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騎士嫌い

 太陽が沈み月が街を照らす頃、ステアとイリーナは酒場でまだ飲んでいた。


「それでさー、シェルスがブチ切れて奴隷商を……って、ぁ、これ言っていいのか?」


「別にいいぞ、奴隷商なんぞぶち殺せ」


イリーナも酔っている、ステアから聞かされるシェルスとの旅の話を楽しそうに聞いていた。


「そういや……ローレンスでさー、なんか変な女に……あんたに似てたなー……なんだっけ……名前……えーっと……リーン……なんとかっていう……」


ああ、とイリーナはチラっと壁に貼られた賞金首の人相書きを見る。


リーン・レーヴェン、以前自分がシェルスを助ける際、雇った盗賊の一人だった。


「その話も報告は受けたぞ、そんな話より……なんかもっと……こう、面白い話ないのか?」


イリーナは自分の奢りだといいながらステアに瓶に入った比較的高価な酒を注ぐ


「面白い……? あー……そうだなー、ラスティナが寝ぼけてシェルスが風呂入ってる時に乱入したり……あ、風呂っていいや……私あいつに桶んなかに投げ込まれたぞ! あんなどういう教育してんだよ」


イリーナは笑いながら話を聞き、自身も酒とマスターの料理を頬張りながら


「それはお前が悪いんだろ、シェルスは元々姫君だからな、小汚い盗賊が気に入らなかったんだろ」


「こ、小汚いって……私は別に好きで……」


「悪い悪い、マスター、お替りー」


と、新しい酒を注文するイリーナ。ステアは機嫌を直して、ジョッキに残っていた酒を飲み干す


「まあ、なんだ、これからもシェルスと仲良くしてやってくれ」


「おう、それにしても、あんたホントに騎士か? すげえフランクだな」


「レインセルで一番醜いとか言われてるぞ」


ステアはそれを聞いて、なぜか大笑いしながら


「レインセルの奴は女見る目ないんじゃねえか? あんた美人だぞ」


「どうも」


と、イリーナはいいながら酒を飲み続ける。


そんな調子で結局深夜まで二人の飲み会は続いた。酒場のマスターが店を閉める頃、やっと外に出た二人は月を見上げる


「きれーだなー……ラスティナも今頃……」


魔術師達から聞かされた。ラスティナは地下に眠らされていると


「会いに行くか?」


イリーナにそう提案され……会いに行きたい……とおもうステアだったが


「いや……なんか怒られそうだ……ラスティナに……」


イリーナは笑いながらステアの頭を撫でくりまわした。いやがるステアを他所にイリーナは月を見上げる


「なぁ、ステア。お前魔術師になるのか?」


「し、しらねえよ、なんか勝手にマシルってとこに入れられたけど……」


「そうか、先越されたか……騎士にも向いてると思うぞ」


そのままイリーナはステアと共に、一軒の家に向かう。


かつて聖女の娘を魔物に殺され、その両親は自分を責めるどこか娘の功績を称えた家庭に……


家の中は静まり帰っている。明かりも点いていない


「なんだよ、こんなとこ連れてきて……」


「ここは、魔物に家族を殺された家だ。そんな家族は数えきれない……が……私はこの家族が……気になってな……」


月の明かりで家の庭が照らされている。そこには十字架を建てた簡素な墓のようなものがあった。


「ここに出来るだけ足を運んで……私は決意を新たにするんだ……家族からしてみれば、ブチ切れるだろうがな……」


ステアはそんなイリーナを見つめている


「なあ、家族って……私はいねえけど……そんなに大事か?」


「大事さ、お前にとってはラスティナやシェルスがそうだろ」


そうか、あいつらは家族なのか、とステアは思いながら家を見る。どこか寂しそうに、この家だけ周りとは違う世界にあるかのように佇んでいる


「ステア、魔術師になったら……間違えるなよ」


「なにを……」


イリーナは大きく息を吐き……また吸う、深呼吸するように


「魔術は巨大な力だ。間違っても……悪い事はするなよってことだ」


イリーナは再びステアの頭を撫でる。ステアは子供扱いされるのが気にくわなかったが、イリーナにされると何故か素直に従ってしまう


「しねえよ……ラスティナとか……シェルスが嫌がるようなことは……」


「上出来だ」


イリーナはステアの肩を叩きながら再び歩きだす、次に向かうのはマシル大聖堂


「お、おい、次はどこ連れてくんだよ……ラスティナのとこなら……」


「いや、いつまでもショげてるバカを励ましに行くんだ」


そのままステアの手を引いて、二人は村娘のような格好のままマシル大聖堂へ……


深夜ということもあって、大聖堂の中は静まり帰っている。らせん階段を上り最上階まで来る二人


「な、なげえ……なげえよ、この階段……」


「元盗賊だろ、このくらいで根をあげてどうする」


いいながら最上階のナハトの私室をノックなしで開く。


そこには、寝間着姿で一人、ナハトが眠れないのか酒を煽っていた


「あ? イリーナ? なんだ、何しに……って、そっちの! ステアじゃないか! よくきたな!」


ステアを見るなりナハトはテンションが上がる、自分が港町で凄い才能があると言った少女を見てナハトは手まねきしながら喜んでいた


「あ、あんた……こんなトコに住んでたのか……」


ナハトの寝室は豪華、というより変だった。ありとあらゆる置物、装飾品、そして変な絵画など……まるで珍物を扱う店だ……とステアは思いつつ……


「なんだなんだ、イリーナ……ステアを私の弟子にしたいって気づいてたのかー?」


「いや、お前のとこの酒飲みに来た」


「帰れ」


そんな二人のやり取りをみながらステアは、思わず笑ってしまう、酔ってるせいもあるが、思い切り笑ってしまう。二人はそんなステアを見て、


(可愛いな……)


と思いつつ、今度は3人で飲みだした。







その頃……ジュール大聖堂、騎士詰め所。


騎士団長シェバ、シェルス、そしてウォーレンの3人が介し、一室で話し合っていた。


「それで……その剣がナハトを封じた剣か……それをラングスに持ち込み鑑定すると?」


ウォーレンの言葉に、シェルスはかすかに俯き


「それは……悪魔で巻き餌です……ラングスの魔術師は騎士を嫌っています、でも……この剣には非常に興味があるはず……それを餌に……私はラングスの魂の専門家という魔術師に会いたいと思っています」


それ聞いたシェバは、シェルスがそこまで言うのなら、言って来い……と言おうとするが……ウォーレンが渋い顔をしている


「ラングスか……お前達は知らんだろうが……あそこの騎士嫌いは相当だぞ。騎士団長として私も訪れた事もあったが……あそこの責任者に何の様だとあからさまに嫌な顔をされたしな」


シェルスは嫌な顔をされるのは慣れている、と思っているが……


「ウォーレン様……私は……出来る事があるならやりたいのです。どうか紹介状を……」


「わかった……そんな目で見るな……」


シェルスは泣きそうな目で、老騎士を見つめていた。ウォーレンも根負けしたのか説得を諦める


「それで……? 同行する魔術師は誰にするつもりだ。もしかして……あのステアとかいう……」


「いえ、ステアはまだ魔術師としては全然ですので……」


シェルスはモジモジしている、その姿に


「トイレか? 行って来いよ」


シェバは無神経に言い放つが、シェルスは自分の父親を睨みつける、その視線にシェバは項垂れるが……


「誰ぞか……連れて行きたい魔術師がいるのか? 誰だ、言ってみろ、ゼシルには私から言ってやる」


シェルスはウォーレンに申し訳なさそうに……


「あの……では……」


再び涙目でウォーレンを見つめながら




「ラスティナを……」




ウォーレンはその仕草に心が揺れたが、魔術師の名前を聞いて渋い顔をした

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