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厄災の姫と魔銃使い:リメイク  作者: 星華 彩二魔
第六部 一章「闇の声」
156/280

★序章★

 目覚めた魔銃使い。

 再会した彼らは魔界から出るため魔界門を目指す。

 ネアの案内もあり安泰と思えたその道中、何者かの囁くような声と霧が道を阻む。

 誰もが感じた。その身が覚えている嫌悪を。


 そして彼らは目にする。――最悪の光景を。


 少女が見たのは、炎々と燃える城内。その中を駆ける、二人の人物に目を向ける。


「――お母……様?」


 赤い光景の中には、写真でしか見た事のない母親と自分。

 少女は知る。自分が失くしてしまった記憶を。

 その日、その時、あの場所で。あの魔銃使いと会った事を。


 誰しも消してしまいたい記憶がある。

 それはおぞましく、忌み嫌い、思い出す事すら拒みたくなる闇。


 闇と共に沈めば、二度と帰っては来られない……。


【厄災の姫と魔銃使い】第六部 魔界編:後編 開幕

挿絵(By みてみん)

 ――貴方には、忘れたい過去がありますか?


 それは、痛みから逃れるために……。

 それは、罪から遠ざかるために……。

 それは、自分を正当化するために……。


 それは、不必要と否定するために……。


 人はそれらを忘れるために、心の奥底へしまい込む。

 闇よりも深淵に。誰も立ち入れない領域にへと。

 





 少女は泣いた。

 彼女が泣かない日などない。

 人に怯え、魔に怯え、夢に怯え……。

 

「……っ、かあ、さまぁ……っ、母様ぁっ」


 この日は夜更けだった。

 酷い叫び声に駆けつけた母親は、愛し子を大事そうに抱き、安心させようと身を撫でる。

 

「大丈夫よ……、大丈夫。……今日も怖い夢を見たの?」


 少女は身を震わせ、小さく頷く。


「……暗い……中で、いっぱいの目が……私を見ているのっ。前よりも……近くなってきてるのっ。……怖いっ。もう、いやぁっ」


 その命が誕生した時から、少女は周囲から疎まれ続けてきた。

 唯一の支えが両親と極わずかな少数でしかない。

 日々襲う恐怖に苛まれ続け、幼き少女の心は酷く荒んだものとなっていた。

 





 少年は誰にも知られず、一人泣いていた。

 幼い少年には歯を食いしばり、混みあがる憎悪を戒めにへとぶつけ続ける。

 

「……なんでだよっ。……なんで……っ、母さんっ」


 生まれた時から恵まれていた少年。

 それが崩れ、少年は愛すべき母親に幽閉される。

 ただ母親に疑問を抱く。混みあがる憎悪が本来誰に対してなのかすら気づくことができず……。いや、もしかしたら目を背けてしまっていたのかもしれない。

 その怒りを向けるの事を心が止めてしまい、ただ戒めにへとばかりぶつけてしまっていた。

 いざその元凶を前にすれば、少年は自身の不満などを殺し接する毎日。


「ごめんね……。寂しい思いさせて、ごめんね……」


 謝る母親に心が痛む。悲しむ声と表情に、憎悪は罪悪感に代ってゆき、返答は励ましにへとなる。


「俺は平気だよ……。母さんは俺のために頑張ってるんだろ?」


 傷つけたくない。今この均衡を崩せば、壊れてしまった母親を更に壊してしまう気がした。

 母親を守れるのは自分しかいない。そう言い聞かせて、またその日も乗り切るのだ。






 すべてが限界を迎えてしまい、彼らは【願い】を口にする。

 目の前の世界を覆す【願い】を告げ……()()らは全て闇にへと葬る事となる。

 ……しかし、それは全て消え去ったわけではない。

 …………まだその闇に、……()()らは潜んでいる。


 そして、いつの日かまた会うだろう。

 

 ――【願い】を叶えた者たちよ。

 

 ――貴方たちが隠した、混沌としたその闇は……どれだけ貴方たちを地獄へ導くのでしょうか?

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