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魔法使いと私  作者: りきやん
何かが始まりそうです

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11

「それで、返事は?」

「へ?」


ケーキの箱を食卓の上に置き、さぁ、ひと息つこうか。という時に、師匠は小首を傾げながら私にそう尋ねた。

一体、なんの返事だろう。と考えてから、昨日のことかと合点して、私は真っ赤になる。


「な、だ、だって・・・」

「だって?」


じりじりと迫ってくる師匠に、じりじりと後ずさる。

嬉々とした表情を浮かべているあたり、私の返事に対する不安など微塵も持っていないのだろう。


「あ、あ、あのですね・・・。その・・・。昨日、すでに言った通りでして・・・」

「リザに言われたのは、僕に嫌われたくない、ということと、僕のことが知りたい、ということだったな?」

「そうです!それです!それが、返事っていうか、私が最初に言ったっていうか!」

「それに対しては、答えてあげたと思うんだが」


確かに、昨日、ドア越しに教えてもらった。

そのおかげで、私が調べていたアルノーさんと、師匠の友人は同じ人物だと確信できたのだ。

それと、嫌いにならないで、の答えも。


「僕は君の言葉にきちんと応えたはずだ。それなのに、君はそうやって、はぐらかして流すのか?」

「そ、そんなこと・・・」

「そんなに僕のことが嫌いか」


途端に、悲しそうな顔をする師匠に私は慌てる。

師匠が嫌いだなんてとんでもない。

むしろ、その逆だ。


「違います!嫌いなわけないです!」

「それじゃぁ、どう思ってるんだ?」


にやり、と意地の悪い笑みを浮かべたところで、私は気付いた。

今の悲しげな表情・・・嘘だったのか!

私から返事を引きずり出そうと、師匠がこんな演技までするなんて!


「ど、どうって・・・」

「ねぇ、リザ」


そっと頬に手を添えられ、師匠の顔が近づいてくる。

こつん、と軽くあたった額。

あまりの至近距離に、私は頭の中が真っ白になる。


「教えて?」


もう、逃げられない。

金色の双眸はしっかりと、私を見据えている。

恥ずかしさのあまり、その目を見ることもかなわず、私はぎゅっと瞼を閉じた。


「す・・・」


動悸が激しくなり、声が掠れる。


「すき・・・です」

「よくできました」

「なっ・・・ん」


唇に柔らかいものが触れ、続けようとした抗議は全て呑み込まれる。

師匠が自身のそれで塞いだことに気付くのに、時間はかからなかった。

触れるだけの軽いもの。

けれども、私の頭がパンクするには十分だった。


すっと離れた師匠の手。

私は真っ赤になりながらも、ぽかんとして、師匠を見上げる。

余裕の表情で楽しそうに笑っているのが憎たらしくて仕方がない。


「き・・・キスした」

「お互い好きなんだ。もう、遠慮はしないからな」

「え?えぇ?!」

「今まで我慢していた僕の理性を褒めて欲しいくらいだ」


驚愕の事実に、私は瞠目する。

それって、それって、もしかして。


「あ、あの・・・師匠はずっと私のこと・・・」

「好きだったよ。でも、君が僕と師弟であり、家族であることを望むのであれば、何も言わないつもりだった」


ふ、と師匠が目を細める。


「嬉しい」


たった、それだけだった。

けれども、その言葉は私の胸にずん、と響く。

普段、嫌味ばっかりの師匠が素直に喜びを表現したのが、珍しかったからかもしれない。

それでも、この一言に込められた、感情の重さが声に如実に現れていたのは確かだ。

こんなに穏やかで、優しい声が出せるなんて。


感極まってしまった私は、思い切り、ぎゅ、と師匠に抱きつく。

師匠もそれに応えて、抱きしめ返してくれる。


「私も、とっても嬉しいです!」

「そうか。でも、僕には負けるだろうな」

「そんなことないですもん!」

「何年越しだと思ってるんだ。僕は君が生まれる前から・・・」

「え?」


きょとん、として聞き返せば、師匠は口が滑ったとばかりに口元に手を当てる。

そして、私を引きはがすと、にっこりと笑みを浮かべた。


「さぁ、ケーキを食べようか」

「え、でも、師匠、今なんか聞き捨てならないことが」

「リザ、君の好きなショートケーキだぞ」

「ちょ、ちょっと、師匠」

「僕の分も欲しいか?あげないこともないぞ」

「欲しいです!ください!じゃなくて、もしかして、師匠はロリコ・・・」

「黙れ。断じて違う」


すたすたとキッチンに向かう師匠の後を追いかけて、私はぎゃんぎゃんと喚き立てる。


「どういう意味ですかー!教えてくださいー!」

「教えない」

「師匠の意地悪!」

「意地悪で結構」

「だいたい口を滑らせた・・・むぐっ」


突然、口が塞がったまま動かなくなる。

声は出るのに、口が開かない。

この異常な事態は、師匠が無言詠唱のせいだと確信する。


「んー!んー!」

「うるさい。しばらく、その口を閉じておけ」

「んーっ!んーっ!んんーっ!」

「それとも、本当に知りたいというのなら・・・」


師匠が私の肩をぐっと掴む。

思わず身を引こうとしたけれど、動けない。

蛇に睨まれた蛙のように、私は固まってしまう。


「さっきの続きを最後まで出来たら、教えてやろうか?」


口の端を上げて、師匠が目を細めて笑う。

あまりにも妖艶なその笑みに、私はぶんぶんと首を横に振った。

続きっていうのが、なんだかよく分からないけれど、きっと、私にとって不都合なことに決まっている。

師匠は私を掴んでいた手を離すと、ふん、と鼻を鳴らした。


「それが無理なうちは、教えてやらん」

「んー?んーっ!」

「さ、お茶の時間にでもしようか」


とりあえず、師匠は師匠のままだということがよくわかった。

お互いの気持ちが通じても、何かが激変する訳じゃない。

その事実に、私は少しだけホッとしていた。


今まで通り、でも、少しだけ距離が近くなる。

私が恐れていたような、気まずさは何もない。

それが、とても嬉しかった。


でもね、師匠。

魔法解いてくれないと、ケーキ食べれないんだ!

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新作「グレーテルと悪魔の契約
ちょい甘コメディファンタジーです。
よろしくお願いします〜!
by りきやん

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