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月と太陽

 巨大なラスティナの守護霊が、ディアボロスを踏みつぶさんと歩を進める。


ディアボロスは動かない


そのまま巨人はディアボロスに踏みつぶされる……が


「そんな……」


ラスティナが驚愕する


自分の守護霊が、持ち上げられている。


「っく……」


ラスティナは太陽との同調を更に深く、強くする。その様子を見ていたリエナは不味い、と。


このままではラスティナが暴走する。それだけは……と思うが



ラスティナの守護霊、巨人、かつて世界を支配していた種族の一つ


太陽と同調するラスティナにとっては、最高のパートナーだった。


巨大な太陽の力を巨人は取り入れる、その体は光を帯び始め、まるで太陽のように輝き始める





リエナは、やりすぎだ、と感じるが……一行にラスティナに暴走の気配なはい


そのリエナの視線はステアへと向けられる。ステアはずっとラスティナと手を繋いでいる


(やっぱり……ステアは……ステアが繋がることが出来る物は……月……)


だが今は月は出ていない。だが確かにステアは月と繋がっている。




太陽の加護を受けた巨人はディアボロスを踏みつぶす。だがまだ撤退させていない。行動を一時的に不能にさせただけだ。


『ハハハ! 俺の主は激しいな!』


シェルスの守護霊、クエレブレが叫ぶ、その声と同時にシェルスは掛ける。岩が積まれた高台に駆け上り、クエレブレが近くを滑空した時に乗りこんだ。


それを見たイリーナは思わず叫ぶ


「まて! シェルス! お前が敵う相手じゃない!」


だがシェルスは、クエレブレが偽りの英雄むけて突っ込むのと同時に剣を抜く。そしてナハトに向かって斬りかかった。


ナハトはそんなシェルスの剣を小手で受け止める。


受けるだけで攻撃してこない、シェルスは、これが証拠になってしまったと、先程の魔人の話を思い出した。


このリュネリアの願いによって顕現された守護霊は、一年間、姫を放置していたレインセルの人間全てに贖罪をさせる為に召喚された。そんな守護霊が姫に手だし出来るはずが無い


その様子を伺っていた魔人は、一つの解決策として提案する


『あのナハトの魂を封印する事、すなわち守護霊の触媒に眠らせる事が出来れば……』


それを聞いたリエナは、確かにそれなら可能だと考えた。そしてそれは……


「シェルスにしか出来ない……」


リエナは通信魔術でシェルスに伝える。


『シェルス! ナハトを守護霊として封印させれるかもしれないわ、私の指示を聞く余裕はあるかしら?』


シェルスはひたすらナハトに斬りかかっていた。だが全て小手で弾かれてしまう


リエナからの通信を聞いたシェルスは一旦下がり、そちらに耳を傾ける


『いいわ、一度冷静になりなさい。まずは今その守護霊はレコスさんを神殿として動いてる、その繋がりを断つ必要があるわ。』


シェルスはナハトの様子を伺っている。シェルスを見つめるように漆黒の兜がこちらを向いてはいるが、動く様子は無い


『繋がりを断つには、血が必要よ。剣に自分を血を付けなさい、その状態でナハトを切りなさい』


シェルスは言われたとおり、剣の切っ先を指に向ける。その時、ナハトがシェルスに向かって突進してくる。


「なっ……!」


シェルスは突進してきたナハトに両手を抑え込まれ馬乗りにされる。力で敵わない、必死に手を振り払おうとするも、微動だにすら出来ないほどの力で抑え込まれる




「まさか……シェルス自身が自分を気づ付けようとしたから……どれだけ過保護なのよ、あの守護霊は……」


リエナは感想を漏らしながらハナトに向けて魔術を使用しようとするが……


『まて! リエナ、あれに本気で襲われたら……いかに貴様でも危ないぞ!』


魔人が警告する、死なない体、もうすでに死んでいる体を持っていたとしてもナハトの剣で殺されると。


リエナが歯ぎしりする、そんな事を言っていられる場合ではない、とハナトに向けて手を翳した時、


「クエレブレ!」


シェルスが叫ぶ、その声を聴いたクエレブレはシェルスに馬乗りになっているナハト目掛けて滑空する


『主に乗るとは! 俺の上に乗る主だぞ!』


クエレブレは叫びながらナハトを突き飛ばさんと、脚の鋭い爪を剥きだしにし引っかけるようにナハトだけを狙う。


ナハトは危険を感じたのか、またはシェルスが危険だと感じたのか、シェルスから飛びのき地面に突き刺した剣を取る。そしてそのまま滑空してくるクエレブレを迎え撃った。


「はぁ……はぁ……」


そのスキを付いてシェルスは自分の指を切っ先で斬る。そして剣に血を垂らす。


クエレブレは伝説の英雄を足の爪で斬り裂かんとしているが、ナハトはいとも簡単に躱す。


そしてクエレブレに向けて剣を投擲する


その剣は魔術で強化され血の色で染まっていた。そのままクエレブレに突き刺さる剣


クエレブレは撃ち落され、強制的に撤退させられる


「はぁ……はぁ……レコス……」


シェルスはナハトを見据える。今度こそ、と剣を構える


その時、ラスティナが押さえていたディアボロスが大声を上げて復活する。ラスティナの守護霊である巨人の足を持ち上げている。


「っく……」


ラスティナは再び巨人に魔力を注ぐ、太陽の加護を受ける巨人は再び輝きだすが……


ディアボロスの力の方が勝っているのか、巨人の足が少しずつ浮き上がっている


「まずい……このままじゃ……おし負ける……」


ラスティナは歯ぎしりしながら必死に魔力を注ぐ。


「ラスティナ……」


ステアがラスティナの手を握る、そして思い出す


ラスティナとこうして手を繋いだ……あの時の事、あの夜を



あの夜の月も……綺麗だった。



ドクン、とステアの心臓が高鳴る。体に力が溢れる感覚


ステアは月と同調する。まだ月は出ていない、しかしステアは確かに同調していた。


「ステア……?!」


ステアの手から大量の魔力が注ぎ込まれるのを感じたラスティナは、思わずステアを見る。一目で分かった。同調している、自分が繋がる事が出来る物と。ラスティナ自身も初めて太陽と同調した時の事を思い出した。あの時の感動、あの時の力を


「ステア……ありがとう……っ」


ラスティナはステアからもたされた魔力をも巨人へと注ぎ込む。巨人の輝きは更に増し、ディアボロスを押しつぶしていく。


「行ける……!」


そんな様子を見ていたリエナ、先代のナハトだが自分はラスティナに魔力を注ぐなど出来ない。


もとより魔術師は他人に魔力を注ぐなんて芸当は出来ないのだ。


だが目の前でステアはラスティナへと注ぎ込んでいる。月が太陽へ力を注いでいる


「月が太陽を照らすのね……魔人、私も血が騒いできたわ、シェルスの所に……転移させて」


『貴様、まさか……囮になるつもりか、しかし……』


いいから、とリエナは暗唱の宝石に魔力を注ぐ。宝石は忠実に魔力を使用して魔術を起動する





ラスティナは渾身の魔力を巨人に注ぎ込み、ステアと共にディアボロスを押しつぶす。


巨人の足は地面にめり込み、これでもかと踏み込んだ。


「はぁ……はぁ……」


ラスティナはディアボロスの気配が消えるのを確認すると、膝を折って項垂れる


「ステア……ステア……」


そして姉に甘えるように、ステアに抱き付いた。ステアも半分分けが分からなかったが、うまくいったようで良かったと腕を回していた。





一方、シェルスはナハトへと斬りこむ。スキが出来ない、シェルスがどれだけ打ち込んでも小手で弾かれる。シェルスは一旦下がる、剣に着いた血はすべて落ちてしまっていた。


シェルスは剣の刃に指を添えて血を垂らそうとしたが、自分が傷をつける素振りを見せればナハトはまた自分目掛けて突進してくる……シェルスは歯ぎしりしながら目の前の英雄を睨みつける


その時、目の前にリエナが転移してきた。


「シェルス、分かってるわね」


それだけリエナは言う、そしてリエナを確認したナハトは剣を突き出し、リエナ目掛けて突進する


「リエナ様……!」


シェルスはチャンスは一回だけだ。とリエナの影に隠れるようにして剣を握る。自分の手から滴る血液。血まみれの剣をリエナの後方で構える



鈍い音、肉が突き刺される音、シェルスはこれで何回目だ、と目の前の光景を見据える


「ああああぁ!」


リエナはナハトに抱き付き、離れまいとしていた。だがナハトも意図に気が付いたのか、リエナから剣を引き抜きながら、リエナを突き飛ばす。


だが、もう遅い、シェルスの剣は投擲されていた。


ナハトの目、兜の隙間に剣が突き刺さる


ナハトは剣を鷲掴みにし、引き抜こうとする、が


シェルスが疾走し、その剣を再び握り更に突き刺す。そして、自らの血でリュネリアとの繋がりを断たれた守護霊、そして新たな繋がりを上書きされた守護霊へと願う。


「眠れ……!」


剣を握りながら、ラスティナに教えられたように、願う。




ナハトの漆黒の鎧、ローブが解かれる、霧散したそれ、童話の英雄の魂は剣へと封印されていく。


そして魂から解放されたレコスが、そのままシェルスに向かって倒れこんできた。



「レコス!」



シェルスは剣を捨て、レコスを抱きかかえるように支える。


息はある、目立った外傷もない。


「レコス……」


シェルスはレコスを抱きしめながら、久しぶりに再会した騎士に謝り続けた。



「一人にして……ごめんね……」





その様子を、騎士達はラスティナの巨人の後方の高台から見ていた。


レコスが無事だと分かり、脱力するモールス、ガリス


シェバに肩を貸しながらイリーナも見ていた。





「おい、あれが私達の娘だぞ」


「ああ……どうしよう、俺より強くなっちゃったら……」





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