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不安の牽制

酒場から宿屋へと戻ったイリーナ、レコス、クラリスの3人。


クラリスはイリーナから渡された何かの牙らしきものを眺めている。


「ふーぅむ……魔物の牙っぽいけど……若干魔人の匂いも……それに魔力も残ってる……」


クラリスは魔術を展開して鑑定を試みる。


「んー……専門じゃないから確かな事は言えんけど……混血っぽいな……」


それを聞いてレコスは首を傾げ、イリーナは舌打ちしつつ頭を掻く


「混血……? って、なんでしたっけ?」


「魔人と他の奴が混ざったヤツの事だ。レコス殿。レインセルには元々魔人が多いから混血種なんて物はそうそう居ないんだけど……確かコルネスとかの大陸には混血が多いみたいな話を……誰かから聞いたような……」


クラリスは牙を布に包んでテーブルの上に置き、喉が渇いたとテーブルのリンゴを齧りだす。


「クラリス、魔人と何の混血かは分からないか?」


「んー、ドラゴンじゃ無い事は確かだな。どちらかと言うと人間に近いかも……」


イリーナはベットに腰掛けて寝転ぶ。


レコスはイリーナのソワソワした態度が珍しいと思いつつ


「イリーナさん、どうしたんですか? なんか……あの男に会ってから変ですけど……」


「そうか……私変か……」


レコスは本当に大丈夫か、と思いながらイリーナの隣に座る。


「も、もしかしてイリーナさん……あの男と何か……」


「5年前に……一緒にコロシアムを襲撃した盗賊のリーダーだ」


それを聞いてレコスは固まるが、クラリスはもしゃもしゃリンゴを食べ続けている。


「それって、姫君を助けた時のか? イリーナ殿を脅しにきたのか」


「いや……仲間を助けたいだそうだ。その牙の持ち主が相手だとか言ってたな……」


イリーナは混血と遭遇した事が2回ほどあった。


一回目は騎士団に入団してすぐ、ガリス隊のみで魔人の討伐に出向いた時だった。かなり苦戦したのを覚えている。そして2回目はライカとガインの隊に混ざって討伐に参加した時、その時はライカが一人で暴れていた。


どちらにせよ、混血は自分の手に余るかもしれない、とイリーナは天井に手を仰ぐ。


「あの……イリーナさん、行くんですか?」


「普段なら無視するが……なんか気になるな……」


クラリスはリンゴを一個平らげ、ゲップしながら牙を再び手に取る。


「なら一応スコルアに報告すべきじゃないか? お姉様ならこの牙の鑑定も正確に出来るだろうし……」


「シンシアか……あいつ短気だからなぁ……罠だった場合その辺吹き飛ばしそうだし……」


レコスは短気なのはイリーナも同じだと言うのを飲みこみつつ


「ま、まあ、報告はすべきだとオモイマスケド……行くにしろ行かないにしろ……」


「分かった分かった……明日の朝一で報告する……冒険者から混血の目撃ありってな……」


それだけ言うとイリーナは立ち上がり、部屋のドアへと向かう


「あれ、何処行くんですか?」


「風呂、一緒に入るか?」


レコスはドキっとしつつ、無言で首を拘束で振る。


「お前じゃない……クラリス、行くか?」


「おー、いくいく」


レコスは肩を落として項垂れる。


「レコス殿、私は一緒でも構わんぞ」


「あぁ、別に私も構わんけど……」


「僕が構います!」


レコスは女二人に言い放った。






 クラリスとイリーナは宿屋の風呂桶に一緒に浸かる。


「あー、いい湯だー」


「クラリス、明日……私は行こうと思ってるけど……」


クラリスはイリーナが全て言う前に


「私もいくぞー、これでもお姉様の腹違いだからな。派手さに劣るがそれなりに戦えるぞー」


「ぁ、うん……悪いな……」


そのままクラリスはイリーナの手を取り、イリーナの魂と同調する。


「ん? な、なに……」


「イリーナ殿、私は魂を同調することで……それなりに……その人の事が分かる。心が読めるわけじゃないけど……今のイリーナ殿は不安で仕方ないって感じか?」


イリーナはポリポリ頭を掻きながらだいだい合ってる、と思いつつ


「まあ、不安っちゃ不安だけど……」


「大丈夫だ。レコス殿も居るし、私もいる。このトリオだったら罠だろうが混血だろうが関係ない、なぎ倒して突き進もうじゃないか」


イリーナは思わず笑いながら同意する。


クラリスに励まされて少し照れくさそうにしながら


「そういえば……クラリスって何歳なんだ?」


「ん? お姉様と一個違いだから……29だ」


イリーナは固まる


ラスティナ達とそんなに違わないと思っていた、というか自分とも一つしか違わない事に軽くショックを覚えた。









 翌朝、イリーナは一人でローレンスの騎士団詰め所に居た。


『了解しました、イリーナ殿』


通信の相手はガインだった。イリーナは昨日の晩言った通り、冒険者が魔人と人間らしきものの混血を発見したと報告する。


「冒険者の仲間が捕らえられている可能性があります、私は救出へ向かいます」


『3人でですか? しかし……』


イリーナはやっぱり渋るか、とあまり言いたくなかった事を口にする。


「その冒険者は私が5年前に……王女を助けた際ともに戦った者達です、そのリーダーも同伴します。彼の腕は私が承知していますので……」


『5年前……って、それ盗賊じゃ……』


ガインは最後まで言わず、渋々イリーナの主張を許可した。


『無茶だけはしない様にお願いします……念の為、こちらから今その付近に居る連隊騎士へ連絡してみます。彼らの応援が間に合うか分かりませんが……』


「ありがとうございます。では……」


そのまま通信を切るイリーナ。後ろでローレンスの専属騎士、以前シェルスにイリーナの事を話した騎士が佇んでいた。


「本当に大丈夫なのか? 混血の討伐なんぞ……連隊の一個隊で行う物だろう、本来は……」


「大丈夫だ。マシルの最高幹部様も居るし、頼りになる相棒も居るからな。それに……例の冒険者もいる」


「盗賊だろう……なんだったら俺も……」


イリーナは手で制しながら騎士の要請を断る。


「大丈夫だ……奴の腕前は良く知ってる。それより以前シェルスが世話になったらしいな」


話を変えるイリーナに専属騎士はため息を吐きつつ


「ああ、大した事はしていない、お前の事を少し話しただけだ。アルベイン家との関係を気にしておられたからな」


「ガウェインの事は……話したのか?」


「いや……話したほうが良かったのか?」


イリーナは手を振りつつ、専属騎士に礼を言ってその場を後にした。


詰め所から出て、宿屋に戻る途中商店街が賑わっていた。これから朝市場が行われるのだろう。


「あら、イリーナ様」


イリーナはビクっと思わず身構えてしまう。アルベイン家の当主、レイル・アルベインがイリーナの前に現れた。


「なんですか? その魔物と遭遇したみたいな反応は……」


「いや、そんなことないぞ?」


イリーナはポリポリ頭を掻きながら、レイルの傍らの少女に気が付く


「シーナ、虐められてないか?」


昨日イリーナが保護した生贄の少女、シーナ。イリーナに声を掛けられて頷く。


「虐めてなんていませんよ、これから朝市に向かう所です。商人の基本は堅実な積み重ねですから」


イリーナは適当にうんうんと頷きながら


「まあ、じゃあな、シーナ。良い男見つけて幸せになれ」


ポンと頭を撫でつつ、イリーナは二人の前から去る。


その後ろ姿を見て、レイルは途方もなく不安を覚えた。


まるでイリーナに二度と会えない、そんな不安を。








 宿屋で昼まで過ごし、約束の時間に酒場の前へと訪れた3人。


すでに盗賊のリーダーは待っていた。イリーナの顔を見るたび薄く笑う。


「来てくれないと思ってたが……」


「本当は無視したかったけどな」


イリーナはクラリスとレコスを紹介しつつ


「そういえば……お前の名前も知らなかったな」


後ろでレコスとクラリスはガクっと肩を落とす。


「名前か……ガルドでいい」


「お前……絶対偽名だろ……」


ガルドというのは金の守り神の名前だった。


「元々自分の名前なんぞ知らん、適当にその場でつけたり付けられたり……」


イリーナは頷きながら、ガルドの手を取る。


「お前が何を考えているか知らんが……保険は打たせてもらうぞ。クラリス」


クラリスはイリーナとガルドの両手首に光る枷を繋ぐように魔術を掛ける。しばらくすると枷は消えるが……


「ん? なんの魔術だ?」


「私が死んだらお前も死ぬ魔術だ」


ガルドはあからさまに嫌そうな顔をする


「おい、まさか俺が死んだら……」


「あぁ、私も死ぬ」


はぁーとその場のイリーナ意外はため息を吐く。


「な、何だよ、お前等……揃って……」


ガルドはイリーナの連れ二人に向かって


「お前等……苦労してるんだな……」



思わずレコスとクラリスは頷いてしまう。





 そのまま一行は出発する。ガルドの仲間の救出へと。


「場所はウォールグの南……レスガント要塞跡だ。そこに混血が陣取っている」




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