第2話「久しぶりの帰り道」
〜翌日〜
〜渋谷川学園 廊下〜
〜放課後にて〜
「ふう。授業終わった。」
「誰かと一緒に帰ろうかな。あ、ヒカリちゃん誘おうっと。」
晴那はウッキウキでヒカリの所に行った。
「ヒカリちゃん。今日って一緒に帰れる?」
「あ、はーちゃん!ごめんね、アタシ今日、生徒会の仕事があるんだ。誘ってくれてありがとう!」
実はヒカリは"今の"クラスの人気者。一学期の初めに生徒会のメンバーを決めたり、学級委員長を決めたりする時間があったのだが、IーBの友達やクラスメイトが「星川さんは明るくてクラスを盛り上げてくれる」という理由でヒカリを学級委員長に指名した。ヒカリは断る筈も無く学級委員長になった。
生徒会長に関してもクラスからの指名、生徒会のメンバーからの指名、そして生徒会の先生からの指名で生徒会長になる事に決まった。ただし、ヒカリはあくまで「高一の生徒会長」であり、生徒会全体をまとめる「生徒会委員長」では無い。つまり、高二などにも「生徒会長」は居る。
「そっか。ヒカリちゃん人気者だもんね。またいつか誘うね。バイバイ!」
「うん!バイバイ!」
そんなクラスの人気者であるヒカリはこう呼ばれているのである──。
『"星光の川の流れを操る者"』
だがこの呼び名はあまりもかっこ悪いので他のクラスからの評判はイマイチである。次いでに言うと教師達からの評判も悪い。当の本人であるヒカリすらもこれには苦笑いを隠せなかったようだ。
「うーんヒカリちゃんも誘えなかったとなると…誰誘おうかな。」
「──あの、ごめん。其処の人、もし良かったらでいいんだけど私と一緒に帰らない?」
話は戻り、晴那視点。晴那は一緒に帰る人を見つける為にある女子生徒に声を掛けた。
「あ、日上さんだったけ?良いよ……って」
「もしかして晴那!?」
その女子生徒は何とあの月乃瑠奈だった。かつて同じバンド仲間でVo.だったあの瑠奈である。
「うん。久しぶり。」
「…本当に晴那なんだ。わぁ…嬉しい…」
「勿論、一緒に帰ろうよ!晴那!」
瑠奈は晴那と一緒に帰る事にした。
「ありがとう。瑠奈ちゃん。じゃあ昨日、ヒカリちゃんと一緒に行った美味しいカフェに行こうか。」
〜喫茶店『symfonyCafé』にて〜
「わああ…!此処が晴那が美味しいって言ったカフェ…!」
「此処綺麗だよね。結構人気なんだって。」
「だよね!いやーわたしもクラブ終わりに此処に行こうかなー」
瑠奈は高いテンションで話す。晴那は瑠奈が笑顔で嬉しいと感じた。
「良いと思うよ。…ふふ。」
「瑠奈ちゃん楽しそうだね。」
晴那はそう呟いた後、カフェオレとスイーツを食べ、喫茶店を出た。
〜店の外〜
「いやー美味しかった!晴那!ありがとう!」
「良いよ全然。私も此処、行きたかったし。」
二人が楽しく会話していると──
「ねえ、月乃さんだよね?ちょっとこっち来てくれない?」
誰かが瑠奈を呼んでいる。どうやら渋谷川学園の生徒らしいが…
「瑠奈ちゃん。クラスメイトの子じゃない?呼ばれているから行ったら?」
「……え、う、うん。分かった。行ってくるね。」
〜街の裏側〜
「…それでなんでわざわざわたしを呼んだの?」
「はぁ…何?その顔?」
瑠奈を呼んだ生徒は嫌そうな顔をする。だが、気を取り直して冷静な顔になった。
「まあ呼んだ理由を言わないと"貴方"は納得すらしないよね?」
「呼んだ理由──それは……」
「──渋谷の学校で貴方の悪い噂が広まっているから。」
「…!」
瑠奈は衝撃を受ける。噂が広まっているのは『Non-Four-Seasons』だけじゃなく自分自身もなのかと。
「渋谷川学園だけじゃない…渋谷川学園からそこそこ近い渋谷第四音楽高等学校、さらに渋谷区道玄坂中学校・高等学校にも…」
渋谷第四音楽高等学校は渋谷区にある音楽高等学校。実は第一、第二、第三はもう廃校になっている。
第四の偏差値はあまり高くなく、渋谷区道玄坂高等学校よりも低め。
「え!?どうして!?」
「…全部、"貴方"のせいだと思うけど。」
その言葉に瑠奈はカチンと来た。
「ねえどういう意味?ふざけないで。」
「他の人に言われると無視出来るけど貴方の言葉は無視出来ないよ…!……『季原節名』!」
季原節名。瑠奈をあまり良く思っていない生徒だ。女。同学年。瑠奈より冷静であり落ち着きがある。だがその言葉には瑠奈に対しては優しさは全く無い。
他のノンフォーのメンバーや他の人にはキツくないが。
「ふーん。貴方でも私の名前は覚えているの?」
「元バンドメンバーを放っておいて?」
「…っ!わたしはバンドメンバーの事なんか放っておいてなんかいない!」
「あーあ。貴方の感情の激しさは相変わらずね。」
「まあ幸い、バンド活動の全盛期にはバレていなかったらしいけど。」
節名は冷たく皮肉的に言った。瑠奈は何も言う言葉が思い付かなかった。
「本性…と言うか弱点がバレていたのは星川ヒカリさんと土山地花さんだけ。」
「まずそもそも日上晴那さんは弱点なんて殆ど無い筈。あったとしてもそこまで致命的では無いものだと思うわ。」
「そして星川ヒカリさんに関しても明る過ぎる事が弱点だとか言われているけど…どうやら星川さんは彼女の友達曰く、過去に辛い経験があったらしいわね。」
「そして一番嫌われていると言われている土山地花さんは冷た過ぎるのが弱点とか言われているけども…彼女がいるからこそ、あのバンドは成功したんじゃないの?」
「星川さんへの良いストッパーにもなっているしね。それに彼女も人嫌いでは無いだろうし。気を許した相手には良い態度で話しているらしいしね。」
「まあ、今は皆に土山さんのせいでバンドが炎上したとか言われているけどね。」
「本当はそうじゃないのに。」
節名は長々と話をする。逃げ場なんてものは存在しない。
「そして問題の貴方…月乃瑠奈さんだけど。」
「貴方に関しては致命的な性格の悪さね。どうしてそんなのでバンドをやっていたの?」
どうやら節名は瑠奈の事が大嫌いみたいだ。が、ノンフォーが人気無くなった時は誹謗中傷はしなかった。瑠奈に騒がれると面倒だからだ。
「貴方…!それが誰に向かって言っているのか分かっているの!?」
「あら?私は真実を言っただけ。別に誹謗中傷や偏見なんて言ってないわ。」
「月乃さんの本性は感情が不安定、納得出来なかったらすぐに意見を出すなどがあるけど…はっきり言ってどれも致命的よ。」
「特に最初に挙げた二つは絶対に消さなければならないレベルのものね。」
その差別的な言葉に瑠奈ははっきりと意見を述べた。
「ねえ。それは差別なんじゃない?」
「『人には色々な個性があるからそれを尊重しましょう』ってのが渋谷川学園の信念だよね?」
「貴方はそれを無視している。自分の学校の信念も知らずに人にだけグチグチ言ってこないで!」
「はぁ。うるさいとしか言い様が無いわ。」
「貴方の事は最初から良くないと思ってたけどまさか此処までとは。」
「まあ良いわ。…だけど五つ言っておくわ。」
「1.自分の都合でバンドメンバーの意見を無視して自分の意見ばかり通さないで。」
「2.自分の都合でバンドメンバーを傷付けたり迷惑をかけないで。」
「3.私みたいな奴がいる事がおかしいとは思わないで。」
「4.貴方は前のバンドで酷い事をしたのを一生忘れないで。」
「そして最後、五つ目。」
「────貴方は誰にも好かれていないし嫌われている事を一生覚えていて。」
「良い?…それじゃあまた明日。さようなら。」
そう言って節名は去ろうとする。すると、瑠奈が──
「いい加減にしてよ!」
「は?何?」
「大体貴方は酷い事ばかり!それが人を傷付けているって言うのが分からないの!?」
「何でも偉そうに言って!大してわたしやメンバーの事知らない癖に!」
「そして大した事もない論理を述べないでよ!特に五番目と三番目!あれは何!?」
「わたしを酷く言ってないと言う為に自分を美化しているだけ!これは事実なんかじゃない!」
「………もう良いわ。話を聞く価値は無い。今度こそさよなら。」
「…っ!」
瑠奈は歯を食いしばる。自分の事を言われて言い返せなかった後悔、だけど否定出来ない自分の性格、そして自分のせいでバンドメンバーは傷付いてしまった…
瑠奈はそんな葛藤を抱えた。
話が終わった後、瑠奈は晴那と一緒に帰る事になったのだが、そこでも何処か瑠奈は暗い表情をしていた。だが晴那はそれに気が付かなかった──。
こんにちは。小山シホです。さて、今回は新キャラが登場しましたね。彼女はある意味サブキャラとしての役割がある季原節名が登場しましたね。果たして彼女は物語をどう彩るのでしょうか…?
次回予告
昨日の事が頭から離れない瑠奈。晴那が帰りに誘っても一言だけ答えて去って行った。一人の帰り道、其処にはある音楽ユニットがライブをしていて──!?




