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厄災の姫と魔銃使い:リメイク  作者: 星華 彩二魔
第二部 三章「王都攻防戦」
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「一番槍」

 小型の通信機を何度も突く。不調か妨害か……。ネアとの通信が唐突に途切れたことにクロトは舌打ちし、それ以上機器を頼ることをやめた。


「くそッ。こんな時に……っ」


「怒んないでよ先輩。怖いから」


 走るクロトの斜め後ろでイロハは翼を広げ追う。

 頭上から黒い影が覆い被さればイロハは上を見上げる。上空には数匹のドラゴンフライが浮遊し、こちらを見つければ突っ込んで襲いかかる。


「やばいよ先輩! こっちにきた!!」


 魔銃を取り出し魔銃フレズベルグの銃口から複数の銃弾を放つ。大きな魔物には当たりやすくあるが、直撃しても硬い殻を纏うドラゴンフライはほんの少し怯むのみ。そのまま地に落ち転がるもすぐさま体を起こし周囲の建物を巻き込みながら追いかけてくる。

 

「わわっ、あんまり効いてないっぽい! こうなったら……っ」


「おいッ! 妙な大技は使うなよ!?」


「ええ!? だって普通のじゃあんまり効かないんだもんっ。それにまとめてやっつけた方がいいじゃん!」


 イロハの魔銃フレズベルグは一度で複数放てる便利な代物だ。しかし、通常弾の威力は一般の銃の少し上と言ったところ。その魔銃の最大の強みは悪魔フレズベルグの力を使ったものである。

 確かに、例の竜巻や降り注ぐ閃光などの技ならこれらを一掃できることだろう。

 だが……


「いい加減に考えろ! この国を完全に敵にまわす気かッ!?」


 クロトとイロハの通り過ぎた場所では度々兵士を目撃している。「止まれ」と何度も言われた気はするが引留めることすら振り切ってきた。魔物だけならともかく兵を巻き込んで殺めることは乱闘にへと勃発していく。ただでさえイロハのその見た目は魔族とも思われ最悪魔王軍側に考えられる。

 大通りでは見晴らしのよい獲物なためクロトは90度の角度で曲がり横道にへと入る。遅れてイロハも飛び込み、続いてドラゴンフライの長い首が突っ込むも胴体が大きいためつっかえた。

挿絵(By みてみん)

 目の前の獲物にしか頭が回っていないのだろう。低脳な魔物にクロトは魔銃ニーズヘッグを向け、トリガーを引く。

 クロトの魔銃は単発式ながらも威力に特化したもの。放たれた銃弾は魔物の顎の鎧を砕き脳天を貫通させた。

 汚い紫の液体を巻き散らし悲鳴をあげてから沈黙する。どんな硬い魔物でも頼りの鎧を砕かれ脳を撃ち抜けば終わる。クロトの魔銃はじゅうぶんこの魔物でも効果を発揮している。

 

「……っ、行くぞ!」


「ああ……うん!」


 だが、自分たちと同じ考えをしていたのは他にもいる。

 裏道を進めば白い鎧を纏う兵が何人もいた。おおかた上空の魔物を避けるためにこのルートを利用していたのだろう。

 

「貴様ら、何者だ!!」


 銃を片手にいる二人はいるはずのない部外者である。真っ先に敵意を向けられ道を塞ぐ。

 今更道を変えて遠回りをしている暇などない。

 クロトはそのまま兵士にへと突っ込み魔銃を握る。


「――どけぇッ!!」


 魔銃の引き金からは指を完全に離し腕を払って兵士たちを殴り付けた。

 鈍器にも勝る強固な作りである魔銃はそれだけで威力を発揮する。主に首から上を狙い一撃で意識を奪い倒した。

 

「…………なんで先輩、殺さないの?」


 違和感にイロハは小言で一人呟く。

 障害という邪魔なら殺すのが鉄則なクロト。それにも関わらず倒れる兵士はどれもが生きている。

 なにもできず、ただついていくだけのイロハはそれ以上考えずにクロトの背を追った。

 容赦のなさは健在であり何人も突破して行けば兵の数は少なくなり進みやすくもなる。

 落ち着きだして頃合い。一直線に進む先でその横道から白い影がすっと前に出てきた。また兵士が目の前に現れたと思い、こちらに気付く前にと魔銃を振るう。

 しかし、その魔銃がぶつかったのは全く別のものだった。

 腕に響く反動。魔銃は白のランスで受け止められている。その動きを読んで防いだ兵士にへと目を向けた時、クロトの身はドンッと吹っ飛ぶ。

 

「ぐぅッ!」


「先輩!? ……大丈夫?」


 激しく背を地にぶつけられある力を振り絞り痛む体を起こす。

 自分を押し返したのは誰かと睨み付ける。先ほどの場所にはたった一人の鎧を纏う男が立っていた。

 二十歳過ぎほどのまだ若い男性。右手には長くて大きなシャフトをしたスピアーランス。左には手首から魔道技術を使った半透明のシールド。どちらも身の丈近くある。

 同じ白を基調とした鎧だがよく見れば他の兵士とはデザインが全く異なっていた。

 まるで騎士だ。

 クロトの睨みに応え、男もまたクロトを鋭い目を向ける。


「……子供? だが、ただの子供ではないな。…………魔の者の手下か?」


 次に男は目をイロハにへと向ける。翼が目に入りどうしてもその考えが出てしまう。


「全然違うしっ。ボク人間だもん!」


「…………だが、そこの我が兵を倒したのはお前らだな? こんな時にうろついているとは妖しい以外にどう答えろと?」


「うぅ……、そんなこと言われてもぉ……」


「黙ってろお前は……っ。よくも吹っ飛ばしてくれたなぁ。今すぐ、そこをどけっ」


 起きあがれば銃口を向けて道を譲らせようとする。

 しかし、銃口を向けられてなお男は避けるどころか道の真ん中にへと立ち塞いだ。

 槍が地に突き立てられるとそこを中心に風が巻き起こり威嚇するようにクロトとイロハを煽る。


「此処を通して、どこへ向かうつもりだ? 此処から先にあるのは第三街と外壁。障壁が破壊された外には魔物が攻め入っている。……それとも、他になにかいるとでも言うのか?」


「……っ。答える義務はねぇよっ。…………イロハ、お前は飛んでアイツらの所に行けっ」


「……でもぉ」


「早く行けッ!!」


「わ、わかったから怒んないでよぉ!」


 イロハは翼を広げ高度を上げ先にへと進む。 

 騎士の超えようとするも、


「逃しは――」


 狭い通路を覆う壁。それらを蹴りイロハの高さまで追いつくと槍は翼を捉え、


「ええっ!?」


「――しないっ」


 一気に貫いて地にへと突き落とす。

 イロハの背が激しく地にぶつけられ弾む。更に追打ちをかけ打ち上げられた身を蹴り飛ばし壁にへと打ち付けた。


「わっ! ……うぅ、この人嫌いぃ!」


「……まだ意識があるのか。……いや、痛みすらないのか?」


 頭をふらふらと。すぐに身を起こすイロハは再び飛び立とうとするも、今度は槍が右肩を壁ごと貫いた。

 イロハの身は確かに血肉を貫き鮮血を流すも表情を変えない。


「もぉーっ、どいてよっ!」


「本当に痛みがないのか……っ?」


 信じがたい光景に騎士の男は動揺してしまう。

 男がイロハに気を取られているその隙にクロトは駆け出しこの場から一人抜け出そうとした。

 最初っからイロハを囮にするつもりではなかったのだが好機と思い一気に突破しようとするも、それすら阻まれることとなる。

 騎士の後ろを通り過ぎようとした直後、盾が進路を絶ってクロトを捕らえた。


「――ッ!? くっっそぉッ!」


 盾を振り払い、再びクロトは元いた場所まで飛ばされる。続いてイロハも同様に払われ先に倒れていたクロトにへとぶつけられる。

 不快とクロトはイロハを乱暴にどかし始めた。


「~~ッ、どけろお前ッ!」


「わぁあん、ごめーん……っ」


 ――ズドンッ!

 騎士は槍を地に突きつけ道の中央を陣取る。


「子供とて容赦はしない。一つの間違いが大惨事を引き起こすのだからな」


『――ッ、ロウグス様、第三街南に不審な子供がいると』


「こちらでも二人確認、今相手をしている。外装は……?」


 体勢を立て直しつつある二人を他所に騎士は耳元に手を当て一人会話をする。

 耳には点々と光る結晶が埋め込まれた耳飾りが取り付けられている。こちらとはデザインが異なるが向こうも通信手段を持ちその最中だ。


『こちらで確認したのは黒い女性とローブで素顔は見えませんでしたが小さな子供を抱えていたと』


「……こちらとは別か。すぐに取り押さえろ。場合によっては討て」


『わ、わかりましたっ』


 会話が終わったのか男は耳から手を離しこちらにへと向き直る。

 

「現在、兵がお前たちとは別の二人組を見つけたそうだ」


「……マジかよ」


「どうしよう先輩」


「その様子、やはり関係者か……。ならば此処を通すわけにはいかんな。――我が名はロウグス・ランスロット。ヴァイスレット、盾の国一番槍を務める陛下に忠誠を誓いし騎士。陛下のため、そして国のためにもお前たちを捕縛させてもらう」


 ――ロウグス・ランスロット。そう名乗った男はこの国では知らぬ者はいない名のある騎士の頂点にある存在だ。

 王都に設置された魔道障壁と同じ強度を誇る盾を与えられた王を守りし騎士。一番槍の異名は先ほどの通りであり侮れない。


「ど、どうする先輩?」


「……邪魔なら――殺してでも通る!」


 ついにクロトもその気になり魔銃は一瞬銃口から火を吹く。

 対するロウグスは姿勢を崩さず。不自然なことに彼の周囲は風向きに逆らう風が吹いていた。

 魔道障壁と同等の盾。そして、風は右手にあるランスから風が吹いているようだった。


「…………魔武器か?」


 クロトたちの魔銃と同じロウグスの持つ槍も魔武器――魔槍なのやもしれない。

 魔武器を作れるのは魔女だけではなく、こういった者が所持していてもなんの不思議でもなくある。

 しかし、ロウグスは顔をしかめ嫌悪する。


「確かに、言いようによってはコレも魔武器になるだろうが、……その呼び名は好まんな。――【風精霊(エアリエル)】」


 呼び声に応え舞う風を集め姿を現す。翡翠玉の様な瞳と透明な翼を持つ。ロウグスの肩には小さな人の形――【風精霊(エアリエル)】が顕現した。

 

「おはようロウグス。……おやおや。アレが今日のお相手? まだ子供じゃなぁい?」

 

 肩の上でちょこんと座り込み、クロトとイロハを見ては頬杖付いて意地の悪い顔をする。


「先輩、なにあのちっさいの……?」


「風の……精霊使いか」


「……せいれい?」


「その通り。精霊とは自然の化身、魔の者とはまた異なる存在だ。これぐらいの精霊の声なら精霊使いでなくても聞くことはできるしな。……さきほどの訂正だが、せめて『精霊武具』とでも称してもらおうか」


「どっちも大差ねぇだろうがっ。その虫みてぇな精霊ごと燃やしてでも通らせてもらうぞ!」


「……せいれいって虫の仲間なの?」


「むっ、虫ぃいっ!? ちょっとロウグス! あの子供可愛くないっ、すっごく失礼っ」


 虫という呼び方に【風精霊(エアリエル)】はぷんぷんと怒ってロウグスの狐色の髪を引く。


「……【風精霊(エアリエル)】。今は国の一大事だ、真面目にしてくれないか?」


「そんなの風の噂ですぐわかるわっ。……へぇ~、魔王かぁ。これはとっても嫌なのがきたものねぇ。…………そして、厄災の子。今兵士たちが躍起になって追いかけてるみたいね」

 

 精霊は耳を澄まし左右に揺れながら風の声を聞く。

 さすがは自然の化身と呼ばれるだけはある。此処にいるだけで【風精霊(エアリエル)】は周辺の様子を音で感じ取っている。


「あっ。今兵士が囲んで、……って、なに!? 一緒にいるの……、しかもすっごい強い。兵士がばったばった倒されてるわぁっ」


 言葉からしてネアがついに兵士にまで手を出す事態にへとなっているようだ。

 こちらもいつまでも留まっているわけにはいかない。


「本当に生きていたとはな。…………エリシア様」


 少々思い詰めるようにするロウグス。視線をずらしている間際、淡とした銃声に即座と向き直り放たれた銃弾を盾で防ぐ。

 一瞬の隙を突いたのだが当たり幅の大きな盾にはすぐに防がれてしまう。


「エリシア様を……、【厄災の姫】をヴァイスレットに連れてきたのはお前たちか?」


「だったらなんだって言うんだよっ。テメェらにこっちの事情なんて関係ないだろうがっ」


「……っ。此処までの時事態を招いておいてその台詞か。一人と数千。天秤など計るまでもない。魔王にも渡す気はない。……姫には、――此処で死んでもらう」

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