良い勉強になりました
遺跡から出て、思い切り日の光を浴びる。幸いなことに、あのガーディアンはまだ復活していないようで、祭壇からは楽に出ることが出来た。
そして、来た道をシオンさんと一緒に歩いて帰る。
結局、あのウサギは最初から存在しなかったかのように体毛1本見つからなかった。シオンさんは、それに大層ご立腹のようだ。先ほどから、手のつけようがないくらい大声で喚いている。
「な! ん! で! お宝があのクリーム色の宝石1つやねん! 他にも何かあるやろ!」
「ま、まぁまぁ」
「これ売れへんかったら、キレるで!」
きぃーっと、いきり立つシオンさんに、私は苦笑いを浮かべる。
きっと、シオンさんの頭の中では全ての物が「売れる」か「売れない」かで分類されているのだと思う。それとも、場数を踏んでるから、あんな魔物と対峙するのはシオンさんにとっては、珍しいことでも何でもないのだろうか?
「だいたい、あのウサギはどこに行きよった!」
「シオンさん、それなんですけど、私、もしかしてゴーストだったんじゃないかと……」
「ゴーストでも何でも、構わへんけど、毛皮くらい残せっちゅうの! 全部消えてしもうたら、売れへんやん!」
ほんっと、この人、お金のことしか考えてないんじゃないか。
あんなよく分からない恐怖体験をしたのに、それについては頭からすっぽ抜けているようだ。ゴーストが怖くないなんて、信じられない。
そんなにお金が大事か……。なんだっけ、守銭奴? 金の亡者? そんな代名詞がぴったりだ。
なんて考えてた時に、すすす、と寄って来たシオンさんにびっくりして半歩下がってしまう。
失礼なこと考えてたからね! 心の中がバレたかと思ってびっくりしちゃったよ!
「なーなーリザちゃん、ほんまは、お宝山分けしよー思てたんやけどー」
にこやかな笑みを浮かべるシオンさんに、私はあぁ、と相づちを打つ。
「別に気にしなくてもいいですよ。もともと、あのペンダントのお礼で案内したつもりでしたし。シオンさんが持って行ってください」
「うわー! さっすがリザちゃん! ありがとうなぁ!」
再び機嫌良く歩き出したシオンさん。私はその背中を見て、くすくすと笑う。
シオンさんてお金にはがめついけど、根は正直なんだろうなー、きっと。そうじゃなきゃ、わざわざ私にあんな確認取ったりしないだろう。
確かに、遺跡で得た物がクリーム色の良く分からない宝石だけっていうのはちょっと残念かもしれない。それに、あのウサギはきっとゴーストだったのだろう。そうでなければ、突然消えるなんて考えられない。
「ここはルーニーラビットの墓」だとはっきり言っていたし。
でも、遺跡を実際にこの目で見ることが出来たのは貴重な体験だった。墓荒らしという汚名を背負うという代償を支払ったにしてもだ。
――あのお墓には、後日ちゃんとお花を添えに行こうっと。
「あ、シオンさん。私、こっちなんで」
「おー、旦那の家はそっちやったな。ほんなら、おおきになー」
「こちらこそ、ありがとうございました! 怖かったけど、良い勉強になりました!」
「また何かあったら連れてったるでー」
ぶんぶん、と腕がちぎれそうなくらいシオンさんは元気よく手を振る。
私もそれに振り返すと、頭の上のスノウも見送るようにピー! と鳴いた。




