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傷と傷

 調印式を終えたシェルスは、個人部屋に案内された。


「とりあえず今日はゆっくりしてください、何かあれば侍女達に……」


そのままオルビスは部屋から出て行き、入れ替わるように小人族の侍女2名、そしてアルフェルドが入室する。


「シェルス王女、お疲れ様でした、こちらルンルさんにマリムさんです。こう見えて私の倍は生きてる人生の大先輩なので……」


小人族2名の侍女はアルフェルドの膝程までの身長で、見た目可愛らしい人形のようだった。歳はどうみても一桁に見える。


「は、はい、よろしくおねがいします」


シェルスはお辞儀しながらアルフェルドとルンル、マリムを交互に見る。


「とりあえずシェルス様、ドレスを脱ぎましょうか、楽になりましょう。ルンルさん、マリムさん、お願いします」


アルフェルドの指示で二人の侍女は頷き、シェルスに近づいてくる。


その姿にシェルスは思わず可愛いと見惚れてしまうが……


「ほら、さっさとしゃがめコラ」


「ちんたらしてると日が暮れるわよ、お嬢ちゃん」


シェルスは思わずビクっと背筋を強張らせる、可愛い見た目とは裏腹に声が太く、しかも口調が怖い。


「あ、は、はい、すみません……」


そんな様子をみながらアルフェルドは笑顔で見守っている。二人の侍女はテキパキとシェルスのドレスを脱がせ、半裸状態にするが……


「っ……!」


二人の侍女、そしてアルフェルドは同時に言葉を失う。シェルスの体についた傷を見て。


アルフェルドはシェルスの一年間に及ぶ拷問を知ってはいたが、それでもここまでの傷があるとは思わなかった。


「あ、あんた……」


「ぁ、気にしないでください……若気の至りというか……」


シェルスはポリポリ頭を掻き、笑いながら話している。


そんなシェルスに、二人の侍女は生唾を飲みこんで腕に抱き付く。


「え?! あ、あの……」


シェルスは困りながらアルフェルドに助けを求めるように視線を送るが


「あぁ、彼女達のスキンシップなので……気にしないでください……」


いいつつアルフェルドも、二人の侍女ごと腕を回して抱き付いてくる。


「え、えぇ、あ、あの……」


数分間、3人はシェルスに無言で抱き付き、アルフェルドは気が済んだのか離れ、


「……ほら、二人とも、いつまでもそうしてると……シェルス王女が休めないですよ」


アルフェルドに言われ、二人の侍女達も腕から離れる。


侍女達は涙目で鼻をぐずりながら


「色……」


「ん? ぁ、はい?」


「部屋着の色! さっさと決めろコラ!」


シェルスはビクっとしながら、じゃあ黒で……と指定する。


ルンルは奥から黒の楽そうなブカブカのワンピースを持ってきてシェルスに着せていく。


「シェルス王女……余計な御世話かもしれませんが……陛下はその傷の事は……?」


陛下、と言われてシェルスは一瞬考えてしまうが、オルビスの事かと気づくと頷きながら


「はい、レインセルですでに……見て頂きました……」


シェルスはブカブカのワンピースを着つつ立ち上がる。


二人の侍女にお礼を言うと、ルンルとマリムはそのまま部屋から出ていく。


「そうですか……。いい男になりましたね、陛下も……」


アルフェルドは懐から通信魔術の触媒を取り出し、シェルスに渡す。


「それは私とガウェイン……騎士団長二人と直接連絡が取れる物です。何かあれば容赦なく言ってください。」


「は、はい、ありがとうございます……」


「それと……騎士の中には貴方に失礼な事を言う奴らが居るかもしれませんが……その時は容赦なく叩き伏せて構いませんので……」


シェルスはそんな事しないと苦笑いする


「でも貴方に憧れている騎士は大勢います。どうか御容赦の程を……」


そのままアルフェルドは軽く会釈すると退室する。


一人部屋に残されたシェルスは、部屋に唯一ある窓を開け放った。


勢いよく風が部屋の中へと一瞬流れ込む。


そこから見えるのはサンティアの街。人の姿はほぼ見えない。


「私は……この国の……」


シェルスは大きく息を吸い、深呼吸する。


この国の王女として生きていく。その決意を新たにして。










 大要塞地下、牢獄の中で飯を食べている男が一人……イヴァン・アルベイン。


「おい、おまえ食わねえの……?」


イヴァンとは反対側の壁際にもたれている男に尋ねる。当然のように返答は無い。


「はぁ……もったいね……」


イヴァンは自分のぶんの飯を食い終わると、男の飯も取り食おうとするが……


ドサ……と、男が横に倒れた。


「はぁ? ほら見ろ……お前何も食ってないんだろ……全く……人に襲い掛かってくるわ冤罪ふっかけるわ……あげくの果てに飯まで食わせるつもり……」


と、イヴァンは倒れた男の肩を掴んで仰向けに寝かせるが……言葉を失う


「ん……?! あれ……え?!」


思わず引く。反対側の壁まで。


そこに魔術師のレジナルド・サバトが地下牢に降りてきた。


「おい、飯は終わったか。そろそろ……ん? どうした、イヴァン」


レジナルドは牢越しにイヴァンに話しかける。何か驚愕の物を見たという顔の男に。


「こ、こここれ……ど、どうなってるんだ……」


「どうした……」


レジナルドは反対側に倒れている男を見る。


いや、倒れているのは女だった。


レジナルドは冷静に観察しながら


「やっと守護霊が撤退したか。ん……この女……」


レジナルドは一瞬考えると、牢の鍵を開け扉を開け放ち……


「おい、イヴァン、その女を抱いて着いて来い」


「え?! な、なんで俺が……」


「早くしろ」


それだけ言うとレジナルドは地下から地上へと続く階段に足をかけつつ……牢から女を担いで出てくるイヴァンを見る。


「とりあえず私の部屋に連れて行く。その後はお前も自由にしろ」


イヴァンは問答無用で投獄された文句の一つでも言いたかったが、黙って言う通りにする。



ボサボサの髪。


しかしイヴァンは色は綺麗だと思った。


その女の赤い髪を。



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