表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
棋聖の孫、江戸に立つ ~盤上の記憶譚~  作者: 一進(にのまえすすむ)
第1章 江戸・修行編
5/64

第5話 タイムリープ?

「……小僧」


静かな声が、空間を支配した。


押さえつけられていた俺の体から、

武士たちの手が離れる。


声の主は、奥の段に座っていた男。


切れ長の目に、

穏やかだけど鋭い眼光。


それでいて、

どこか面白がっているような笑み。


煌びやかな着物に身を包んだその姿は、

明らかにただ者ではない。


この男が一言発しただけで、

空気が張り詰める。


「お前……この状況でも、

 盤から目を離さぬのか」


言われて、ようやく自分でも気づいた。


今にも刀で斬られそうなのに、

俺は――

盤面のことが気になって仕方なかった。


「この局面、次の一手が見えておるのか?」

「……はい」


気づけば、声が出ていた。


男の目が細くなる。


「ほう、面白い。申してみよ」


盤を見つめた瞬間、

ある一点が――光った。


「△5六角打です」


静寂。


対局者の一人。

厳しい顔つきの老人が、眉をひそめた。


もう一人。

穏やかな笑みを浮かべた男は――

まるですべてを見通しているかのように、

静かに口元を緩めた。


「宗歩」


奥の男が、

その微笑んだ男の対局者に声をかけた。


「その小僧が申した手、いかに見る?」


宗歩?そうほ?

その名前を聞いたとき、

俺の心臓がバクンと跳ねた。


今、なんて言った?


"そうほ"――


そういえば、

さっき武士が"御城将棋の舞台"って――


ってことは、この将棋は御城将棋?


将軍の御前で、

選ばれた最高峰の実力者が、

対局を見せるっていう――


ってことはやっぱり奥の人は将軍?

そしてこの人は――

天野宗歩?


将棋をしばらくしていなかった俺でも、

もちろん知っている。


江戸時代最強と謳われた、

伝説の棋士、天野宗歩。


あまりの強さに"棋聖"と呼ばれ、

祖父が持っていた称号である、

"棋聖"の由来となった人物だ。


宗歩は将軍の問いに、

何も言わず静かに頷いた。


その頷きは、

蓮の指し手を肯定することを意味していた。


「はっはっは!そうか!」


将軍が愉快そうに笑った。


「面白い。実に面白いぞ、小僧」


俺は、ようやく状況を理解し始めてた。


ここは撮影現場じゃない。

まさか――


俺、江戸時代にタイムリープしてる???

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ