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龍神の詩 外伝 - 風水炎舞  作者: 白楠 月玻
六章 炎狐と龍姫
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六章四節 - 龍狐の攻防

 大斗(だいと)のせいか、絡柳(らくりゅう)のせいか――。

 できるだけ与羽(よう)とかかわらないようにしていた辰海(たつみ)も、与羽が大斗に連れられて道場に通うようになっているのは知っていた。絡柳とともにいるのも見かけた。

 辰海は知る(よし)もないが、先ほど乱舞(らんぶ)たちと月見川のほとりにいたのも、稽古の休憩をかねてのことだ。武術大会で傷ついた腕と背、肩は動かしても痛まないくらい回復したので、稽古を再開していた。


 ――気に入らない。


 すべてが気に食わない。


 辰海は与羽をにらみ据えた。

 あの余裕ぶった顔を泣き顔にゆがめさせ、許しを請わせてやりたい。

 昔みたいに、すぐ泣いてしまえばいい。


 そのためには――。


 深く考えずとも答えは出る。


「中州、手合せしてよ」


 ――うまくやれば正当に与羽をぶちのめせるかもしれない。


「……いいよ」


 与羽は先ほどまで自分を疎んじていた辰海の意外な言葉に、わずかに首を傾げつつも一度左腕に触れてから竹刀を構えた。

 痛みはほとんど消えているものの、違和感はまだぬぐえない。構える竹刀も一本のみだ。


 辰海も短く息をついて、構えをとった。


「きれいな構えじゃね」


 基本に忠実な辰海の姿に、与羽は淡く笑みを浮かべて称賛した。しかしその言葉は、辰海の耳には音の羅列としてしか届かない。


 合図もなく、与羽に竹刀を振り下ろす辰海。

 与羽はそれを受け流しつつ、半身になってかわした。竹刀はほとんど右手で持ち、癒えきってない左手は軽く添えるのみだ。


 与羽はその左手を竹刀から離し、辰海の体勢が崩れたらその手で追い打ちをかけようとしている。

 しかし、辰海は大きく踏み出した足を踏ん張り、乱暴に斬りあげてきた。


 与羽は体を回転させて辰海の方を向きつつ、垂直に立てた竹刀で辰海の攻撃を受け止める。


 ビシィィィィン!! と小気味良い音を立てて二本の竹刀が打ち合わされた。


 受け止める時にわずかではあるが身を引くことができたので、与羽は寸分おかずに衝撃から立ち直り、辰海のももを踏みつけるようにして蹴る。

 その反動で与羽は後ろに跳び退って辰海から距離をとった。


 もともと距離をとるためだけの攻撃で、しかも身軽な与羽の蹴りだ。足を踏まれた瞬間には動けなかったものの、与羽が離れるや否や辰海が追撃する。


 与羽は辰海の連撃を受け流しながら、後ずさった。竹刀が一本しかないと、なかなか反撃の機会がつかめない。


 与羽は辰海の動きを見ながら、考えた。

 うまく受け流すことができれば、竹刀は右手だけで持って戦える。しかし、受け止めるのならば両手を使いたいところだ。


「ふっ……」


 与羽は短く息をついた。できないことを考えても仕方ない。

 今できる最良の方法は――。

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