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私が痴漢にあった話

作者: 野井琅世
掲載日:2026/05/30

コメディーを書くのに疲れたので、エッセイに初投稿です。

私の若い頃の話です。



 私が痴漢にあった話をさせていただきます。

 これを読んで、痴漢の恐ろしさを少しでも知ってもらえればと思っています。



 それは、大分、昔の話です。

 昔の基準で言えば、すでに初老となっている私の若い頃。

 私は、ピチピチの17歳でした。

 今の人だと分からないかもしれませんが、当時は大型の古本屋は少なく、個人経営の古本屋が多数存在していました。

 そんな、古本屋で本を見繕っていた時の話です。


 何か良い本は無いかな?


 そんな事を考えながら、古本屋の漫画コーナーを物色していた時です。

 その店に、新たな来店がありました。

 見た事もないオジさんです。

 季節が夏だった事もあってか、汗だくでの来店でした。

 私は、気にも留めていなかったのですが、オジさんは、すぐに私の背後に陣取りました。

 私と身体を密着させる程の至近距離です。


 この棚を見たいのかな?


 呑気にも、そんな事を思った私は、場所を譲る事にしました。

 漫画コーナーにラノベコーナー。見たい場所は幾つもあります。

 別に、場所を譲るくらいは何でもありません。

 すぐに別の場所に移りました。

 でも、おかしいんです。

 オジさんが着いてくるんです。

 せっかく移動したのに、私の背後に陣取っています。

 そして、『ハァハァ』と荒い息を吐いています。

 オジさんが何をしたいのか分かりませんでした。

 でも、すぐに分かりました。

 分かってしまいました。



 あろう事か、オジさんは、私のお尻を撫で始めたのです。



 呑気な私も、そこで気が付きました。



 この人は痴漢だ!



 変態さんだ!



 気付きましたが、その古本屋は人気(ひとけ)がありません。

 お客さんは、私と変態さんだけです。

 レジに店員すらいないのはどういう事でしょう⁉


 気付いた瞬間に這いあがる嫌悪感。

 そして、身体を硬直させる様な恐怖。

 今でも忘れられません。

 悲鳴すら上げられませんでした。


 どうする事も出来ない私は、意を決して、走り出しました。

 見繕った本を手に掴み、レジに向かってダッシュです。

 店員を呼び出し、手早く会計を済ませて店を飛び出しました。(買ったラノベが、ナポレ〇ン文庫という官能小説だと後で気づいて凹みました)


 そして、店の前にとめておいた自転車に(またが)って、全力で()ぎ出しました。

 行く先は、近くにある、少し大きめの古本屋でした。

 そこなら、お客さんも店員さんもいるはずです。

 そこに向かって、全力でペダルを漕ぎました。

 恐怖に突き動かされ、ペダルを漕ぎ続けました。


 目的地の古本屋が見えた時、そこには、幾台もも自転車と車がありました。

 人が居るのです。

 その事に、心底安堵(あんど)しました。

 助かったと思いました。


 心を落ち着けて入店です。

 やはり、人が居ました。

 当たり前の事ですが、とても心強かったのを覚えています。


 不思議なもので、周りに人が居るだけで心は安定しました。

 あれ程に(おび)えていたのが嘘の様です。


 嫌な事は忘れて、本を物色しよう♪


 そんな事を考えながら、本を物色し始めた時です。

 絶望が現れました。

 化け物の入店です。

 そうです……


 あのオジさんでした。


 キョロキョロと、誰かを探す様に視線を彷徨(さまよ)わせながら、店に入って来たのです。

 おそらく、私が古本屋を回っているとあたりをつけて、この古本屋にも現れたのです。

 もしかすると、私の自転車を覚えていたのかもしれません。


 息を飲みました。

 悲鳴すら上げられません。

 私にできる事は、逃げる事だけです。

 オジさんに見つからない様に本棚に隠れながら店を出ました。

 幸いにも、見つかる事なく脱出に成功し、自転車に乗って、脱兎の如く逃亡です。

 今度は、本を買う余裕すらありませんでした。


 無事に帰宅できたので良かったですが、本当に怖かったです。

 しばらく、その辺りの古本屋に行けなくなりました。


 世の男性の大半は、この恐怖に共感できないでしょう。

 でも、本当に怖いんです。

 もし、身近に痴漢に怯える方が居れば、真剣に話を聞いてあげてください。

 できるなら、助けてあげてください。

 つき纏われでもしたら、泣きたいほどの恐怖なんです。

 だから、聞き流さないであげてください。

 私からのお願いです。




 ……そして、もう一つ、言わせてください。

 とても重要な事です。

 心してくださいね。

 行きますよ?


 ………………








 俺は男だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!








 何で、身長180㎝近い、坊主頭の男子高校生のケツを撫でる⁉

 しかも、俺は、見目麗しい方じゃないぞ!

 友人につけられた歴代のあだ名は……



 オークウォーリア


 クリーチャー


 宇宙外無機物



 ……だぞ!


 なんで、そんな男のケツを撫でる⁉

 意味が分からん!


 同性愛は良い!

 自由だと思う!

 しかし、俺は違う!


 勝手に俺のケツを撫でるな!

 勝手に他人様のケツを撫でたら犯罪なんだよ!

 そして、俺が見目麗しい方じゃないから、余計にガチっぽくて怖いんだよ!

 ふざけんなっ!


 痴漢撲滅!


 痴漢くたばれっ!


 痴漢撲滅!


 痴漢くたばれっ!



 二度と俺のケツを撫でるなぁぁぁぁっ!!!!








 後日、別の本屋で……


「ねえ! 触っても良い⁉ 触っても良い⁉」


 とか、言いながら、別のオッサンが追いかけてきて泣きそうになりました。

実話です。

私自身、信じたくないですが、実話です。

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