第1話 消えていく静かな日常
リメイク版いよいよスタートです。
今後の俺あいつの詳細や報告に関してなんですが、主に僕の活動報告ですると思いますので、宜しければお気に入りユーザー登録をして頂ければと思います。
「…でなんでお前らがこっちの世界に来てるんだよ?」
今現在俺の部屋には何故か知らないけれど、向こうの世界の時の魔王の娘とお姫様が来ていた。本来ならばいるはずのない人たちだ。魔王の娘は勿論のこと、王国のお姫様がここにいる事は絶対にありえないはずだからだ。
魔王の娘と俺は向こうにいる時に会った事がなければ話をしたことすらない。本当に噂で魔王に娘がいるということを聞いたことがあったくらいだ。
お姫様に関してはこっちに帰ってくる時に手を振って見送ってはくれたが、それだけなのでこっちに来ている事はとても不思議だった。
「あのさ、お前って言うのやめてくれないかな変態」
「へんた…それはいいとして、じゃあお前の名前教えろよ。そうしたら名前で呼ぶからさ」
魔王の娘の名前なんて知ってるはずないだろ。
噂ではいると聞いたことがあったが、名前を聞いたことは無かった。こいつの名前は噂でも知られてなかったため魔界にいた者にしか分からない。
確かに俺は魔界には行ったが、それはあくまでも魔王討伐とために行っただけだったのでそんなことを知る機会は無かった。
「いいよ。教えてあげる。私の名前はクリスティアーノ・ミラルーツ・ルルーシュ・ミラって言うの」
えーと、クリスティア…なんちゃらなんちゃら。うん、長いからとてもじゃないが覚えきれないな。めんどくさいしミラって呼ぼう。
「ちょっと!私を忘れて話を進めないでよ神門」
ミラと話をしてたので忘れてたけど、そういえばお姫様もいたんだった。こっちの話を聞いていたのですっかり忘れていた。…忘れてたなんて言ったらお姫様怒るだろうなあ。
「後でかまってやるから、ちょっと待っててくれ」
「私のこと無視して何勝手にそっちの女と話してんのよ」
「分かったから一人ずつにしてくれ!俺は二人もいないし、一度にそんなに聞き取れねーよ!」
俺はいっぺんに何人も相手を出来るほどの会話力は持ってないんだよ。一人ずつ喋って欲しい。
とにかく、なんで俺がこんな目にあわなければいけないんだろうな。俺がなにかしましたか神様よ。
「とりあえずお前はミラだ。あれは長い」
「別にいいけどさ…」
「でミラはまだしも、本当は良くないけど…。なんでララがいるんだ?」
この王国のお姫様の名前はララという。正式名称、エンジェル・マーティス・ララ。お姫様も長いのだが、王様にしつこく言われたために覚えてしまった。
この二人が来てからというものの、俺の静かな日常が消えて行ってるんですけど。どうしてくれるんだよ。まあそんな事を考えていても今は仕方ないかと割り切った。
「えーっとね…神門がこっちに帰る時にやっぱり帰って欲しくなかったから神門の袖を掴んだらこっちに来ちゃってた」
「…はあ?全く…。何してるんだよ…」
つまりはあれだな。俺が掴まれてたのに気付かずに扉潜ってしまったからこっちに来たってことだな。そんなに俺に帰って欲しくなかったのか。
「でミラはなんで…」
「そんなこと知るわけないでしょ!」
「…はいはい」
俺が言い切る前に言われた。しくしく。
マジでこれからどうすればいいんだ。ずっとこいつらと暮らさないといけないのか?いやでも、幾ら何でもそれは良くない。きっと王様も心配してるだろうし。一応はミラも魔界の王女なわけで、突然いなくなっているから魔界も混乱しているはずだ。それで魔王軍に攻め込まれたら俺のしたことの意味がなくなってしまう。
扉を潜って帰ってきたのはいいのだが、肝心の俺は勇者の格好のままで帰って来ていた。どうやら魔法も使える。一年間鍛えた体つきもそのまま。
他に気になっていたことが一つあるとすれば、俺は一年間の間向こうの世界にいた。本来ならばこっちでも時間は進んでるはずなんだけれど、何故か時間は俺が向こうに旅立ってから一日しか経過していなかった。何故俺が向こうにいる間こっちは時間が止まっていたんだろう。
「てか、お前ら服は?とりあえず何かきてくれないか?頼むから」
「「じゃあ服貸して」」
どういうわけかこの二人、服を着ていないのだ。俺は向こうにいた時の格好のままなのに。よくよく考えてみれば裸の女の子が俺の部屋で二人もいるってまずくないか?こんなとこ誰かに見られたら…。
「お兄ちゃんいつまで寝てるのー?そろそろ起きないと…遅刻…す…る…。…お兄ちゃんゴメンね、私お邪魔だったね」
「それは誤解だ!言い訳をさせてくれ!」
最悪だ。最悪のタイミングで妹に見られてしまった…。俺の人生終わったんじゃねーか?
「大丈夫神門?」
「そう落ち込むなって」
元はと言えば俺のせいでは全くない。むしろ俺は被害者だ。
「君らにはどうせ俺の苦労なんて分からないだろうよ」
とりあえず親にこの二人が来てしまったことを言わないとな。一応家族は俺が勇者に選ばれて向こうに行ったことを知っている。俺が向こうに行く前に話をしたからだ。
だとしても気が重くてしょうがない。どう話せばいいのかが分からないから。
制服に着替えてリビングに行くと、両親と妹は朝食を取っていたのであの二人のことを説明した。
「…ということなんだけど」
「「別にいいんじゃない」」
…え?なんかあっさりとOKされたんだけど。あっさり過ぎて逆にビックリしている。
帰ってきた初日の朝からドタバタしているが、こうして俺の静かな日常は消えていくんだろうなと実感した。この先が思いやられるけれど頑張ろうと決意した。
こうして俺とミラとララとの変わった日常が始まろうとしていた。
2016年9月9日(金) 誤字修正