再び3人で
マシル大聖堂地下にて、ユミル、ナハト、ゼシル、そしてシェルスが集っていた。
「え、えっと……それで……結局ラスティナを同行させると……?」
ユミルはソワソワしながら、最高幹部と政を収める幹部を交互に見たのち、元姫に目配せする
「ああ、私は構わんぞ。実際、先の騒ぎではラスティナは一度も暴走しなかったんだろ。成長したんじゃないのか?」
ナハトは軽く了承するが……
「待て……そのことだが……そもそもステアという……お前が弟子にしたがっている娘が居たからじゃろ。」
「ならばステアも同行させればいい、別に問題はないだろ」
二人の会話を聞きながら……ユミルはメガネを直しつつ
「あ、あの……私としては……マリスも連れてってほしいなー……なんて……」
その発言にナハトは考え……ゼシルはあからさまに怪訝な顔をする
「ユミル、お前……以前言っていたな。二人が揃うと呼応しあって力が増すと……そのせいで暴走が起こりやすいとも」
ユミルは再びメガネを直しつつ……
「い、言いましたが……」
「なら、なぜステアとラスティナではそれが起こらない、暴走するどころか、むしろ安定していたって話だが」
ユミルはソワソワしている
「おい、貴様……まさかまだ……」
隠してる事があるんじゃないかとナハトは詰め寄るが……
「い、いや……大したことじゃ……その……暴走するきっかけは魔人を直視した……ことによるんだと思いますけども……実は他にも……」
「おい、なんだその話は」
高圧的にナハトはユミルへ言い放つ
「ああ、いや……先のラスティナが経験した旅で……その……暴走しかけた事が……あったみたいで……」
「おい、待て、その報告は受けてないぞ」
ゼシルとハナトはユミルへ詰めよる
「ああ、いや……でも暴走はしてません、ステアに振れられたことで収まったと……ラスティナが言ってました……」
「じゃあ……やっぱりステアは同行させたほうがいいんじゃないのか?」
「で、ですからその……マリスも……連れてって実験……ぁ、いや……研究……ぁ、あの……様子見を……」
ユミルのその様子に、シェルスは助け船を出すように
「私なら構いません、もとよりラングスに行って帰ってくるだけですし……」
シェルスを見ながらユミルは嬉しそうに体を揺らすが
「どちらか一人ならまだしも……二人か……別にまだこれが最後の……お出掛けってわけじゃない、今回はラスティナだけにしてくれ、シェルス殿」
ユミルは再び項垂れる
その様子にシェルスはナハトへ質問する、なぜだと
「知っての通り、ラスティナとマリスはかなりの危険人物だと扱われてる。マシルの専門家が収める街でもな。そんな二人を連れて行って見ろ……どんな反応されるかは明白だ」
たしかに……とシェルスも納得してしまうが……
ユミルは諦めきれない様子で……
「おい、ユミル……分かった……マリスは近い内に私が散歩にでも連れだしてやるから……今回はガマンしろ、というわけでラスティナを起こせ」
ユミルは仕方なさそうにラスティナの額に手を当てる
「ラスティナ、お目覚めの時間だよ、僕の可愛い天使……」
なんだその詠唱は……とあからさまに怪訝な顔をするナハトとゼシル……シェルスは可愛い……と思っている。
数秒後、ラスティナが目を開け猫のようにベットで丸くなる
「んー……まだぁ……あと5分……」
その様子にシェルスは顔が緩んでしまうが……
「ラスティナ」
ナハトが声を掛けると、バっと飛び起き、ベットの上で正座するラスティナ
「な、ナハト様……に、ゼシル様……と……シェルス様?」
ユミルの事は無視しつつ、ラスティナはナハトの顔を見つめる
「詳しい話はシェルスに聞け。指示に従って面倒を起こすな。いいな」
は、はい、と敬礼するラスティナだが、何がなんだかよく分からない
ナハトとゼシルが地下から出て行くと、ラスティナがシェルスの方に向き直り
「あ、あの、シェルス様……一体どういう……」
と、シェルスはそんな寝起きのラスティナに説明をし始める。ラングスに赴き魂の専門家たる魔術師に会いに行くため、着いてきてほしいと
「わ、わかりましたが……」
ラスティナが寂しそうにマリスを見た
「マリスは……またお留守番ですか……?」
「ほらぁー! やっぱりマリスも一緒じゃないと寂しいでしょ?! うぅ……ごめんよ、ラスティナ……今度3人でピクニックにでも……」
「ユミルとは行かない」
プイっと素っ気ない態度をとりつつ……その場で着替えだすラスティナ、着替えだすラスティナを凝視しているユミルに気が付くと、シェルスは咳払いしつつ……
「ユミル様……? まさか……いつも……」
「え?! いや、ち、ちがうよ?」
と、奥の方にユミルは引っ込んでいく
着替えるラスティナにシェルスは
「ごめんね、マリスも……つれていってあげたかったんだけど……」
「いえ、気にしないでください、マリスも私の話を聞いて楽しそうにしてくれたので……今回の旅も、マリスに沢山お土産話を持って帰りましょう、シェルス様。」
そして着替え終わったラスティナとシェルスはマシル大聖堂の地上へと戻る、そこにはステアが頭を抱えて待っていた。
「お、おーっす……」
フラフラと、マシルの魔術師風の格好をし、ローブに身を包んでいるステア
「ど、どうしたの? ステア……ってお酒くさっ……昨日も飲んでたのね……」
ラスティナはステアに近づくなり鼻をつまんで……
「い、いや……その……シェルスの母ちゃんと偶然酒場であって……そのまま……ナハ……師匠の部屋で……」
師匠? とシェルスとラスティナは、ナハトの楽しそうな顔を思い浮かべる
かなり強引に認めさせたんだろうな……と二人は思いながら……
「で……? ラングスだっけ……そこ行くんだろ?」
ステアが言うと、ラスティナは嬉しそうな顔をして
「え! ステアも行くの?! 頼もしいわ~」
いいながら仲良さげに腕を組むラスティナ。
シェルスは再び混ざりたい……と思いつつも
「うん、ラングスまで守護霊……じゃ辛そうね、ステア。 まあ、急ぐ旅でもないし……馬車で行く?」
「そ、そうだな……そうしてくれると助かる……」
ステアは頭を抱えながら、今にも吐きそうな顔をしているが……ラスティナは楽しそうにハシャイでいる
そんな3人はスコルアの北門から馬車で出る。目指すは北北東、ラングス。
馬車の中でシェルスはラングスまでの道のりを説明する
「とりあえず、まずは……シャル・マーゼっていう街を目指しましょう、私は何度か行った事あるわ」
二人は街の名前からして豪華な街を想像する。しかも元姫のシェルスが何度も行く街……
「ここの魔物を狩る大会が迫力あって……ぁ、お肉とかすごくおいしい……」
「「違う」」
何が? とシェルスは二人の反応に困るが……馬車はそんな3人を乗せて進む
その頃、連隊騎士詰め所では、ステアと同じく二日酔いに苦しむイリーナの姿が……散々酒場で飲んだあげく、ナハトの部屋でも酒盛りしたのだ、当たり前だと自分でも思うが……
「おい、いつまで唸ってるんだ……ほら、行くぞ。アホがまた暴れてんだ、鎮圧だ、鎮圧」
ガリスに引きずられ連れていかれるイリーナを見ていたレコス……
すっかり回復し、何事もなかったかのような感覚だったが、まさか自分がナハトに乗っ取られていようとは思いもしなかった。
「レコス、調子はどうだ」
モールスがレコスへと話しかける、レコスは顔を上げ、モールスに向き直り
「は、はい! だいぶ調子戻ってきました……!」
「そうか、ならいい。シェルスが居ない分、鍛えてやるからな」
げええ……と、レコスはシェルスに早く帰ってきてくれ……と願っていた。




