スコルア酒場にて
ジュールとマシル。騎士と魔術師、元々この二つは互いに犬猿の仲だった。今でもラングスと言われる街に住む魔術師達の中には騎士を嫌う者が多い。
あの魔人復活騒ぎから1週間が過ぎた頃、騎士と魔術師両方に取り調べを受け、フラフラになっていたステアは、スコルアの街に降りていた。
「すげえ……私初めてきたけど……でけえ街だな……」
そんな感想を漏らしながら、あることに気が付いた。街が真っ二つに大きな道を挟んで別れている。
「なんだ、左右でなんか……雰囲気違うな……」
ボヤキながら歩いていると、正面から衛兵が歩いてくる
衛兵はステアを見るなり
「お嬢様、おひとりで散歩するのは危険ですぞ、どこぞの貴族の方とお見受けしますが……」
ステアは、えっ、とブンブン手をふって否定する
「わ、わたしは貴族なんかじゃ……」
「そうですか……? それは失礼……しかしお気を付け下さい、か弱い乙女に違いはありませんからな」
いいながら衛兵は去っていく……
「乙女って……私は20だぞ……」
ブツブツいいながらステアは街を下る、先程まで豪華な建物が連なっていたが、ここは庶民的で安心できるとステアは思う
「お……あれ酒場かな……まだ時間早いけど……やってるかな……」
所持金を確認する。取り調べの際、騎士から少し貰っていた。
「銀貨か……これ一枚で……どれだけ飲めるのかな……スコルアの相場とか良くわかんね……」
そっと酒場のドアを押すと、カギはかかっていないらしく、ギィィと古臭い音を立てながら開いた。
カウンターには数人の客、テーブル席にはちらほらと数人の男達が夕方前から飲んでいた
「いらっしゃい」
ゴツくて人相の悪いマスターがステアに言い放つ、ステアはカウンターに座り……
「なあ、おっちゃん、銀貨でどのくらい飲める?」
と、カウンターに銀貨を置く
「なんだ、スコルアは初めてか? なら仕方ねえ、可愛い見た目してるし一杯サービスしてやるよ」
ドンッ、と樽から果汁酒を木製のジョッキに汲んでステアの前に置くマスター。
ステアは嬉しそうに、マスターに礼を言いながら果汁酒を飲み干す
「うめえー……おっちゃん、お替り!」
「2杯目は有料だぞ、そうだな……銀貨あるなら適当な料理も出せるぞ」
じゃあそれ! とジョッキを掲げながらステアは注文する。マスターも機嫌がいいらしく調理を始める。
ステアは改めて店の中を見渡した。カウンターに座っている男は皆寂しそうに一人で飲んでいる。
壁には賞金首らしき張り紙があり、天井はいつ落ちてきても分からないボロさだった。
でもこれがいい、とシェルスは2杯目の酒を注がれてくると、今度は味わうようにゆっくり飲む
「そういえば、おっちゃん、この街なんか真っ二つに別れてね?」
調理中のマスターに話しかけるステア、マスターは調理しながら
「あー? ジュールとマシルで縄張り争いしてたからな、昔は……今はそんなこともねえけど……ほらよ、とりあえずこれでも食ってろ」
ステアの前にフライドチキンのような物が出される、ステアは思わず食いつくが……
「か、から! おい、おっちゃん! 辛いぞ!」
「どいつもこいつも……辛いのがうちの売りなんだよ……」
マスターはブツブツいいながら調理を続ける
辛い辛いといいながらステアは頬張りながら酒を飲む。
と、そこに騎士の鎧を着た男3人組が入ってきた
「お、姉ちゃんが一人で飲んでるぜ、よー、楽しんでる?」
一見して騎士だと分かる男達、巨漢で頼もしい体付きをしているが……
(ザコだな……)
ステアは今まで会ってきた騎士と比べて、雰囲気だけで見抜いていた
「あんたら、連隊ってやつ?」
ステアは肉を齧りながら3人組に話かける。シェルスもレコスもイリーナも連隊だった。ならばこいつらも……と思ったが
「お、おれたちは……も、門兵だよ、日々悪いやつが入ってこないように見張ってるのさ」
門兵が日も沈まない内から、なんで酒場に居る……とステアは思うが……
「おーい、マスター、酒くれや、普段働いてる俺達に労うんだ、サービスでな」
なんだ、こいつは……とあからさまに怪訝な顔をするステア
マスターも厄介ごとを起こさない為か、素直に酒を汲んでいた
酒を受け取って一気飲みする騎士達はお替りすらネダる。マスターも眉間に血管を浮き上がらせながら対応しているが……
(そろそろ限界じゃ……あからさまにマスター機嫌悪いな……)
そして再び3人がマスターに料理もサービスでと注文する。するとマスターが
ついにキレた
「てめえら! 騎士だからってデカい顔してんじゃねえ!」
キレたマスターが騎士達に食ってかかろうとするが、騎士の一人が剣を抜く
「おいおいおい、騎士様に逆らうんじゃねえよ、俺達のおかげで……魔人の復活も防げたんだぜぇ?」
(お前は何もしてないだろ……)
黙っていたステアもその言葉でイライラが募るが……
「ふ、ふざけんな! 剣なんか抜いて庶民脅してる時点で騎士なんかじゃねえよ!」
「いい度胸してんじゃねーか! なんならここでぶち殺してやろうか?!」
騎士とマスターの喧嘩がヤバイ方向にいっている、とステアはどうやって止めようかと考えていると……
「おい」
後ろから声がかかる
3人組が振り向くと……
「げ! お、おま……」
「お前らがウォーグルに居たとは知らなかったな。それはご苦労様だった。労ってやるから座れ、私の奢りだ。まさか断らないよな?」
ボキボキっと指を鳴らしながら騎士3人組に話しかけるワンピースを着た女。
ステアは庶民の娘か? と思うが……違う、こいつはあの時……ウォーグルに居た女騎士……
「い、イリーナ……殿……その……じ、自分達は任務がありますので……!」
いいながら3人組は門兵の仕事へと帰って行く。
そのままイリーナはステアの隣に座り
「マスター、あいつらの分も払うから、辛くない料理だしてくれ」
イリーナは金貨を出してカウンターに置く、そしてステアを見て……
「久しぶりだな、シェルスが世話になった……ステアだっけ?」
マスターが持ってきた果汁酒を飲みながら、女騎士は話しかけてきた。




