四章三節 - 光芒の問い
「今の辰海は、自分の感情に気づきたくないだけなんじゃないの?」
無言の辰海に、アメはなおも問いかける。
「認めた方がいいと思うよ。きっと後悔する。あれだけ与羽と一緒にいて、楽しそうに笑って、与羽のこと嫌いなわけない」
「君の口から、中州の名前を聞きたくない」
辰海が低くすごむ。にもかかわらず、アメはにっこりほほえんだ。
「それは嫉妬だよね? 僕が与羽と仲良さそうに聞こえるから」
確信的にそう問うた。
「そんなわけないでしょ。ただ中州の名前を聞くのが不快なだけさ」
「そうは見えないんだけどなぁ……」
まったく疑いのない様子で言う辰海を見て、アメは肩をすくめた。
「気づいてる? 辰海は中州を避けるようになってから、ほとんど笑わなくなってるよ。いつも仏頂面で」
「君には関係ないでしょ? 余計なお世話だよ」
しかし辰海はそう答えて、アメに背を向けた。これ以上話したくないというように。
「辰海……?」
「帰る。もう五次試験ははじまってるし、こんなところでくだらない話をしてる場合じゃなんだよ」
その声はひどく冷たい。
辰海とアメは文官を志す同志だったはずだ。与羽の件が起こるまでは、お互いに意見を言い合ったり、議論したりするなど仲も良かった。休日には与羽やラメも交えて城下町やその近辺で遊んだこともたくさんある。
友人だと思っていた相手の言葉だっただけにアメはひるんだ。これほど冷たく、憎しみさえ感じられる口調で接されるとは思いもしなかった。
その間にも、辰海はその場を離れていこうとする。
――このままじゃ、君はどんどん孤立していっちゃうよ?
そう思っても、声に出すことができない。
アメはただ辰海の背を見送った。




