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魔法使いと私  作者: りきやん
みんな仲良くしましょうね

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07

『こっち、こっちに来て』


聞こえる。

やっぱり聞こえる。

ちょっと待って、これ幽霊とかそういうオチだったら笑えない。

本当に笑えない。


「シ、シオンさん」

「なんやー?」

「あの、やっぱり声が聞こえるんですけど・・・」


私が真っ青になって、そう報告している間にも、声が何かを訴えてくる。


「声?なんて言うとるんや?」

「こっち来て。って、さっきから、ずっと・・・」


シオンさんは、立ち止まって振り返ると、うーん、と口に手を当てて悩む。


「リザちゃん、ちょいと失礼」


スッと、二本指を私の額に当てて、シオンさんは小さく呪文を唱える。


「彼の者に掛けられし呪の言、我の前に晒さん」


ふわり、と額が温かい光に包まれる。

呪いが掛けられてるのだと、シオンさんは踏んだのだろう。

呪い晒しの呪文を唱えたようだ。

師匠だったら、何の呪詛かも確かめずに解いちゃうんだろうけど。

当たり前だけれど、普通の人はそんなことできない。

というより、シオンさんって魔法使いまがいのことも出来るんだ。

そして、外と違って、ここは魔力は吸い取られないのね。


「うーん、呪い掛けられてる感じではなさそうなんやけどな」

「あ、あの、もしかして、幽霊・・・ってことは・・・」

「十分に有り得るで」

「うわぁ・・・」

「なんにせよ、正体の分からん声には耳を貸さんことや。間違えても呼びかけに応えたりしたらあかんからな」

「はーい」


シオンさんは自然に私の手を取ると、つないだまま進んでくれる。

怖かったから、ちょっと嬉しいかも。

ごうごう、と音が酷いだけで、ここにはどうやら、魔物もいないようだ。


「シオンさんて、魔法使いなんですか?」


さっきの呪い晒しの呪文を思い返して、私は質問する。

けれど、シオンさんは私の質問を一笑した。


「ちゃうちゃう、俺は魔法は大して使えへんで。攻撃魔法なんか、発動すらせぇへんもん」

「でも、さっきの魔法は?」

「あー、職業柄必要な魔法はなんとか使えるようになったんやけどな。呪い自体を解いたりはでけへん」

「でも、武器は魔法剣ですよね?」

「残念ながら、かなり素材に頼っとるけどな」


シオンさんは、空いてる方の手でかちゃり、と剣を鳴らす。


「さっき話した、ヴァンパイアの髪の毛だけやのうて、それこそ月光鳥の羽根からピクシーの粉まで、ありとあらゆる魔法素材で強化しとんねん」

「強化すると、どうなるんですか?」

「俺の魔力が微量でも大きく反応して、増幅してくれるんや」

「私も、何か道具使えば、魔法が上手く扱えますかね?」

「うーん、どうやろな。俺みたいな武器使う人間やったらいくらでも手段はあるけど、呪文を使う人間は限られてくるんちゃうか?」


さすがのシオンさんでも、畑違いのことは分からないか。

師匠に聞けば、知ってるんだろうけど、あの師匠のことだから「自分で調べろ」って言うに決まってる。

まぁ、師匠の言う事は最もだけどね。

帰ったら、スノウと一緒に何か媒体になるものでも作ってみようかな。


真っ暗な通路を進んでいると、私たちは大きく開けた円形の場所に出た。

ドーム型にくり抜かれたその空間は、じめじめと陰気で、どうしようもなく闇に包まれている。

シオンさんのライトでは、ちょっと心許ない。


『こっち。ねぇ、こっちに来て』


まただ。

シオンさんと話していたからか、無視できていたけれど、また声が聞こえて来る。

生気のない、けれど、叫んでいるように悲痛な声。

訴えるように、私に自分の居場所を知らせて来る。


「シオンさ・・・」

「おー!なんやあれ!」


私が話しかけようとした矢先、シオンさんは嬉々とした表情で真っ暗な中を歩いて行く。

もちろん、手を引かれている私がそれに抗えるはずもなく、仕方なしについて行く格好になった。


「おぉ!見てみぃ、リザちゃん!石碑に宝石が埋まっとるで!」

「ほ、ほんとだ・・・」


開けた場所の中心にぽつん、と立っていた石碑。

その表面には、美しいクリーム色の宝石が埋まっていた。

まんまるのその形は、まるで満月のようだ。

こ、これは、ちょっと感動するかも。


『ようやく、来てくれた!さぁ、早く!早く!ここから出して!』


言葉が変わった。

今まで、こっちに来いとしか言わなかった声が、今度は出して、と。

なんだか不気味になって、宝石を見つけた感動も薄れてしまった。


「シオンさん・・・」

「なんやー?」

「声が、出してって・・・」

「無視しときぃ。応えなきゃ、向こうはなんもできへんから」


そういうものなのだろうか?

全く以て疎い私には、不安しかない。


「大丈夫やて。呼びかける。っていうのは、相手が言葉を返さへん限り、成り立たへん魔法や」

「そ、そうなんですか?」

「こっちが応えると、向こうは認識されたことを自覚する。ほんで、悪さしてくんねん」


シオンさんは、いいながらクリーム色の宝石に手をかける。

そして、私があっと言う間もなく、それを外してしまった。


「それ、外して平気なんですか?」

「ん?あぁ、特に仕掛けがしてあった訳でもないから、大丈夫やろ」


そして、それを鞄にしまう。

クリーム色の宝石を失った石碑は、心無しか寂しく見える。

それをじっと見つめていて、何か文字が書かれている事に気づいた。


「シオンさん、その石碑、文字が書いてありますよ」

「んー?どれどれ?」


シオンさんは、ライトを近づけると石碑を照らす。

どうやら、ルーン文字ではなく、古代ギリシア文字のようだ。


「あかん、この文字読めへんわ」


お手上げ、と降参ポーズを取るシオンさん。

これは・・・役に立てる時が来たかもしれない!


私、古代ギリシア文字は読めるんだ!

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新作「グレーテルと悪魔の契約
ちょい甘コメディファンタジーです。
よろしくお願いします〜!
by りきやん

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