情報ライン
逃亡者生活も5日目。その間に襲撃が3回。しかも一日に連続で2回。慣れるというよりも、うんざりしてきた。
最後にダブルラリアット―――厳密には違うが―――で伸した黒スーツ二人から慰謝料やら迷惑料やら、兎に角何かそんな理由で自分の良心を納得させた上で財布を没収。
新米逃走者だが、カード類は使った瞬間足が付くと分かっているので、現金だけ1円玉に到るまでいただいた上で、財布はある場所に埋めておいた。
どこに届けても、そこから逃走経路が知れると考えての行為だったが、無事財布に帰ってきて欲しかったら、千尋が無実のままに事件を収束出来る事を、名も知らない黒スーツ達にも祈って欲しいモノである。
どう言い訳してもまっとうな手段ではなかったが、手にした現金は計24万2千814円もあった。
RPGで敵を倒すとこうやって金が手に入るのか、と至極的を外した感想を持ちつつも、しかし手にした現金はリアルに心強かった。
監視カメラの無い屋台や出店を選んで、ラーメンやケバブで4日ぶりの食事を取った。
しかし、カメラの存在や、ひとりで利用した経験が無い等の理由で、宿泊施設は使わなかった。
夜は例によって、適当なビルの屋上で、空調施設か何かの機械の隙間で過ごした。屋上からの眺めは昼も夜も飽きさせない。上手いこと事件が解決しても、屋上マニアになりそうだった。
そうして、夢を見る事もなく眠っていた千尋の5日目の朝は、携帯電話の着信音で始まる事になる。
「ッ――――誰だ!?」
多少は安心といえども、飽くまで「多少」。熟睡など出来る筈もなく、鳴りだす電子音に即座に飛び起きて着信を拒否する。
(なんで!? 受信オフにしておいたのに……ヤバい、GPSで位置がバレるかも―――――!!?)
以前、謎の『声』に携帯端末を特定されメールを送られた際に、警察からも探知されかねないと考えて、直後から電波の送受信機能をオフにしておいたのだ。
オフにしていた筈だったのだが。
起きてから少しのんびり下界を眺めるのがここ最近の楽しみになっていたのに、そんな悠長な事も言っていられなくなってしまった。
再度携帯電話の設定を弄り、本日の塒にしていた高級マンション―――5階建て―――の屋上から人気の無い裏の通りに降りて、とりあえず落ち着いて今日の行動を決められる場所は無いか、と考えていた所に、
ヴゥウウン―――と、またしても着信バイブが。
「ハァ!? ……何だこれ、設定保存出来てないの……?」
涼しさ増す秋の午前中、通勤通学の皆さまが行き交う時間帯。
携帯バイブ音など珍しくもない。が、目立つのは間違いないのだから、逃亡者の心臓によろしくなかった。
いっそ捨てようかとも思ったが、現代の若者はもはや携帯電話無しでは生きられない。ワンセグだけも、今の千尋には貴重な情報源だ。現実逃避にバラエティーを見る程度だったが。
そんな、本来の機能がまるで働いていない筈の携帯電話が、電波の送受信機能を切っているのに呼び出しをかけて来るとは一体どういう了見か。
「…………」
諦めもせず振動を続けている手の中の携帯電話をジッと見ていると、とても不気味な存在に思えてくる。
なんかホラー番組でこんな話があったな。とか考えるに、どんな理由にせよ怖い事になりそうだったので、電源そのものをオフにした。
「なんかコエー……、ただでさえ手一杯……手から溢れてるのに、この上ホラーまで加わったら……。いや、まて……もしかしてオレもう、取り憑かれてる?」
『それはもしかして私の事かな?』
「ヒィッ!?」
一度はお蔵入りにしていた亡霊(または背後霊)説が緊急浮上し、千尋の背筋を冷たくした。
今自分に降りかかっている人生最大であろう不幸も、何かに祟られているとすれば説明が付かなくもない。
むしろもう自分は死んでいて警察は動く死体を秘密裏に追っていて黒スーツは葬儀社か何かで出鱈目な身体の異常も死んでリミッタ外れているせいなんだ。
「もーダメだー!!」
某ラッコのように間延びした声を上げる青少年。朝っぱらからテンションはどん底だった。
『よくもそこまで根拠の無い仮説で自分を追い込められるわね。本当に脳みそだけは残念だわ、キミ』
そこで追い打ちをかける亡霊(仮)。優しくしろとは言わないが、せめて黙っていて欲しモノだと千尋は切に願った。
一日の始まりがこれである。
何のあてもなく歩き、クルマも入ってこれなさそうな狭い路地を見つけると、千尋はそこに向かう。
路地の入口にあった自動販売機で缶コーヒーとコーンスープ、それにミネラルウォーターを買い、路地の中へ。
路地の中には開店前の小さなオープンカフェや、2階建で4部屋程度のアパートなどが所狭しと敷き詰められ、その一画に何故か汲み出し式の井戸があった。
古い井戸を残してあるのか、それとも現役で使われているのかは分からなかったが、周辺がちょうど休
めそうなスペースだったので、井戸を覆う木製の蓋の上に腰を下ろす。
「………ハァ……」
文字通り一息つき、コーンスープの缶を振って口を空けた。缶はそこそこ熱かったが、ジーンと手の平に伝わる熱が気持ち良い。
ツブツブのコーンとスープを飲み下すと、喉を熱いモノが流れて胃に落ちるのを感じた。五臓六腑に染み渡るとはこの事だ。
「……フッ……」
今日は土曜日。午前中は学生も学校へ行っている。
小さな路地だがヒトの目も皆無では無く、どう見ても高校生くらいに見える千尋が、いつまでもそこに居るワケにもいかないが、とりあえずは落ち付いてモノを考えられそうだ。
今のところ、弁護士を吐かせるのは失敗。裏で黒幕と繋がっていると思われる刑事課長も、首根っこ捕まえるどころか逆に罠に嵌められそうになって失敗。
逃走がてら寄ってみた第一犯行現場では、ワケの分からない気分の悪い出会いがあったわまた黒スーツに襲われるわと散々だった。
(……やっぱり先輩の……は軽率だったか……)
アレは恐らく、千尋が現場に戻る可能性で張り込まれていたと考えるべきだろう。
携帯電話の方がバレてそっちが辿られたか、とも思ったが、二晩も千尋が一箇所に留まるのを許した事を考えると、それはあるまい。
缶を掲げ、引っ繰り返して底を叩き、残ったコーンを口の中に落とすと、次は缶コーヒーの蓋を空けた。
飲み物だけではなくオニギリやパンといった固形物も食べたいが、コンビニは漏れなく監視カメラ完備である。その映像を警察が見つけ出すとは思わなかったが、気は乗らなかった。
(また出店は……まだ早い……。秋葉原にはオデンの自販機があったな、確か。……あ、でも場所知らねーや……)
それ以外にも探せばあるだろう。パンやお菓子、カップ麺やスナック、以前に見たテレビでは伊勢海老や金までもが自動販売機で売っていた。
意外に自動販売機だけで生きられそうな気さえする。
出来る事ならシャワーが使える自動販売機(?)みたいな物もないだろうか。監視カメラが無ければベストである。なにせもう5日も風呂に入っていないので。
(その割には臭いとかあんまり気にならないな……。鼻マヒってるのか?)
着たきりの黒いTシャツを摘まんで鼻に近付けて見るが、汗の臭いはしなかった。
黒地なので汚れも目立つまいが、他の人間から見てどうかは自身がない。服の自動販売機とかも存在するのだろうか。
衛生面はもちろんだが、いつまでも同じ服を着ているのは拙いのでは、と思えはじめた。
工事現場で拝借してきたジャケットを着ているが、シャツとズボンは逮捕された時から同じ服装だし、ヨレヨレになればそれだけでも目立つ。
目立たないのは大事だ。普段から目立つ事は好きではないが、何と言っても今は逃亡中だ。目立って良い事は一つも無い。
国外逃亡は無理でも、国内なら思いっきり遠くへ逃げるのも有りではないかと思った。
そこまで行く方法が問題だが、徹底的にヒトの居る場所を避ければ見つからずに行けるかも。北海道や沖縄まで行けば、買い物も多少はし易いだろう。
(……これからなら沖縄かな。……冬越えかぁ……)
屋上で過ごすにも寒いよりは温かい方が圧倒的に良いに決まっている。現金は多少ある。沖縄にも一度は行ってみたいと思っていた。観光じゃないのが残念。
自分の捜索が行われているであろうこの地域から一度離れ、心身を休めた上でリベンジに戻る。沖縄が住みやすくて、そのまま気が抜けたらどうしよう、などと皮算用な事を気にする千尋だったが。
そこにまた、携帯の着信が。
電源は確実に切った筈なのに。
「………ぅおお……ガチか……?」
『出た方がいいわよ。何度もかけ直すって事は大事な電話何でしょうし』
『声』はそう言うが、知った事か。
常々千尋は、電話に出ろと相手の都合も考えずに着メロを鳴らす、暴力にも似た携帯電話という文化が気に入らなかったのだ。言い方を変えると、怖いからイヤだ。
かと言って下手にどこかに残して行って、後から突然目の前に現れるとかホラー映画パターンもイヤ過ぎる。ホラー、というよりテラー。
「こ…………木っ端微塵にしても出てこれるもんなら出てみやがれー」
若干ビビった棒読み台詞を吐きながら、千尋は携帯電話をアスファルトに放り投げた。
鈍く光るワインレッドの折り畳み携帯は、まだ振動し続けている。
千尋は携帯電話へ踵を押しつけ、ジリッ……と体重をかけていく。
すると、
『わかった、わかったわよ正直に言うわ。私がリモートでその携帯の電波受信をオンにしたのよ』
降参したとでも言う様に、天の声が千尋を止めに入っってきた。
「……電波受信機能をオフにしたのに、それをどうやってリモートで動かすんだよ……」
『電源だって遠隔操作で入れる事が出来るのよ、最近の携帯電話は。それと、キミの携帯電話の番号は、今はその携帯電話に転送されるように設定してあるの。つまり、その着信は間違いなくキミ宛って事よ』
「……どういうこと? それってつまり、これはあんたがオレに電話してんの?」
『違うわ。電話してきているのは他の誰か。どうせ手詰まりなんでしょう? 何かしら道が開けるかもしれないわよ』
いまいち要領を得ないが、幽霊とか心霊現象の類ではないらしい。謎の声が既に怪奇現象と言えなくもないが。
そもそもどうしてそんな手の込んだ事をするのかが既に意味不明。
いや、意味が不明なのはここ数日間の状況全てにおいて共通しているが、この『声』に関しては何者なのか、人間なのか、それとも本当に超常の存在なのかさえ見当がつかない。
どうして携帯のリモート云々、といった技術的な事を問う気は初めから無かった。
相変わらず正体がまったく掴めず怪しい事この上ない謎の『声』だが、相手の言う通り手詰まりなのは事実。
ヘンな電話だったら改めて携帯を叩き壊そう。と思いながら、恐る恐る通信ボタンを押し、
「………はい」
『おーホントに繋がった! メールくれた? 俺自己紹介すらして無かったけどー!』
「え……誰!?」
出鼻からテンションの高い声に、やっぱり携帯電話を破壊したくなった。声に覚えも全く無い。
『昨日会ったろ? オレオレ、昨日会った記者だよ! あ、記者って事も言ってなかったっけ?』
それじゃぁ結局誰だか分からないだろう、とも思った千尋だが、一応思い出す事は思い出した。先日、刑事課長の拉致(?)に失敗して、その後に行った最初の犯行現場でとんでもない質問を飛ばして来てくれた、ひょろ長い背丈の男だ。
直後に黒スーツに襲われたので、その男がどうなったかは全く知らない。というか、今の今まで全く存在すら忘れていた。
それにしても記者とは。
日頃デリカシーも思いやりも配慮も無いマスコミの姿がテレビに映されては、「こんのマスゴミがッ!」と憤り、そして何故か千尋に対して八つ当たりしてくる幼馴染のせいで、良い印象は全く無い。
しかし、どうしてその『記者』とやらが電話をしてこられるのか。通話が今持っている携帯電話へ転送されているにしても、それなら千尋の元の携帯番号を知っていなければならない。
「……どうしてオレに電話を? てかどうしてオレの番号を……?」
『「記者」に何言ってんだかなぁ? 携帯電話の番号なんて、聞かなくても教えてくれるってヒトは結構たくさんいるもんだって』
「……ヒトの携帯番号って……普通見ず知らずの人間に教えたりしませんよね……?」
モラルも常識もあったもんじゃないが、こんな状態に陥ってみると、普段の生活では見えないモノが色々見えてくるものだ。元の生活に戻れても、人間不信確定である。
「あんたもオレが犯人だって言いたいんでしょ? いいですよ、信じたい事だけ信じている人はそれで……。言葉だけなんて何の意味もないって、警察で散々思い知らされました」
『おやま、初心な少年が現実を突きつけられて、随分世間擦れしたって所かな? じゃあどうする気? 自分は無実だって言い張ったまま逃げ続けるかい?』
「あんたの知ったこったねぇっス」
まるっきり他人事、なのは仕方ないが、それでも自分自身が危機に陥っているワケでもなく、気楽な世話話のような話しっぷりがジワジワとムカつく。
この相手との会話のどこに起死回生のチャンスを見出せばいいのかさっぱり分からなかったが、正直見出す気にもなれない。
というワケで、通話を切った。
「さーて……とりあえず本州最南端でも目指してみるか。歩きで」
『短絡的な行動ね。ちょっと気に入らない相手だからって、いきなり会話を打ち切るのはどうかしら? 人間関係を円滑に保つのに、大人になるのって大事よ?』
「……なんか……相手の気分を悪くしないようにとか考えるの、アホ臭くなってきて。どうせみんな自分の事しか考えてないし。『大人になれ』って、つまりテメェに都合の良い人間になれってことでしょ?」
『………』
少し前、というかほんの5日前までの千尋は、自分を通すより他人に合わせて不満も溜めこむタイプだった、と思う。
その結果が今の状況だとは言わないが、所詮この世に正義は無く、警察、弁護士、世間、記者、皆何かに付けて建前を付けて、自分の都合を押し通そうとするだけなのだから、千尋がそれに合わせてやる義理もないのだ。
たった5日で、そんな現実を十分過ぎるほど見せつけられたが、本当はもっと前から気付いていて、見ないフリをしていただけなのかもしれない。
携帯電話がまた着信を知らせる。早く出ろ、と相手の事も考えずに急かし立てる。本当に壊したくなってきた。
理屈はともかく、今の自分なら握り潰すくらいの事は出来る気がして、千尋はジワジワと携帯電話を持つ手に力を込める。
赤いプラスチックの外装が、ピキピキと弾けるような音を立てるが、
「………はい」
『切るなよー、別に喧嘩する為に電話したんじゃないんだからさ』
そこで我慢できたのは、謎の声の言葉にすがって一縷の望みを探りたくなったのか、千尋自身が何かを訴えたかったのか、その辺は当人にもよく分からなかった。
そして、一方的に通話を切られて怒りもせず、茶化すように言う自称記者の方が大人に思え、少し千尋は恥ずかしかった。
『それじゃもう一度やり直そうぜ、キミと俺。ヘンな意味じゃなくて』
「あの……オレもう自分が犯人じゃない、っていうのも辛くなってきてるんで、そういう方面の話ならしたくないんですけど」
『そう? じゃ違う事から話そう。昨日の連中、ありゃ何者よ?』
「そんなのオレが聞きてっス。なんか弁護士事務所にも連中現れて……いや、同じじゃないかも―――――」
『そう! そういう話!! その辺もうちょっと掘り下げて聞かせてくれない?』
話して聞かせる筋合いでも無かったが、気が付けば千尋の口は逮捕されてからの全ての出来事を語っていた。
いや訂正する。謎の声と、自分の身体に起きている異常の事だけは話さなかった。絶対に頭おかしいと思われる。
そうやって言葉を選び、一から振り返り、電話口に語って聞かせながら千尋本人は心から思った。オレ碌な目に遭ってねぇな、と。
『はー……、思った通りだ。ってか安直な3流記事だなーコイツは』
そんな千尋の人生最悪の5日間を三流とのたまう自称記者。やっぱり携帯電話握り潰しときゃぁよかった。
『問題は誰が筋書きを書いたか、って事だが。念の為に聞くが、お前さんを嵌めるような人間に心当たりは?』
「だからそんなのオレが聞きたい……って、じゃあオレが犯人じゃないってのは信じるんスか? 記者なのに……」
『記者だから真実を追いかけるのさー。それに、俺は記者クラブ発表を疑いもせず丸呑みにする素人共とは違うんでね』
「は……はぁ……」
その『素人』と卑下されたのが一流紙の記者である事は、千尋には理解の外だった。適当な相槌しか打てない。
それよりも今は、相手が得体の知れない自称記者であっても、はじめて自分の事を信じると言う人物の出現に軽い感動を覚えていた。げんきんなモノだという自覚はある。
「それじゃ……もしかして記事にしてくれます……とか?」
『もちろんそのつもりで電話したんだけど、今のところ他の証拠がなー……。昨日のヤツ――――あ、いや、その事も直接会って話を聞きたいな。どこかで会えない?』
当たり前の事だが、ここ48時間問答無用で殺されかけ続けて来た千尋に、ヒトを信じるという選択肢は皆無。会おうと言われも、7割8割で罠であるとしか考えられなかった。
それでも、これが文字通り一縷の希望であるのは、紛れもない事実なワケで。
「……わかりました。どこにします?」
携帯を閉じ、井戸の縁から腰を上げて「ぐッ!」っと腰を伸ばす。思いのほか長い休憩になってしまい、お天道様も天井に近かった。
自称記者とは上野動物園で会う事になった。そこそこ人目があって、また黒スーツに襲われる可能性も低いだろう、という理由でのチョイスだったが。
「……今の記者ってヒト、どこに住んでるなんてヒト?」
スチール缶を握り潰し、千尋は虚空に話しかける。
『名前ならさっき電話してた時に聞けばよかったんじゃなくて?』
「忘れてたんです……。あのヒトにメール送ったのってあんたでしょ? オレを助けてくれる為に?」
千尋の携帯番号を、逃げる時拾った携帯電話に転送したというのなら、記者と名乗る男にメールを送ったというのも謎の『声』の人物であるとは容易に想像できる。
「弁護時の事務所も刑事課長の名前も教えてくれたし。あんたがそういう方面に強いヒトだって事は分かったよ」
『フム……まぁ、不思議な事は何もないわね』
何故かつまらなさそうな淡白な口調で呟く謎の声。なのに、今までで一番生身の人間っぽい科白だった。
『でも、相手の事を知ってどうするつもり?』
その質問へ簡単に答えつつ千尋は、身体の調子を確かめるように、コーンスープとコーヒーの空き缶を纏めて小さく握り潰す。
グシャグシャに握り込まれたスチール素材は、千尋の握力に圧縮されてゴルフボール程度に丸まってしまった。