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散々泣いて、大分落ち着いた後、私は師匠に手を引かれて森の出口に向かう。
先導してくれているのは、もちろんあの月光鳥。
「不思議なものだ。月光鳥は人に懐かないことで有名なんだがな」
「そうなんですか?」
「あぁ。君が動物や魔物と心を通わせることができる、というのはあながち嘘ではないのかもしれない」
「もう、だから言ったでしょ!きっと、これが私の魔法なんですよ」
「いや、そんな魔法は存在しないはずだが・・・」
うーん、と空いてる方の手を顎に当てて、師匠は考え込む。
これをやりだすと、師匠はしばらくうんともすんとも言わなくなる。
だから、そうなる前に師匠に疑問を投げかけた。
「それにしても、どうして師匠はあの祭壇で倒れてたのにガーディアンに襲われなかったんですか?」
「語弊があるな。倒れたのは、襲われた後だからだ」
「え?でも・・・?」
「あの祭壇でのガーディアンの出現条件なんだが、おそらく『意識を持った人間』が領域を犯すことだと思う」
「じゃぁ、途中で意識を失ったから、平気だったんですか?」
「そうだ。ついでに、あの祭壇には魔力を奪う力がある」
「あ、だから、私の召還術が発動しなかったんだ」
よかった、私があの大事な局面で失敗していた訳ではなかったんだ。
「しかし、あれだけ魔力を取られたのは初めてだ」
「そんなに酷いんですか?」
「君はもともと魔力が少ないから、意識を失わなかったのだろうが、僕は魔力で出来ているようなものだからな」
「ふーん?」
魔力で出来てるって、どういうことだろう。
身体の構造は同じだろうに。
あれかな?私は魔力が枯渇しても平気だけど、体力無くなったらばてちゃうし。
師匠はその反対、みたいな。
「でも、どうして急に目が覚め・・・あ、月光鳥の羽根!」
「そうだ。あの鳥が、僕らに魔力を分けてくれたんだ。あれがいなかったら、僕らはガーディアンに飲み込まれて死んでただろう」
「そっかぁ、小鳥さん、ありがとう!」
私が声をかけると、前を飛んでいる月光鳥はピッ!と小さく鳴いた。
「でも、師匠が無事で本当に良かったです!」
「僕からしたら、君に怪我が無くて良かったけどな。まさか、魔法も使えないのにあんな奥までくるとは思わなかったよ」
「それだけ、師匠のこと心配したってことなんです!」
私の言葉に、師匠はうっと詰まる。
そして、照れたように頬を掻いた。
あら、珍しい。こんな貴重な場面、10年に1回見れたら良い方だ。
私は師匠と繋いでる手にぎゅ、と力を込める。
そうしたら、師匠が応えるように握り返してくれた。




