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厄災の姫と魔銃使い:リメイク  作者: 星華 彩二魔
第四部 一章 「その名は無色」
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「炎蛇の悩み」

 ニーズヘッグがクリアを見なくなって早一週間。

 火山の熱はいつも通り熱く、火蜥蜴は快適に過ごす毎日。時には火精霊(サラマンディー)たちの会話声も。

 これがニーズヘッグによる()()の日常。

 退屈と平穏の中、炎蛇はくすんだ空を見上げて呆けていた。


「………………暇」


 なにもすることがない悪魔は、この呟きを何度も繰り返すことのみ。

 しばらく前の異常があったせいか、いざ通常の日常に戻るも、退屈は余計な極みを増していた。

 数年はこの状況を耐えていられるほどの自信がニーズヘッグにはあるほど。

 その視界に、天から白い羽が舞う。


「久しぶりに見に来てみれば、ずいぶん愚かに呆けているな。ニーズヘッグ」


「……フレズベルグ、か」


 七の王に属する大鳥――【極彩巨鳥のフレズベルグ】。

 魔界の頃から、ニーズヘッグにとって幼なじみにあたる、唯一無二の親友だ。

 

「どうしたニーズヘッグ? いつもの迷惑なまでの愚かっぷりはどうした? 静かすぎると私としては不安であってドン引きなのだが?」


 普段から他者を「愚か者」と罵る毒舌大鳥。相も変わらず平常運行だが、しっかりと様子の違うニーズヘッグを気に掛けてくる。

 その心遣いに、ふと炎蛇は瞳を潤ませ……縋るようにフレズベルグの足にしがみつく。


「ああ~、フレちゃ~~ん」


「なっ、なんだ気持ち悪いっ!?」


「フレちゃん、もう俺を一人にしないでくれよぉ~。俺寂しくて死んじゃう~。蛇は寂しいと死んじまうんだよ~お~」


「なんで精神が幼児化してるんだ!? あと、何度も言うが「フレちゃん」言うなっ。女々しく聞こえるではないかっ」


「……だってフレちゃん昔っから可愛いだろ?」


「――潰すぞ?」


「ごめんて……」


 殺気漂う視線と低い声に、ニーズヘッグは冷や汗を流しながら身を遠ざけていく。

 姿を人の姿に模している大鳥。細身で女性と見間違えてもおかしくない見た目だが、フレズベルグの腕力は岩をも砕くほど。掴まれればその力で骨を容易く砕かれてしまうことをニーズヘッグはよく知っている。

 命惜しさにニーズヘッグは反省の誠意のつもりでその場に正座した。







「……それで? 何があったニーズヘッグ」


「何が……って、何が?」


「頼むからそれ以上アホになるな。……此処に来る前に火精霊(サラマンディー)たちを見かけたが、妙に落ち着きがない様子でな。お前の事を聞こうとすれば焦って逃げて行ってしまった」


「…………あ~」


 ニーズヘッグは、思わず目を逸らした。

 心当たりが当の本人にはある。

 クリアとの一件を火精霊(サラマンディー)たちには知られている。余計な話を振りまかぬよう、ニーズヘッグは精霊たちにクギを刺していた。そのため精霊はニーズヘッグのことを聞かれた途端、余計な事を口にしないよう、フレズベルグから逃げたのだ。

 

「やけに間を開けるではないか。そういう時は言いたくない事がある時だ。言い訳の嘘などできぬ奴だからな。私にも話せぬ事か?」

 

 苦虫を噛みしめる様な顔で沈黙する炎蛇。図星であり反論などできない。ニーズヘッグは嘘を嫌っている。特に、自身が偽ることに。

 自ら嘘をつくことは自身を裏切るようであるからだ。

 軽い冗談や重い契約とは違う、日常での虚言も嘘を許さない。

 

 ――やっべぇ。タイミングわりぃなフレちゃん……。どうしたもんか。


 まさか人間に何度も恥をかかされたなど、親友であるフレズベルグに言えるわけもなく。かといって嘘をつくわけにもいかない。

 親友にすら打ち明けられず、申し訳なさにニーズヘッグは泣いてしまいそうだ。


「い、言いたくないのなら無理に言わなくてもいい。……とりあえずそのみっともない顔をなんとかしろ。ガキではあるまいし」


「~っ、悪い、フレズベルグぅ……」


「お前がそこまでになるのだ。言いたいことがあれば来た時に相談にのってやる事くらいはしてやる」


「ああ、マジで最高かよ俺の友人A。なんだったらしばらく一緒にいてくれよ、もう当分でもいいっ」


「……いや。それは無理だろう」


 急に冷めた対応。その一撃でニーズヘッグの涙腺から涙が一瞬で消え去った。


「ええ!? なんで!!?」


「一つ。此処は私にとって暑苦しい。そして、此処はお前の縄張りだ。私も自分の場所を持っている。自分の居場所を得たからには、その責任もあるのでな。あまり長居はするつもりはない」


「ええ~~~っ」


「良い例をあげるなら、東にいる【水霊鬼(すいれいき)のルサルカ】だな。彼女はただ人間界に身を置いているだけではなく、人間界の水の精霊路の管理も何割か任されている。それも九の王直々にな」


「俺らべつにそういうのねーだろ?」


「だが、少なからず我らのような大悪魔は周囲に影響を与えている。そういう自覚は持ったほうがいいぞ?」


「めんどいーっ。自由を得られるのは力ある者の特権だろう?」


「お前も少しは大人になれよ愚か者……。図体ばかりで中身はいつまでたってもガキなのだからな」


「…………なんて言うが。そういうフレズベルグは俺がいなくて泣いたりしてないだろうな?」


「――帰る」


「――待って、友人A!!」


 あからさまに、翼を広げ空へ飛び立とうとするフレズベルグの足にしがみつくニーズヘッグ。

 抵抗されようとも必死と引き戻そうとする。


「帰んないでフレちゃん!! お前、俺を泣かすことでも生き甲斐にしてんのか!? 俺が繊細すぎるの知ってるだろ!?」


「初耳だな! あと、そんな生き甲斐こっちから願い下げだ!」


「何急に怒ってんだよ!?」


「自分の発言を振り返ってみろ! 放せ!」


「絶対ヤダー!!」


 火山では噴火する音に紛れ、二体の悪魔による一悶着が繰り広げられる。暴れる鳥を絡める蛇の如く。その騒動はどちらかが根を上げるまで続けられた。

 そして、今回の敗者はフレズベルグとなる。


「はぁ……、はぁ……っ。この執念深い蛇の愚か者がっ。そこまで一人が嫌なら魔界に帰れ!」


 息を切らせながらもフレズベルグは力の限り怒鳴りつけた。

 未だにニーズヘッグは大鳥の足にしがみついたまま。二人は地に這いつくばる。


「ヤダヤダ! 魔界もうつまんねー! じゃあ長くいなくてもいいから、俺が落ち着くまで一緒にいてくれよ友人Aっ。お前だけが頼りなんだよぉ!」


「は、はあ!?」


 突如、憤怒していたフレズベルグは顔を真っ赤にして動揺。

 更にニーズヘッグは言葉で攻める。


「だって俺の親友はお前だけだろ? 俺、お前に嫌われたら……」


「ああ、わかったから!! し……、仕方のない愚か者め……」


 フレズベルグにとって親友と呼べる者はニーズヘッグの他になく。ニーズヘッグとの友情仲に弱くある大鳥。そしてその弱さを攻めるのは強く友情を無意識に語る炎蛇。

 こんな展開など数えることを忘れるほど。フレズベルグもニーズヘッグの友情押しは、毎度のことズルいとすら思えてしまう。

 しかし、否定できないのもまた事実。






「……しかし。いるのはよいのだが、どうすればよいのだ?」


「とりあえず待ってくれ。今考えてる……」


 今ニーズヘッグが悩んでいるのは一人の人間の事だ。だが、それを公には晒せない。

 どうこの悩みの真実を知られずに話したものか。

 難題に頭を悩ませて空を見上げた時。火山から離れた先。澄んだ青空に、ふと目が見開いた。

 透き通る様な色合いが、一人の人間を連想させる。


「……なあ、フレズベルグ」


「なんだ?」


「ちょっと変な質問なんだが……。――()()()()な奴をどう思う?」


 悩みに関する事なのか、唐突な質問にフレズベルグは首を傾ける。

 どう答えてよいのか。顔をしかめて最初にでた言葉は「意味がわからない」というもの。


「それは、どういう意味なのだ? まさか、本当にしばらく会わない内に私の手の届かない様な哀れで愚かな頭にでも……」


「真面目に聞いて。号泣すっぞ?」


 こればかりは譲れないと、不満そうにする炎蛇。

 フレズベルグも毒舌はしばし傍らに置き、せっかく友人が悩みを語り出しているため付き合うことに。


「無色透明……か。それは見る者によって違うのではないか?」


「ん~。フレズベルグはどうよ?」


「そうだな。表裏がない……というものか? 色がなくて透けているのだろう? もしくは実在しない幻影やもしれんしな。……ニーズヘッグはどうなのだ?」


「……俺は」


 どう見えた。

 クリアという人間は、ニーズヘッグが見た感想と言えば、理解不能な人間である。

 悪魔である自身が何をしても思い通りにならない。予想を覆してくる。

 つかみ所もない。本当に透けてしまう様な…………


「……変な、奴? 珍獣か? とりあえずわけわからん」


「珍獣とは……。また妙な生き物もいたものだな。……で。その珍獣を気にして悩んでいるのか?」


「……は?」


 思わず、ニーズヘッグは呟くように驚く。

 

「違うのか? どうもお前はその珍獣を気にしている様に思えたのだが」


 ニーズヘッグは考える。

 自分があの人間を気にしているという状況を。

 気にしている。気になってしまっている。急に訪れなくなった……クリアの事を。

 想像した途端、ニーズヘッグは強くその事を否定した。


「はぁ!? ちっげーし!」


「ふむ……。違うのか」


「ありえねぇよ! 誰があんなのっ」


「…………確かに、お前は嘘が嫌いではあるのだがなぁ」


 フレズベルグは察してしまった。

 ニーズヘッグは自身がその対象を気に掛けている事に気付いていない。そのため先ほどの否定も嘘とは言えない。

 相手はそれだけ自身と差がある、または相容れない者なのだろう。

 

「まあ、余計な者には関わらぬ事だ。魔界が嫌なら、たまには私の様に外出するのもよいのではないか? 気分転換にもなるぞ?」


「……外出って」


「この火山を縄張りにしてからどれだけ経つ? どうせ一度も出てないのだろう?」


「…………た、確かに、そうだが」


「麓から森が広がっている。その先には人里があるから立ち入るなよ?」


 


 

『やくまが 次回予告』


ニーズヘッグ

「……なんだこの会。俺の胃が痛くなる会だったわ」


クリア

「あ。ニーズヘッグ君元気? 私も元気だよ」


ニーズヘッグ

「相手に聞いといて元気前提で話しかけてくるなっ。空気を読んで、マジで」


クリア

「もうニーズヘッグ君。空気は読むんじゃなくて吸うんだよ?」


ニーズヘッグ

「――天然!!」


クリア

「そんな事よりニーズヘッグ君。今日こそその綺麗な羽衣に触らせてもらうよ~」


ニーズヘッグ

「マジでそれやめて! 俺の可愛い相棒に何する気だよ!? どうせ酷いことする気だろ!? エ〇同人みたいに!!」


クリア

「エ〇同人ってなに?」


ニーズヘッグ

「なんでもねーよ! 気にするな!」


クリア

「はーい。わかりました~」


ニーズヘッグ

「って、自分で言ってなんだが素直に引き下がるのかよ!? ホントに行動読めねーな!?」


クリア

「ちょっと空気を読んでみました」


ニーズヘッグ

「次回、【厄災の姫と魔銃使い】第四部 二章「潜む蛇」。空気ならもっと前から読んでください、ホント!」


クリア

「じゃあニーズヘッグ君。さっきのエ〇同人って何かな?」


ニーズヘッグ

「結局気にするんかーい!!?」




*本日にてなろう側のストーリーがノベプラに追いつきました。

 来年からは毎週水曜投稿、月各章で同時進行させていただきます。

 皆様。よいお年を。

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