魔法が使える世界で
基本的にファンタジー。
主人公が最強だったりはしない。
ここは、とある魔法が使える世界。どこにでもあるファンタジーな世界。
この世界には魔力というものが存在し、空気の中を漂い、酸素と共に植物や生き物たちに吸収される。
そしてこの世界では、魔力を炎や風、水や光といった様々なものに変換して利用する事を魔法と呼ぶのだ。
さて、そんな世界のとある村、その村のある家に1人の少年が住んでいる。
少年の名はペルト。ペルトは毎日、村の近くの森で1日を過ごしている。
この日もまた森でゆったりとした時を過ごすのだ。
ペルトは森に入るとまず、一言挨拶をする。
「みんな、おはよう。今日も遊びに来たよ。」
すると、周りの草むらからウサギやシカなどたくさんの動物が出てくる。
普段からペルトは動物たちと話をしたり、日向ぼっこをしたり…様々なことをして時を過ごしているのだ。この日もいつものように楽しそうな表情で動物たちと過ごしている。
しかし、そんな時間も長くは続かなかった。
「おーい、ちょっといいか?」
突然、大柄で背中に大きな剣を背負った男が声を掛けてくる。
その声に驚き、動物たちが逃げ出してしまったのだ。
「あ…。おじさん、どちら様ですか?」
しかし、ペルトは気にしない素振りで男に話し掛ける。
「おじっ!?」
男はおじさんと言われ一瞬怯んだが、一度咳払いをしてから答える。
「お兄さんはダグラスって言うんだ。冒険家として依頼を受けてきたんだが…道に迷っちまったてな。」
男はお兄さんと、強調して答える。どうやら、おじさんと呼ばれ傷付いてしまった様だ。
「それは大変ですね。どこに向かっているんですか?おじさん。」
「うぐっ…。あー、ここらの森ん中にある洞窟にリザードマンがいるって聞いてな。その洞窟に向かってるんだ。」
「それとな…お兄さんはダグラスって言うんだ。」
男はお兄さんと、さらに強調する。
「洞窟ですか?うーん、リザードマンがいるかは分かりませんが…洞窟の場所には心当たりがあります。よかったらそこまで案内しましょうか?ダグラスおじさん。」
またもおじさんと呼ばれ怯んでしまうが、諦めたかの様にため息を吐き、
「はぁ…まぁいい。案内してくれるってんならありがたい。すぐ行こうぜ。」
ペルト問いにこう答え、案内を願う。
「分かりました。では、ついて来て下さい。」
そう言うと、ペルトは歩き出す。ダグラスも歩き出し、ペルトに着いて行く。
「そういや、さっきの動物は友達か?」
「え?あ、はい。その通りです。」
「そうか。邪魔しちまって悪かったな。」
「いえ、気にしないでください。それよりよも、どうして彼らが友達だと分かったんですか?」
「あんな楽しそうにしてたんだ。襲われてるようには見えねえよ。」
「それに、何年も冒険家やってると色んなやつに会うんだよ。動物が友達だって言うやつも居たしな。」
「僕以外にもそういう人が?」
「ああ、冒険家になると、そういう面白い奴らが山ほどいるんだ。自分から魔物を助けるような物好きもいるぐらいだしな。」
「そんな人もいるんですか?!」
「あ、あぁ。かの有名な英雄の話だよ。…知らないのか?」
「はい…初めて聞きました。」
「そうか。」
「…気になるなら話してやろうか?英雄の話。」
「気になります、詳しく教えてください。」
「分かった。話してやるから、ちゃんと聞けよ。」
「それは今と同じで魔物と人間との仲がすこぶる悪かった時の事だ。当時、全ての魔物を消し去るため、冒険家たちが魔王討伐チームを結成して魔王のいる魔界に攻め入ったんだ。」
「そのチームの中に、英雄が居たんですか?」
「御名答。そいつら、つまり、後に英雄と呼ばれる2人の冒険家は、人間と魔物との争いを止めるためにチームに入ったんだ。」
「英雄は1人のことじゃないんですね。」
「ああ。英雄って呼ばれてる奴は2人いる。」
「んで、討伐チームが魔界に攻め入り、魔物たちと向かい合っていざ勝負ってところで、英雄が討伐チームと魔物との間に入って、戦いを止めるよう両者を何とか説得した。そのお陰で人間と魔物との間で起ころうとしていた戦争は起こらず、人間にも魔物にも死者は愚か、怪我人すら出なかったって話だ。」
「やけにザックリしてるんですね?」
「まぁな。戦争を止めるために、結構前から色んな準備をしてたんだ。具体的に話すにはもっと前から話さなくちゃいけないからな。」
「具体的に話すなら他の細かい話の方がいいかもしれないな。」
「例えば…魔物の討伐依頼を片っ端から引き受けて魔物たちを逃したり、魔物と人間との争いを仲介したり、他には…まぁとにかく、そいつらは人間と魔物の共存を目指して色々やってたんだ。」
詳しく話そうとしたダグラスだが、面倒になったのか途中で話を止めてしまう。
「人と魔物の共存…そんなことを考えていた人が居たんですね。」
ダグラスの話を聞くと、ペルトは黙り込んで何かを考え込んでしまう。
そしてそのまま、目的地についてしまうのだった。
「っと着きましたね。リザードマンがいるという洞窟はここだと思います。」
「おう、ここがそうか。案内助かったよ。じゃあな。」
そう言うとダグラスは大剣を握り、洞窟に向かう。
「待ってください!」
「ん?どうした?」
「僕も!」
「いえ、僕も連れて行って下さい。魔法も使えますし、何か力になれると思うんです。」
「そうか!いいぞ。死なないよう、しっかりついてくるんだな。」
「はい。任せて下さい。」
「何も出てきませんね。」
洞窟の中に入ってしばらく進んだが、魔物がいるような気配はしない。
「あぁ、見張りとかもいなかったしな。だが…整備されて歩きやすい道、松明が掛けられた壁…何かが居るってのは間違いないな。」
そのまま真っ直ぐ進んでいると、広い空間に出る。そこには松明もなく、周りが見えない。
「っと噂をしたら、だな。」
する突然、暗闇から何かが姿を現す。
「ふっ、待っていたぞ。」
3mに及ぶ巨体、獣のように鋭い赤色の目、頭からは2本の角が生えていて、手には炎で模った槍を持つ。リザードマンだ。
「待ってただぁ?俺たちが来るのを分かってたのか?」
「い、いや…その、あー。」
「こほん、とにかく…貴様らはここで終わりだ。」
リザードマンがそう言うのと同時に、暗闇から1体また1体と何体ものリザードマンが現れる。
「すごい数…20人は居ますよ。」
「ふっ、余裕だな。」
ダグラスは大剣を抜き、リザードマンたちに向ける。
「待ってください!あの…本当に戦うんですか?」
「は?そりゃそうだろ。なんだ?俺のこと心配してくれてるのか?」
「いえ、そういう訳では。」
「きっぱりだなおい。じゃあなんでだ?戦わないと殺されるぞ。」
「それでも、戦う必要は…傷付ける必要はないと思うんです!」
2人の会話を聞いていたリザードマンが嘲笑話に割って入る。
「下らん。英雄にでも感化されたか。」
「違う。僕は誰にも傷付いて欲しくないだけです!」
「それこそ下らんわ。英雄でさえ人と魔物の共存すら実現できなかったというのに、誰にも傷付かないで欲しいだと?身の程知らずにも程がある!」
「同胞たちよ、まずはあの愚かな小僧から討つ!我に続け!」
1体のリザードマンが槍を構えると、その言葉に従い、他のリザードマンたちも槍を構える。
「おい来るぞ。ふざけたこと言ってる場合じゃねえ!」
そして、ペルトに向かって一斉に飛び掛かり、突き刺そうする。しかし──キィィィン──金属がぶつかり合ったかのような高く大きな音を立て、見えない何かによってペルトへの攻撃が弾かれる。
「なに!?」
「なんだ?!」
目の前で起きた事に、リザードマンたちもダグラスも驚きの声を上げる。
「下らなくない…ふざけてなんかない!」
「僕はただ、誰にも傷ついてほしくないだけなんだ!英雄が実現出来なかったとか身の程知らずとか関係ない!僕が!…誰も傷付かないでいい世界をつくってみせる!!」
ここは、とある魔法が使える世界。どこにでもあるファンタジーな世界。
この世界にはかつて2人の英雄がいた。
英雄は一度、人間と魔物の共存を実現させた。
しかし、彼らの死をキッカケに人間と魔物の仲は引き裂かれ、再び戦争が起きようとしている。
そんな中現れたのは、誰1人傷つくことを望まない1人の少年。
これは1人の少年が世界を跨がる英雄になるまでの話だ。
最後まで読んで下さった方も、とりあえず下までスクロールして下さった方も、この作品を手に取って頂きありがとうございます。




