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騎士として

 対峙するライカとウォーレン、ウォーレンは長剣を両手で構え、ライカは片手剣、そして魔術を展開させる。


「貴様……どうやってこんな結界を……」


王宮を包みこむように、隠蔽の結界が張られていた。中で何が起ころうとも、その気配は消されてしまう。たとえ大声で叫んでも騎士は誰一人として、2人の戦闘にすら気づかない。ライカがシェルスを助けた時は、聖女の悲鳴がかすかに聞こえ、外の様子を見に行こうとしたときだった。


 もちろん隠蔽の結界など、ましてや王宮を包み込むような規模で展開させるなど、マシルの魔術師以外には考えられない。ライカは、敵は目の前の男だけでは無いと警戒する。


「諦めろ、貴様がどう足掻こうが変わりはせん」


ウォーレンが詰め寄りながら言い放つ。ライカは歯ぎしりしながら


「ウォーレン……貴様は……王権の復活など鼻から……」


「そんなものはどうとでもなる。なんだったら村娘でも捕まえてくればいい。所詮王など形だけだ。だがあの娘は違う。シェルスはまさしく神の器だ」


ライカは耳を疑う、何を言っているんだ、コイツは……と。


ウォーレンはジリジリと間合いを詰める。


ライカの左手に魔術が展開される。


「ウォーレン、これでも私はお前の事は結構いい上司だと思ってたんだがな」


稲妻、槍のような形で左手へ顕現する


「だが残念だ、一人の娘を捕まえて神だと……いつからそんな妄想をするようになった」


チェーザレが眠る部屋の前の廊下が、稲妻による激しい轟音で揺れる。だが結界の影響で部屋の中にはさほど響いていない。もちろん王宮内にも……


「ウォーレン…………」


ライカは思いだしていた。この男にスカウトされた散々だった日を。


「じゃあな」


それでも、今となっては良い思い出になりつつあった。だが、もう思い出に残ることは無い。


目の前の男が、くだらない妄想を語らなければ、とライカは稲妻の槍を、ウォーレン目掛けて投擲する。


ウォーレンは長剣を前に掲げる。


迫る槍を受け止めんと、ウォーレンは構えるが……


稲妻と共に、ライカが走りこんでくるのが見えた。


「うおぉ!」


ウォーレンは、渾身の一撃で槍を叩き落とす、そのままライカへと一閃する。



ライカはウォーレンの一閃を片手剣を盾にしながら受け、そのまま鍔迫り合いになった。


「ウォーレン……誰だ、誰がこの結界を張っている……」


ウォーレンは首を傾げた、今この場面で気にすることかと。


ライカはウォーレンの剣を弾きながら後退する。


王子が眠る部屋の扉を守るようにして立つ。ドアの向こうからは結界の影響で何も聞こえないが、恐らくはシェルスが必死に出ようとしているだろうと推測する。


(あまり時間はない、あの姫様の事だ……私の結界なんぞすぐに破って出てくる……その前にケリを付ける……)


ライカは通信魔術を使用する。心声で喋りながら、ウォーレンに向かって疾走した。






 ウォーレンは目の前の騎士の実力を知っていた。シェバに次ぐ実力と噂される騎士。元冒険者にして数日で連隊の隊長へと自分が昇進させた。


「殺すに惜しい存在だ、だがお前は説得など出来はしない」


ウォーレンはライカを本気で殺しにかかっている。だがライカは元騎士団長と互角に打ち合っている。


元冒険者、多少魔術の心得があるとはいえ、ここまで腕の立つ冒険者などそうそう居ない。


そもそも冒険者になろうとする物好きなど少ないからだ。自分から危険と言われる地帯に入り、金を受け取って魔人や魔物を狩る。時には人間すら狩る。金さえ受け取れば何でもする輩、それが冒険者だった。


 ライカもその手の冒険者だった。金さえ受け取れば何でもする。以前など、身内を殺されたと泣きながら依頼して来る老人の申し出を受けたライカ。その標的は盗賊だった。数十人で構成された盗賊だったが、一夜にして一人の冒険者によって全滅させられた。


 ウォーレンは当然そのことも込みでライカを騎士団へとスカウトした。腕が立つということだけで誘ったりはしない。


 だが今は後悔していた。自分がスカウトした騎士に、これだけ手こずっているのだ。ウォーレンは歯ぎしりしながらライカと打ち合う。


その時、ライカに一瞬のスキが生まれた。剣を弾いた時、胸ががら空きになる。


そのスキをウォーレンが逃すはずがない。


ウォーレンがライカの胸を刺し貫く時、ライカの顔に笑みが浮かんだ。


ウォーレンはライカの胸を刺し貫きながら、自分の愚かさを嘆いた。


(罠だ……! 退け、剣を……退くんだ……)


ウォーレンはライカの胸に刺さった剣を引き抜こうとする。だがその腕をライカが掴む。


「流石……察しがいいな……だがもう遅い」


ライカの目線、それはウォーレンの背後に向けられていた。ウォーレン振り向いた瞬間、その首はガインによって飛ばされていた。





 シェルスはリーンと共に、ライカの張った結界を解除する。


そして扉を開けた時、目の前の光景に目を疑った。


「ら、ライカ隊長……!」


胸を刺し貫かれ、ガインに抱かれている。ウォーレンは首を飛ばされ絶命していた。


シェルスはライカに掛けより、治癒魔術を施そうとする、まだ間に合う、無理やりな治療でも腹を刺し貫かれたイリーナが助かったのだ、と。


だが、そのシェルスの手をライカが握る。治療を行わせないために。


「なっ……何を……!」


シェルスは手を振りほどこうとするが、離れない。それほど固く握られている。


「シェルス様……」


ライカがガインに抱かれながら、血を吐きながらシェルスを見る。


「私を……騎士にして……ください……」


それだけ、それだけ言うとライカは静かに眠る。


ガインは震えながらライカを抱いていた。


リーンは立ち尽くしている。シェルスはライカの手を握りながら、泣いていた。


「なんで……なんで……」


シェルスは何故治療を行わせてくれなかったのか、と嘆く。



騎士にしてくれと訴えた。


まるで自分は騎士ではないと言うように



「お前は……騎士になれたんだな……」



ガインが静かに呟いた。


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