プロローグ 候補者
「嫌だよ! だいたいおかしいでしょ! 《王の候補者》だかなんだか知りませんが、転生者だから戦わないといけないなんて」
優姫のそんな態度に夕実は困った顔を浮かべたまま続ける。
「とは言っても、他の転生者が乗り気でしたら優姫さんのことを襲ってくると思いますよ」
最悪な状況に優姫は頭を抱えてしまう。自分は戦いたくない上に現時点で魔法を使えない、にも関わらず他の転生者は自分に攻撃を仕掛けてくる可能性があるというのだ。
「とにかく……戦いなんてゴメンだ」
優姫はそう言い残して、家を出た。
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どうしてこうなった、とごく普通の中学生、優姫は考える。彼は外で出会った幼なじみの『朝田加奈』にカフェでカプチーノを奢っていた。
「やっぱり、奢ってもらうカプチーノほど美味しいものはないわ。得した気分」
最低だ。そして得してるに決まってるだろ、お前はびた一文も出していないのだから。まぁ彼女にこれを奢ってあげたのには理由があるのだが……
「で、相談って何?」
「あぁ……もしも………自分の人生に大きな変化が来てるって言われたらお前はどうする?」
「はぁ?」
何言ってんだコイツ、といわんばかりに彼女は眉をしかめた。
「それも自分には都合の悪いことで、受け入れるしかないことだったら」
彼女はカプチーノを飲み干してから席を立ち上がる。
「自分で答えを言ってるじゃない」
「え?」
「受け入れるしかないわよ。そんなものから逃げたって、結局は自分に都合がいいだけなんだから。それでも受け入れられないなら何でこうなったのか、その理由を考えてみるのも手ね」
と、相変わらず大人びた雰囲気で最もなことを言い残して彼女は去った。にしても、ホットのカプチーノを飲み干すって……
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「ねぇ、お嬢さん〜!」
「!」
「俺らと遊ばない? お金は俺らが出すからさぁ」
一方、優姫と別れた加奈は不良に絡まれていた。いや、ナンパというべきか。
「ごめんなさい、今から部活があるので」
加奈はそう言って去ろうとするが、この不良はしつこく2人で行く先を妨害する。
「いいでしょ?」
「……イヤよ」
ハッキリ言い残して、彼女は不良の1人を突き飛ばして走り出した。
「……あの野郎、ちょっと調子に乗ってんな」
すると男の拳が一瞬光ったと思った瞬間、男の拳に炎が灯った。
「お仕置きだぜ、《王の候補者》の力をもって!」
短かっ!
けど、ここまでにしときます。