06
太陽の光がさんさんと差し込む窓辺に腰を掛けながら、私はシオンさんに貰ったペンダントを見つめる。
日の光に当ててみれば、赤色がキラキラと輝き、中に薄らと浮かび上がる薔薇が綺麗に形を作った。
「うーん・・・」
やっぱり、あの人はシオンさんの友達だったんじゃないだろうか。
けれども勝手な推測で情報を与えて、彼が危険な目に遭ったりしたらたまったものではない。
本当なら本人に直接「ハルトムートという人を知っていますか?」と聞くことができれば1番なのだけれど。
放浪しているシオンさんが何処にいるかなんて、私には知る術もない。
次は、いつ頃やってくるのだろうか?
ぼんやりとそんなことを考えていれば、がちゃり、とノックもされずに突然扉が開く。
私以外にこの家のドアを開ける人間なんて師匠しかいない。
ちらりと視線をやれば、もちろんそこには期待通りの人が立っている。
師匠は私の手の中にあるペンダントを見て、眉根を寄せた。
「それは?」
「ほら、以前、シオンさんに貰ったペンダントですよ」
「あぁ・・・」
「昨日来たあの人が言ってたのって、これかなって思って」
手を持ち上げて、ペンダントをゆらゆらと揺らせば師匠は肩を竦めた。
「そんな不吉なものは捨てるべきだな」
「嫌ですよ。せっかくシオンさんから貰ったものなのに」
そう零せば、師匠はむっとした顔をする。
皺がいつもよりも深い気がしたけれど、私のせいではない。たぶん。
「それより師匠、何か用があったんじゃないんですか?」
どうせ、魔法薬の調合の手伝いか、薬草採取だろうな。と思いながらも、一応尋ねる。
師匠は一瞬、考え込んだ後に、にやりと口の端を釣り上げた。
あ、これは何か良からぬことを考えついたときの顔だ。
「街へ行こうか」
「え?街ですか?」
「あぁ。デートだ」
師匠の口から漏れそうにもない言葉に、私はきょとん、とする。
けれども、その意味を理解した途端に、カッと頬に熱が上った。
「え・・・え?で、デートって、あのデートですか?」
「あのも何もないだろう。デートはデートだ」
「あれですよね、一緒に出掛けて、買い物したり、お散歩したりする・・・」
「確認するまでもなく、そうだろう。僕と出掛けるのが嫌なのか?」
「そ、そんなことないです!!!」
途端に頭の中に色々な妄想が浮かび上がってくる。
手をつないで商店街を歩いたり、お店を冷やかしてみたり、カフェでケーキを食べたり。
私が憧れていたことが出来るかもしれない!
良からぬことを考えてるとか疑ってごめんなさい!
嬉しくなった私は手に持ったペンダントをアクセサリーボックスにしまうと、師匠の背を押して部屋の外へと押し出す。
「師匠、着替えて用意するんで!30分後に玄関集合で!」
「別にそのまま出掛けても構わないだろう?」
「嫌です!駄目です!お洒落するんです!」
「分かった、分かった」
苦笑に近い笑いを浮かべて、師匠は私に押されるまま大人しく外へと出る。
素直に階段を下りて行く背を見送ってから、私は自室の扉を閉めると大慌てで洋服を漁った。
いくら寒くなってきたとは言え、分厚いコートを着て出掛ける程の気候ではない。
そうなると、ブラウスとカーディガンを合わせるのが良いだろうか?
普段、魔法のことではあまり回らない頭も、コーディネートの話となると具合が違う。
ぐるぐると目まぐるしく、自分の持っている洋服の中で最善だと思われるものを弾き出してくれるのだ。
服装のことを考える一方で、街に出たら師匠と一緒に何処へ行こうか、なんてことまで考えて、私の頬は思わず緩んでしまうのだった。




