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平和な港町

 レインセル南、首都スコルアからドラゴンで3日飛び続けて、ようやく到着する港町にガリス隊は派兵されていた。小さな港街な為、隊全員で赴くまでも無く派兵されたのは4人のみだった。


「海はいいですね……」


シェルスは海を眺めながらレコスともにサボっていた。

なにせ魔人、魔物の討伐と言われて来たのはいいが、実際に討伐できたのは数匹の魔物のみ。

連隊の騎士が来ずともいいのではないかと派兵された4人、誰もが思っていた。


「ひめさ……シェルスは海が好きなんですね……」


未だに姫様と呼び間違えるレコスに対してシェルスは笑いながらレコスの顔を見る。

女の様に綺麗な顔、それとは裏腹に筋肉質な体を持つ男の顔を


「レコス、敬語も止めてください、私の先輩じゃないですか」


「そ、それはそうですけど……なんか落ち着かないというか……なんというか……」


シェルスは笑いながら再び海を眺める。すると後ろから


「おい、お前ら」


ビクっ……とシェルスとレコスは背筋を正す。そして後ろの声の主に恐る恐る振り向くと

二人の頭に鉄拳制裁が加えられた


「サボってないで巡回行って来い!」


「「は、はい!!」」


鬼教官、モールスに命じられ二人は頭を押さえながら港町の外へと繰り出していく。


「い、痛いですね……サリス隊長の鉄拳より……」


頭を押さえて走りながらシェルスはレコスへと話かける。サリスの鉄拳はめり込む感じだが

モールスの鉄拳は食い込む感じだと


「その違いって……微妙すぎますね……どちらも痛い事には変わりはないかと……」


レコスは嘆きながら自分達の巡回路へ向かう。


レコスとシェルスは2人で港町の東を巡回していた。小さな森があるものの、ここの魔物は可愛いもので

木の実を取って食べてるような物ばかりだった。


「別に巡回する必要もないんでしょうけど……」


レコスは森林浴を楽しむように深呼吸しながら歩く。シェルスはそれについて歩き先輩騎士の背中を見て思う。


(この人のように私は強くなるんだ……決してプロポーズされたからとかじゃなくて……)


シェルスは魔人に襲われた日の事を思いだしていた。不可抗力とはいえレコスに告白された……と思ってはいたが、後からナハトに「あれは結界破りですよ~」とか言われて肩を落としたが。


「そういえばレコス様……イリーナはなんで来なかったんでしょうか……ヒマだヒマだと嘆いていたのに……」


レコスは自分の姉のように慕っていた女性を思う。


「たぶん……ドラゴンで5日飛ぶのがダルかったんじゃないでしょうか……あの人、めんどくさい事は大嫌いなので……」


そんな理由か、とシェルスは飽きれ顔をしながら森の中を歩く。


途中、木の実を採りに森の中に入ってきている港町の人間とすれ違う、彼らにとっても森の中は安全だと認識されている。こんな所を巡回しても意味はあるのだろうかとシェルスは思うが……


「だ、だれかー……!」


シェルスとレコスは同時に走り出す、助けを求める声がする方へ……

木を掻い潜り、抜けた広場に声の主は居た。


今まさに魔物に襲われていた。


「ふせて!」


シェルスは間に合わない、と判断し声を上げる。同時に剣を抜き巨大な猿のような魔物の喉元に向かって投擲した。


見事に喉に命中し、魔物は一瞬ひるむ


「レコス! 私はあの人を……」


「分かりました……!」


シェルスが助けを求めた主、中年の男性を軽々と担ぐ。そしてレコスがシェルスの放った長剣を握り

横に一閃しながら魔物の喉を切り裂く。


そして、身の丈5mほどの魔物の頭の上に飛び乗ると頭頂から顎に向かって長剣を突き刺した。


トドメを刺したレコスは魔物の頭に足を添えてシェルスの長剣を引き抜く。


「うわ……やっぱり頭刺すのは……まずったか……」


ドロドロに……血とそれ以外の物で剣が汚れている、とレコスは常備していた剣紙で血を拭う。



「レコス、ちょっと……」


シェルスは男性を木の影におろし介抱していた。レコスは呼ばれ、シェルスの元へ駆け寄る。


「どうしました? ひめさ……シェルス……」


レコスは、また言い間違えた……と苦笑いしながら、助けた男を見る。その男の喉元、腹、腕には魔物の物とは違う……あきらかに剣やナイフで切り付けられた傷があった。


「大丈夫ですか? 今治療しますので……」


シェルスは聖女達から学んだ治療魔術で男の傷を治していく。

レコスは男と目線を合わせるようにしゃがみ尋ねる。


「その傷……魔物じゃないですね……誰にやられたんですか?」


「わからねえ……港の人間じゃねえ……」


シェルスとレコスは顔を見合わせる……ある意味魔物より厄介な奴が近くに居る、と。


「とりあえず、応急処置は終わりました……あとは街に戻って治療を……」


「シェルス!」


いきなりレコスがシェルスを突き飛ばす、男がもたれ掛かっている木にハンドアクスが突き刺さった。


「なっ……」


シェルスは投擲されたであろう後方を見るが……誰も居ない。


「レコス……」


「まだ……居ますよ……」


レコスは先程魔物の頭から抜き取り血を拭ったシェルスの長剣を返す。そして自分の長剣を抜き……


レコスは気配を追う。木の影に隠れている。


「シェルス、担いで街まで走れますか?」


レコスはシェルスに、助けた男を担いで逃げろと言い、シェルスは黙って頷きながら男を担いで走り出す。


レコスも後ろに下がりながら木に刺さった斧を引き抜く。


「グランステアード……いい物持ってるじゃないですか、これ貰ってもいいですか?」


挑発するような態度で言い放つ、次の瞬間5本同時に木の影から短刀が投擲される。


レコスはショートアクスと長剣で短刀を全て弾く


弾きながら投擲する、名匠の斧を返すように


「がっ! レインセルの騎士め……っ」


レコスはその声の元に突進する。誰であろうと逃がさない、と長剣を振り被り隠れている木ごと切断する


声の主は寸での所でレコスの剣を短剣で受け切り、倒れる。


「なんだ、お前は……女騎士のくせに……」


また女だと思われてる……とレコスは心の中で嘆きながら、声の主の喉元へ切っ先を当てる


「お前も女だな……」


レコスが対峙しているのも女だった。腕にはレコスが放ったショートアックスが刺さり、出血が激しい


「早く治療しないと手遅れになるぞ」


レコスは淡々と目の前の女に言い放つ、女は観念したかのように短剣を離し、腰に装備していた直剣を捨て、立ち上がる。


ボグ!


と、鈍い音がした。レコスが立ち上がった女の溝内に拳をめり込ませ、気絶させる




「僕の鉄拳は……そんなに痛くないですよね……」




レコスは女を担ぎ、港町へと連行した。



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