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再会の祝杯

 ラスティナから報告を受けたシェルスは剣を握りしめ、宿屋のソファーに座ったまま動かなかった。ラスティナはそんなシェルスの隣に座り


「あのシェルス様……リュネリア様……と言う方は……」


ラスティナはほぼマシルの大聖堂で眠らされいる。大体の事はユミルに睡眠学習で教えて貰えるものの、リュネリアとシェルスの関係など、細かい事は知らなかった。


 シェルスは剣を握りしめながら、机に置いたクエレブレの触媒を見つめる。


「うん……リュネリアは……私の育ての親というか……実際、私はイリーナが実の親と知るまでは……彼女が母親だと思ってた……。今でも思ってるけど……」


シェルスは剣を握りしめる。この中にリュネリアが眠っているかもしれない。それならば必ず助け出すと心に誓いながら……


「育ての親……ですか、私にとってはユミルですね……ああ見えて、優しいですし物知りなんですよ。ちょっとイヤらしい所もありますけど……」


シェルスはそれを聞いて苦笑いしつつ……


「そういえば……ステアは? さっきから見ないけど……」


「あ、町を見てくるって……」


シェルスはクエレブレの触媒をラスティナに渡しながら


「ラスティナ、ステアに渡しておいてくれない? 同時に所持してたら危ないって事だし……」


ラスティナはわかりました、と頷きながら


「シェルス様は……街には出ませんか? その……少し気分転換でも……」


シェルスは、首を横に振り


「ごめん、もう少し……考えたいから……」


「わかりました……では、日が落ちるまでには戻ってきます、夕食は共に……」


それだけいってラスティナは出て行く。シェルスは宿屋の一室で英雄ナハトが封じられた剣を見つめていた。





「でっけえ……」


ステアは街の広場で巨大なイノシシのような魔物の剥製が飾られているのを見て嘆いていた。

こんなものを仕留めるのはどんな奴だろうかと思っていると……


「おう、姉さん、そいつは俺が仕留めたんだぜ」


自慢げに男が一人寄ってきた。なんだか頼りなさそうな男、見た所狩人のようだが……


「あんたが……? それにしちゃ……にいちゃん……あんまり強そうに見えないけど……」


「いってくれるじゃねえか、まあ見てな、今回の狩祭でも俺が優勝してやるぜ。もし優勝したら……そうだな、姉ちゃん俺と結婚してくれ」


「嫌だ」


一言で断りながらステアは剥製にも見飽きたと離れようとすると……


「わ、わかった、じゃあ一杯奢る!」


「優勝したのに奢ってくれんのか? じゃあ私の連れの分も……」


連れがいるのか……と男はニヤっとし……その時、ステアの名前を呼ぶ声が


「ステアー、ここに居たのね、シェルス様は当分一人にさせてあげましょ……って、どちら様?」


ステアの傍でニヤついてる男に気が付いたラスティナが尋ねる


「ああ、この兄ちゃんが狩祭で優勝したら……」


「結婚してくれ!」


と、男はラスティナの手を握りながら迫っていた。ステアはさっき私にいったじゃないかと怪訝な顔をするが……


「嫌です……」


またしても一言で断られる男……ガクっと項垂れながら悲しいそうに立ち尽くす


「おい、兄ちゃん……そんな迫り方で承諾されるとでも思ってんのか?」


ステアが男へと尋ねるが、男はコクンと頷く……


「だ、だって……俺……優勝の常連なのに……女の子とか全然寄ってこないし……」


あー、と二人同時に声を出して納得する


「兄ちゃん……頼り無さそうだしなぁ……」


「ちょ、ちょっと待てよ! この魔物仕留めたんだぞ! むっちゃ頼れるだろ!」


そんな事言われても……と二人は男を改めてみるが……


(なんだろう……この頼りなさを表に出しつくしたような……)


「わかった……こうしよう……とりあえず、今夜一緒に飲みに……」


「嫌だ」


ステアが速攻で断っていた。男はプルプル震えながら……


「な、なんでだよ! 俺が誘ってんだぞ! 普通に承諾しろよ!」


男が二人に詰め寄り、大声を出して叫んでいると……



「おい、子供二人になにしてんだ」



と、どこかで聞いた声がすると思えば、男はクル……っと空中で回転して……頭から地面に激突する


「ギャァフ! な、な……な、なんだお前……」


「その二人の知り合いだ。失せろ」


男は目の前の女を睨みつけながら、腰の長剣に手をかけ……


「俺が誰だか分かってないみたいだな……」


「そのセリフ言うの恥ずかしくないのか」


次の瞬間、男が剣を抜く……が、抜いた瞬間、男の抜刀する動きに合わせて女の手も沿うように動き、長剣を奪っていた


「へ?」


「まだやるか?」


ぽい、と長剣を男の足元に投げ捨てる女……男は顔を真っ青にして、そのまま剣も拾わずに走って去って行った


「なかなか上等の剣じゃないか……売るか……」


そう呟きながら剣を拾い、二人に向き直る。


「久しぶりだな、シェルスの連れだろ?」


「あ、あんた……リーン……なんとかっていう……」


「リーン・レーヴェンだ。こうして会ったのも何かの縁だ。シェルスも居るんだろ?」


キョロキョロと辺りを見渡しながらシェルスを探そうとしているリーンに、ラスティナは


「あの……今宿屋で……」


それを聞いたリーンは頷きながら


「じゃあ、この剣売って……食い物と酒買って宿屋に持ち込むか……この時期の酒場は酷いぞ。男共が暴れまわるからな。」


それを聞いて素直に頷く二人。そしてそのまま、リーンは抜き身の剣を金に換え3人は町の商人が集まる市場へと向かう。


 市場に着くなり、リーンは酒を樽ごと買い、ラスティナは酒のツマミ、ステアは果物などを別れて買い集めていた。3人はそれぞれが買った品物を確認する中、リーンが樽を片手で肩に担ぎながら、もう片方には肉の塊を持っていた。


思わずラスティナが、肉の塊を見て、指さしながら……


「あ、あの……リーンさん……それ……」


「ん? ああ、これか。大丈夫だ、なかなか珍味だぞ」


珍味……と聞くが、明らかに生肉だった。ラスティナは苦笑いしながら


「まさか……そのまま?」


「ああ」


リーンは樽を置き、生肉の表面をちぎって口に運ぶ


「上手いぞ、塩漬けしてあるから酒のツマミには最高だぞ」


それを聞いてステアも千切って食べる……もしゃもしゃと噛んでいると口の中に広がる塩の味……とたんに酒が欲しくなる


「うん、なかなかイケる……」


もしゃもしゃと二人して生肉を頬張る姿にラスティナは不安を覚えながら、宿屋へと帰還した。


宿屋へと帰ってきた二人と一人の客を見て、シェルスは驚いた顔をしながら


「リーンさん……どうして……」


よっ、と軽い挨拶だけ済ましてタルと生肉を置く。


「私もここの祭りに用があってな……お前らはどうするんだ、出るのか?」


「い、いえ、私達は明日にはここを発ってラングスに……」


ラングス、と聞いてリーンは首を傾げる。


「騎士のお前がか? なんのために」


尋ねられるが……事情を話すわけには行かない。このリーンも盗賊だったのだ、この剣の中に眠っている守護霊の事を聞けば、盗もうとするかもしれない……と


そんなシェルスを察したのか、ラスティナがリーンに噓の説明をする


「実は……私の身内がラングスに居るんです。それで護衛にとシェルス様にも同行してもらっていて……」


リーンは、ふーん、と大して興味も無さそうに樽の蓋を割る


そのままジョッキで樽の中の酒を注ぐと


「ほら、とりあえず……再会を祝して飲もうじゃないか」


ステアは、まだ二日酔いが残ってはいるが……さっき食べた生肉のせいで喉が渇いていた為、果汁酒を一気飲みする


「す、ステア、またそんな貴方は……」


「いいじゃねえか、喉乾いてるんだよ……」


そして、気に入ったのか生肉を千切って口に運ぶ


「えっ、あの……その肉……」


シェルスが生肉をそのまま口に運ぶステアを見て……


「それ……生のまま食べたら……お腹壊すわよ……」




次の日……ステアはトイレから出れなかった







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