが、今現在俺の弁当を三人でつっついている。
こいつらが来るって分かっていたら弁当作っただろうけど、お生憎様来るなんてこれっぽっちも思っていなかったので作ってない。
早くもこの二人のことは噂になっているから理沙はもう知っているだろうけど、友達と一緒にいるから俺の所には来ていない。
「私は徹の弁当食べれたからいいけど」
「はいはい…てかミラって本当に魔王の娘だったよな。なんでこんな勇者の俺を好きになってるんだよ…」
「だって…朝の時に私の胸…」
「それ以上は言わなくていいから!」
「もう…。徹の照れ屋さん」
何処にいるかを言い忘れていたが、現在は教室にいる。なので朝の出来事をここで暴露されたら俺が変態になってしまう。というよりは、クラスの男子に異端審問会をかけられるので全力で阻止。
にしてもさっきから俺には嫌な予感しかしていない。勇者になってからというものの、命を狙われ続けた結果、嫌な予感とかには敏感に反応できるようになった。
けど、どうも落ち着かない。嫌な出来事が起こるってわかってるから尚更落ち着けない。
嫌なことが起こるっていう予感でしかないからそこまで気にする必要はないのかもしれないけれど。
「ねえ徹。授業始まるよ。次は教室移動でしょ?早く行こ」
「分かってるよ、今行くよ」
こうして昼休みは何も起こらず無事に終わった。けど、やっぱり俺の嫌な予感というのは当たるもので。それは授業が終わって放課後のことだった。その嫌な予感が的中したのは。
ホームルームと掃除も終わり、帰る時だった。
「さて、二人とも帰るぞ…っていないし」
二人のことだから一緒に帰るのかと思って声を掛けようとしたら既にいない。俺をおいて先に帰りやがったな。
二人がいないので仕方なく一人で帰っていたのだが、その帰り道のことだった。
「うわっ!」
石につまづいて転んだ際に誰かにぶつかってしまった。そしてぶつかった相手を一緒に倒してしまった。
「いててて…大丈夫?」
起き上がろうとすると、ふにっと柔らかい感触があった。そして俺はこの感触に覚えがある。なんか嫌な予感しかしないんだが、まあ恐らくあれだよな。
ぶつかってから気づいたが、倒した相手はミラだった。良かった、これでもしララとかだったらもっと大変なことになっていたと思うから。
「いった~…」
「悪い、大丈夫か?」
「うん、なんとか。にしても徹も随分と大胆だね」
「俺が大胆?そんなわけないだろ」
「でも、今私の胸…」
「…!?こっこれは誤解だ!つまづいたらこうなっただけだ!」
俺は慌てて立ち上がった。まあ、薄々そんなような気はしていたんだが、やっぱりラッキースケベになってたんだな。俺の人生、終わったんじゃねえの?
てか、こいつらがいる時点で俺の人生終わってるよね。魔法は使えるわ、身体付きも向こうの時のままだわ、こいつらもいるわでもう大変。
「とりあえず帰るぞ。てかララは?」
「うん、先に帰ったよ」
「そうか、ならいっか」
今はこんな感じでまだほのぼのしてるけどさ、この先嫌な予感しかしていない。
というのも、向こうの世界のやつらがこっちに来てるんじゃないかって意味ではあるけれど。もし、向こうのやつらが他に来てたらこんなにほのぼのしたままじゃいられないよね。
そんなこんなで家に着いた。鍵でドアを開けて中に入る。
「ただいま~」
「おかえり神門。ご飯にする?お風呂にする?それともわ…」
「それ以上はいうな!」
「せめて最後まで言わせて欲しいなあ。照れ屋さんだね、神門は」
出迎えてくれたはララだった。でも格好が…裸エプロンだった。いやいやなんでだよ。何がどうしたらそうなったわけ?
一国のお姫様がこんな格好ってまずいだろ。こんなのが王様にばれたら会わす顔がないどころか、処刑もんだからね?
「ララ…とりあえず服を着ろ」
「えー…神門が喜ぶと思ってやったのに…」
「はあ…」
この世界に帰って来て早々にこんなに疲れるとは思ってもなかったぜ。それに以前の生活とはかなり変わったし。主にミラとララのせいなのだけれど。
この二人、可愛いのになんでこんな凡人の俺がいいんだよ。さっぱり分からない。
疲れを取る意味で俺は風呂に入った。そして風呂に入って数分後のことだった。
「「失礼しまーす」」
「え?……な、な、な!?」
いきなりミラとララが風呂に入ってきた。それに驚いたせいで危うく風呂の中で溺れかけてしまった。
「なんで入ってきてるんだよ!」
「だって徹と入りたかったんだもん…」
ミラには恥じらいというものはないのか…。女の子なんだから恥じらいというものを知れって言いたい。
「私は止めたんだよ!でも、ミラちゃんがどうしてもって…」
「だったらお前は入ってこなくてもいいだろ」
「でも…私もちょっとだけ入りたかったし…」
いやいや、入りたかったしじゃねえよ。入らないでくれよ。俺のあれがあれしてあれしちゃうから。
「もういい…俺はのぼせたから出るわ。ごゆっくり」
あと少しで俺の理性が吹っ飛ぶところだった…。俺も一応男なんだよ。あの二人にはもっと恥じらいと言うものを覚えてほしいもんだな。
ところで、いつまでこんなになれない日常を過ごさないといけないんだ…?いつまでもこのままってわけにもいかないだろう。王様も心配してるだろうしな。
こうして俺の新しくなった生活の一日目は騒がしくも終わっていった。