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厄災の姫と魔銃使い:リメイク  作者: 星華 彩二魔
第五部 六章「友人A」
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「探し物」

「お帰り炎蛇はん。お疲れ様~やで~」


「ニーズヘッグさん、お帰りなさい」


 戻ってきたニーズヘッグを迎えるソフラとエリー。

 ソフラの存在などなかったの如く、ニーズヘッグは真っ先にエリーにへと抱きつき無駄に頬ずりをしてくる。


「あ~、会いたかった姫君! 俺クソウサギのせいでいっぱい面倒な事あってもう色々限界だから気が済むまで愛でさせて、ってなんでバニーじゃないんだよ!? ふざけんなよウサ公! 姫君いつでも可愛いけどサービス精神欠けすぎだろ!?」


「落ち着いてくださいニーズヘッグさんっ」


 と。いつの間にか元の衣装に戻っている事に、ようやくニーズヘッグはソフラの存在を認識して怒号を浴びせる。

 

「え~ん、炎蛇はんにお返しするんやし、急ぎの用事あるみたいやからすぐに出れるようにしてあげたのにぃ~。酷いわぁ~」


「嘘泣きやめろ! お前のそういうとこ腹立つんだよ! かわい子ぶってんじゃねーぞ!?」


「……とりあえず、私がお願いしたんですが?」


「――許す!」


 エリーも急ぎなのはよくわかっている。

 そのためソフラからニーズヘッグの帰還を数分前に知らされたため、手早く準備に協力してもらっていた。

 ――ただそれだけだ。

 ニーズヘッグも秒で掌返しと、切り替えの早さが尋常ではない。

 

「面白い具合の差別よね♪ まあええわ。それで炎蛇はん? 例の物は?」


 そもそも、ニーズヘッグが任されていたソフラからの自称おつかいとは、蟲の領域にある魔草を取りに行くというものだった。

 けして、蟲の殲滅や八番席と戦う事が目的ではなかった。

 危うく本来の目的を忘れてしまうような流れであったことをどうにか帰り間際思い出し、ニーズヘッグは物をソフラにへと放り投げる。

 

「う~ん、確かに。お勤めご苦労様ぁん。子ウサギちゃんも返したし、ウチからはもうええよ。ほな、さようなら~」


 ソフラはハンカチをひらひらとさせて見送ろうとする。

 しかし、どこか不満げなニーズヘッグの冷めた視線が続く。


「お前、なんか忘れてないか?」


「ええ~え~?? なにぃ?」


「とぼけんなよ! 戻ったら俺の探し物にも協力するって言ってただろうが!」


「え~、そやったかねぇ~?」


「……確か、情報をくださると言っていた気が」


「ああ、そうやったね。うっかり忘れてたわぁ~。きゃふ♪」


「可愛くも何ともねーんだよ、全世界の可愛いに謝れ……」


「……そこまで言う?」


 さすがのソフラも軽口が叩けなくなるほど気落ちしてしまう。

 

「え~っとぉ。確か、マカツ草探しとるんやっけ? あれもその辺にあるやつなんやけどね~」


「それは俺も思ったが、ここしばらく探してたが、妙にねーんだが」


 ソフラはしばらく「う~ん」と苦笑。

 心当たりがあるのかないのか……。よく読めない顔をしてくる。

 

「まあ、とりあえずね~。此処から東に進んだ魔族の街に行ってみるとええよ。それなりにおっきい場所やし、お勧めしとくわ」


「……情報はなしなのかよ?」


「行けばわかるっていう情報や。ウチの名も貸してあげるで、商人相手なら手早く話が通じるさかい」


 さらっと、ソフラは紙に魔力を込めた文字を記す。

 ソフラからの物的証拠にもなるため、一応は受け取っておく。

 

「……だが、もし行く前に見つかったら無駄足になると思うんだが?」


 目的の場所までは教えられた分を考えて距離もある。道中でマカツ草が見つかる可能性もあるはずだ。

 だが……


「安心してぇ。それ()()ないさかい♪ ……まあ、それ以上に行った方がええで? 素敵な()()もあるやろうし、ね?」


 何を根拠にか、ソフラは自信満々で宣下する。

 このウサギの発言には妙な説得力もあるため、例え見つかったとしても行ってみる価値はあるかもしれない。

 

「わかったわかった。……じゃあな、ウサ公。できれば二度と会いたくないぜ」


「あ、あの……お世話になりました」


 エリーはしっかり一礼。

 今度こそと、ソフラはニーズヘッグたちを見送った。

 

 一人。残ったソフラは自分の席で細かなため息を吐き捨てる。


「……厄災……ねぇ。どっからどう見ても、ただのええ子やん。……それがどうして……世界を滅ぼす引き金を引くんか、さすがのウチでもわかりませんよ。――クロノスはん」


   ◆


 冷えた暗闇漂う夜の世界――魔界。

 争いごとがなければ不穏な静寂の空を飛翔するのは、夜の世界ではより一層際立つ白き色合い。

 うっすらと七色を宿す翼をはためかせる()は、地上を見下ろし何かを探していた。


「……何処にいるものか。あの愚か者どもは」


 口癖の愚かを呟く。

 イロハの契約悪魔――【極彩巨鳥のフレズベルグ】。彼もまた、ニーズヘッグ同様、宿主が魔界の高濃度魔素により眠ってしまったため、こうして表にへと出てきている。

 周囲は荒れた大地。一度休憩をとるため、荒野の岩山にへと降り立つ。


「一緒にいるとは思うのだが、こちらがこの状態なら、おそらくアレが表に出てきているだろうな……」


 フレズベルグが探しているのは、魔界へ来る際にはぐれてしまった同行者だ。

 クロトとエリーの事なのだが、自分の状況からニーズヘッグが表に出てきているのは明白。

 長年の付き合いもあるせいか、フレズベルグは表情を不穏とさせる。


「さすがに姫に危害はないと思うが、あの愚か者は昔っから幼子が好きだったからな……。本人に自覚はないが、一緒なら妙な気を起こしていても…………。ああ~……」


 申し訳なさそうに頭を悩ませる。

 ついでに小声で「ロリコンが……」と呟く。

 

「……それにしても、肝心の物が見当たらないな。このままではイロハが眠ったままではないか。どうなっているっ」


 フレズベルグもマカツ草を探していた。

 彼は空を飛べるためそれなりの移動範囲を有している。しかし、一向に目当ての物が見つからず、それに疑問すら抱いてしまっていた。


「あまりこの姿で長居しているわけには……。私とニーズヘッグは、ただでさえ魔界でも名があがっているからな。面倒な輩に見つかっても迷惑でしかない。……ニーズヘッグは無事……だろうか……」


 ぼそぼそと、ついニーズヘッグを気にかけてしまう。

 無意識の呟きに気付くと、フレズベルグは急に顔を赤らめて首を横に振る。


「い、いやっ。どちらかといえば姫の方が心配だっ。ニーズヘッグは先日の船でも私の事を忘れていたくらいだからな。……~っ、知らん、あんな奴っ」


 と。ニーズヘッグに対する愚痴を漏らす。それも無駄に大声でだ。

 頭の中ではニーズヘッグはどうでもよく、エリーが無事かどうかを一番に考える事にした。

 ある程度吐いて気が落ち着けば、探す事に意識を集中させる。

 周囲に目を凝らしていると、闇夜に紛れて灯りとそこそこの建造物が見えた。


「……街か」


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