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厄災の姫と魔銃使い:リメイク  作者: 星華 彩二魔
第三部 六章 「待ち続ける者」
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「下の更に……」

 状況を把握すべく、クロトとイロハは上の階の通路からエントランスホールをこっそり見下ろす。

 つい先ほど、一度見つかったのだが……。


「……いないね。どっかいったのかな?」


 何も知らないと、イロハは目を丸くする。

 説明などする必要があるかどうか。イロハの頭で理解できるよう伝えるなど、考えるだけで時間の無駄なため放っておくことに。それよりも周囲の様子の方が気掛かりでしかない。

 フレズベルグに恐れをなしたとはいえ、すんなりと姿を消してしまったゴーストの群れ。それらはいったい、何処へいったというのか。

 そういえば。と、クロトはふと思い出す。

 イロハと交代する前に、フレズベルグが言った言葉を。


 ――結界の核は下層にあるようだ。


「一階……、もしくは地下でもある……ってことか」


「どういうこと?」


「お前はとりあえず、俺の言うこと聞いてればいいんだよ」


「うーん……、うんっ。わかった」


 パッと頷いて返答。階段をゆっくり降り、辺りを見渡す。

 移動した家具は、破損はするも元の場所に戻されている。ゴーストたちがやったのか……。

 そうこう眺めていれば、角で白いモノが動く。

 気付くと同時にそれはこちらを振り向き、驚いたように目を見開く。

 またあの小さなゴーストだ。

 再度モノを動かすかと思えば、それは寄ってきた仲間と一緒になって震えている。

 どれも視線をイロハに寄せていた。

 ひょっとすれば、まだフレズベルグの怒気に怖じ気づいているだろうか。

 しばらく様子をうかがうも、イロハは何のことやらと首を傾けるのみ。

 明らかな違いに、ゴーストたちの震えは治まり、しんと静まる。


「……」


「……?」


 更に数秒後。ゴースト数体は議論でもするかの様に顔を見合わせ、次の瞬間、バッと動き出す。

 再度近くにあった家具を動かし、奮闘するかの如く襲いかかる。

 あまりにも行動を気にしすぎたせいか、遅れて二人は魔銃を取り出す。


「わわ!? やっぱり襲ってくるの!?」


「だーっ、うるさい! とりあえず、核を探すぞ!」







 銃を取り出すも銃弾が効くわけがなく。クロトは運任せに一階を手当たり次第探す。

 通った道など家具が散乱し、戻る際などそれを乗り越えるなど……。

 エントランスを中心に慌ただしい中探索。

 しかし、結界の核どころか地下らしきものなど見当たらず、最終的には中心に戻る始末。


「おい! どういうことだよ!? 何処にもねーだろうが!!!」


「わ~ん、なんで先輩ボクに怒るのぉ!?」


 言ったのはフレズベルグだ。

 だが依り代となったのがイロハであるため、問いただすように胸倉を掴み揺さぶる。鵜呑みにしてしまった事と見つからない苛立ちは、すべてイロハにへと向けられた。

 訳もわからず怒られたことに、イロハはもう涙目だ。


「さっきから霊どももうぜぇし、なんとかしろ!!!」


「ボクに言われてもぉ……」


「聞こえてんだろ!? もう一回出てこいクソ鳥が!!」


「……っ」


 強く揺さぶられイロハはギュッと目を瞑る。

 怒鳴られ驚いた刹那。瞬時に空気がガラリと変わってしまうのをクロトと、周囲で暴れるゴーストは感じ取った。

 心臓が凍てつく思いと衝撃が襲うのは、ほぼ同時。

 反撃の如く。イロハはクロトの腕を掴み取り、一瞬にして背負い投げた。

 イロハは前屈みになった体勢を起こし、肺いっぱいに空気を取り込んだ後。周囲を黙らせる怒声を放つ。



「――お前の方がウザいわ、クソガキがぁああぁああ!!!!!」



 ……あ。これはフレズベルグだ。

 クロトはまたしても投げ飛ばされ、床で仰向けになってそんな様子に、両目をパチパチとさせる。

 全霊体はその重圧ある気迫に動きを停止させ、治まれば逃げるように飛び去ってしまう。

 大声を出したフレズベルグはクロトを鋭く睨む。


「さっきから聞いていれば……、この私が虚言を吐いただのどうのこうの言いおって」


「……ねーから言ってんだよ。言ったからには責任持って場所を教えろっ」


 臆することなくあるクロトは傍から見れば命知らずである。

 おそらく実際に潰されたとしても、彼の悪態が治ることはないだろう。

 責任を押しつけられたフレズベルグは眉をひそめ、ため息の後に動き出す。

 進む先はエントランスから二回にへと続く大きな階段。その陰では家具の棚を押し込むゴーストが数体いた。

 

「……っ。……っ!」


 どうも近寄られる事を恐れているようだ。焦る形相を静かに眺めたフレズベルグは、穏やかに声をかける。


「そう怯えるな。我々はこの館の周辺に閉じ込められている。結界の解除を早急にすれば何もしない」


「……っっ」


 首を振るゴースト。

 そう簡単には要求をのまない。


「約束する。……約束を破ることだけはしたくないのでな」


 堅く誓う。

 その意思が届いたのか、ゴーストは思い悩み、押し込んだ家具をすり抜け消えてしまった。

 了承を得たのか、まだ保留なのか。

 フレズベルグは棚をどかし先を見る。つられてクロトも覗き込むが、そこにはなにもない。

 またガセかと思い文句の一つを飛ばそうかと思えた。が、それを阻んだのは些細なモノだ。

 視界では床に散らばった花びらが、ゆらゆらと揺れる。

 見覚えのあるそれは元々階段に飾られていた花であり、最初に飛ばされた物。静まった室内。窓も開いていないにも関わらず、花びらは何かに煽られている。


「……真下に何かあるな」


「だから最初っから言っておろうが。愚か者」


 わずかなくぼみから床板を持ち上げれば、そこには地下にへと続く階段が存在した。

 これがフレズベルグの言っていた核にへと続く道。

 

「責任は果たした。私はもう帰るぞ?」


「まだこの先にあるかどうか確認してねぇだろうがっ。見つかるまで出てろっ」


「……悪魔使いの荒い愚か者め。こんな人間は初めてだ」


 もしものことに備え、フレズベルグは冷気漂う地下にへと付き添う。

 

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