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厄災の姫と魔銃使い:リメイク  作者: 星華 彩二魔
第五部 一章 「鬼の居る間」
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第五部 ★序章

 東の国、【精聖の国レガル】に着いた一行は人数を減らし、当てのない旅を再開する。

 途中で出会った異様な旅人。それは空を飛ぶ人間に心当たりがあり……。


 微精霊舞う森を彷徨うと、一行は別の世界――【魔界】にへと引きずりこまれてしまう。


 人の生きられぬ地で眠りに落ちる魔銃使い。

 何故か魔素の影響を受けない呪われた姫。

 二人を救ったのは、炎を宿す羽衣を纏う大悪魔。


  次なる舞台はレガルからの魔界。

  待つのは、【意外】【因縁】【再開】――


 故郷に訪れた二体の悪魔は、向き合い何を語るのか……。

 過去から続く愛称は――【友人A】。


【厄災の姫と魔銃使い】第五部 魔界編:前編 開幕

 

挿絵(By みてみん)

「……っ、……っっ」


「……ほら、泣くなって」


 少年は傍らにいたもう一人の少年に寄り添い励ます。

 子供()()は日の光を知らない荒野にいた。

 親など知らず、そんなものは存在しない事を知っており。産まれた頃から過酷な世界を生き抜くことを強いられてきた。

 赤い少年は膝を抱えて啜り泣く白い少年の腕を引く。


「早く行こうぜ。……アイツまだ死んでねーから、起きたらまた襲い掛かってくる。……な?」


「ふぅっ、……うぅっ。……でも、羽が……っ」


 白い少年の背には翼があった。

 白く、そしてうっすらと七色を宿す綺麗な翼。

 その翼は火傷を負っており痛々しくある。

 翼は少年にとって、命と同じほど大切なものだった。それに傷がついたのだから、心を抉られるほどのショックなのも理解できる。

 それでもと、赤い少年は腕を負けじと引っ張って、少しでもこの場から離れようとした。

 この世界で傷ついた者は、放っておけば他の生き物の餌食となる。弱肉強食。それがこの世界の掟だ。

 

「……っ、いいからっ。お前だけどっか行けっ。ボクに構うな!」


 手を振り払おうと、白い少年は涙をこぼしながらそんな事を言う。

 ……それは、ただの強がりじゃないか。

 この世界に生まれた責任。弱いものはすぐ息絶える。怖くても強くあらねばならない。


「――ふざけんな! なんで俺がお前を置いてかないといけねーんだよ!!」


 大きく怒鳴ると、白い少年は身を縮こめてしまう。

 ピタッと反抗しなくなれば、残るは現状に怯えて震えるのみだ。

 それが、本当の気持ちではないか。


「お前、ほんとに強がりばっかだよな! 俺と同じくらい強いくせに泣き虫で、すぐそうやって強がる!」


「…………だ……だってっ」


「俺は嘘が大っ嫌いなんだよ!! 普通ならまだお前見た目可愛いからいいけど、こういう時くらい「助けて」って言えよ!!」


「……か……可愛いって何度も言うなぁ!! ボクは男だぞ!?」


 白い少年はとても綺麗な見た目をしている。

 それは大人になれば絶世の美女にも負けないほどの将来性を宿しているほど。その事は本人にとって誉れでもあるが、逆に女性と間違われる事を嫌ってもいた。

 素直な力ある回答に、赤い少年は手を離す。


「よし。そんだけ元気なら立って歩けっ。いつまでもめそめそすんな、余計に可愛いだろうが」


「だから可愛い言うなぁ!! 何度言わせればわかる!?」


「だったらとっとと戻るぞ! ……俺たちはまだガキだ。魔素を取り込む器官も不十分。サラマンドラの(じじい)のとこで魔素を取り込んで休めばすぐに羽も治るっ。俺だって相棒になんかあったら嫌だから、お前の気持ちもよくわかる。……俺は、お前に死んでほしくない。俺たちは対等な存在だからな」


 そして、手を差し出す。

 最初は戸惑う白い少年も、涙を拭ってその手を取った。

 途端に、赤い少年は若干顔色を青くして言葉を震わせる。


「……頼むから、絶対に俺の手潰すなよ?」


「そ、そこまで愚かではない。……すまん。こんなふうに接してくれる奴など、いなかったからな」


「まあ、それが普通だよな。……とりあえず行こうぜ」


 にかっと赤い少年は笑う。

 呆気にとられた白い少年の手を引いて、赤い空を作る火山にへと向かった。

 

 これは二体の悪魔の幼き話。

 

 後に大悪魔を称された、魔王にも近い逸材。

 赤き蛇と白き大鳥の出会い。

 

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