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一話 戦え!タムレンジャー

 

 森の中を少年が息を切らして走っていた。足は新しい切り傷のせいで血が滲んでいるが走ることはやめない。


「もっと、もっと村から離れなきゃ。でもどこに行けば……」


 少年の後ろからは大地に響く大きな音が聞こえてくる。そしてその音は徐々に迫ってきていた。






 日本から博士の発明した装置を使って異世界アクアスへやってきたレッド、ブルー、モモカ、博士の四人。彼らは、まず日本から持ち込んだ大量の荷物を隠すべく森を移動していた。荷物の下にはローラーがついており、後ろから押してゆっくりと移動している。


「ねえ、あそこの洞窟ならいいんじゃない?」


 モモカの言葉を聞き、レッドとブルーの二人は先行して見に行った。広さも充分にあるし、動物の気配もない事を確認した一行は荷物を洞窟の奥へと運び終えて休憩にすることになった。博士は疲れて眠ってしまっている。


「ふう、結構時間がかかったわね」


 ブルーも同意した。


「ああ、あまり音を立てないように移動したからな」

「せっかくヒーローやりに来たのに、なんかこそこそしすぎだよな」


レッドは少しがっくりした様子だ。日本から持ち込んだ物は補充できない。絶対に敵にばれてはいけない、ゆえに慎重にならなければならない。レッドもそれは理解しているはずだ。


「ま、早くちゃんとした拠点ができればいいんだけどね~、洞窟暮らしはちょっとね」



 三人は休憩を終えると再び仮拠点の設営を再開した。二人が作業し、もうひとりが周辺を警戒をするローテーションを組んだ。


 ローテーションが一回りして、再びレッドが森の警戒する番になった。気持ちが緩んでしまったのかレッドは警戒を忘れ、まるでピクニックの様に飛んだり跳ねたり、走ったり。遊び疲れたのかレッドは大の字になって寝ころんだ。すると何かに気づいたのか態勢を変えて地面に耳をあてた。


「やっぱり、なにかが動いてる?それも大勢?」


 レッドは右手首を抑えると博士の改造手術によって埋め込まれた装置を使ってブルーたちに連絡をいれ、音の聞こえる方に駆けて行った。






 森を走っていた少年は走り疲れて動けなくなり大きな木の陰に隠れていた。


「おねがい気づかないで」


 だがそんな願いもむなしく、奇声をあげながら少年と同じくらいの背丈の怪人が三体、付近に近づいてきた。少年はおもわず両手で口をふさいだが、体を動かしたはずみで小枝がポキッと折れてしまった。


 振り向く怪人と目が合う。体はもう動かない。少年は声をからして叫んだ。


「誰か助けてー」







 レッドは少年の声を遠くで聞くと全速力で向かった。


「そこまでだ!」


 レッドは少年から引き離すように怪人を蹴り飛ばし、あっという間に三体の敵を倒す。そして少年に近づいた。


「大丈夫かい?」


 レッドが手を差し出す。しかし少年はまだ震えていた。


「あ、ああ、あ……」


 ようやく少年が右手を動かしたと思ったら、レッドの手を握らず、そのまま上の方を指さした。少年の指さした先の木の上には、巨大な怪人が潜んでいた。少年と目があうと怪人はニヤリと笑って飛び降りる。


 レッドが振り向いた時には既に怪人は目の前まで下りてきていて、拳を振り下ろしてきた。レッドは致命傷は避けたものの頭に攻撃をうけて足元がおぼつかない。さらに怪人はさきほどの小さな怪人を呼び集めた。遠くから甲高い声が近づいてきていた。


「こいつら!小型のゴブリンに、ゴブリン男か」


 レッドがふらふらしながら確認すると小柄な六体のゴブリンが集まってきていた。ゴブリン男がゴブリンに散開するように命じると、レッドを取り囲んで攻撃してきた。ふらふらのレッドは攻撃を躱すのがやっとで次第に追い込まれていった。


「このままでは」


 レッドは少年の方をチラッと見た。するとなにかを覚悟したのか鋭い表情になり、胸に付けているペンダントの前で両腕を交差させながら叫んだ。


「クロスフラーッシュ」


 そしてすぐさま空中に飛ぶと激しい光が放たれる。やがて光が胸のあたりに集まると変身したレッドが現れ着地するとこう叫んだ。


「タムレンジャーレッド!」


 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 タムレンジャーは左腕に内在するパワーと、博士によって右腕に埋め込まれた装置を重ねると二つのパワーが反発しあって、ものすごいエネルギーが発生させる。胸のペンダントがエネルギーを吸収することで着ていたスーツが変化しヒーロースーツとなって全身を包みこみ変身するのだ。

 ▲ ▲ ▲ ▲ ▲


 その場で中腰になって回転しながら周囲の状況を確認するレッド。ゴブリンたちはグルグルと回りながらレッドとの距離を詰めてくる。そしてゴブリン男の指示で一斉に飛びかかった。


 レッドはそれを見ていたが全く動かず、六体のゴブリンに次々と覆いかぶさられてしまった。次の瞬間レッドが背筋を伸ばし両腕を左右に広げるとゴブリンは全員遠くにふっ飛ばされ、木にぶつかって絶命した。


 ゴブリン男はレッドよりも一回り大きい体格であったが、レッドのパワーを見て思わず後ずさった。レッドはひるんだ敵を見逃さず、距離を詰めて右こぶしを突き出すとゴブリン男を一撃で倒したのだった。



レッドは一息入れると少年に近づいて名前を尋ねた。


「……カイです、九才です」


 少年は恐る恐る答えた。レッドは逆にハキハキした声だ。


「俺はレッド。タムレンジャーレッド。今日のことは秘密にしてくれるかな?カイ」


 言い終えるとカイ少年に近づいて再び右手を差し出す。


「うん!!」


 今度は元気な声で応えて力強く右手をつかみ、少年は秘密を守ることを約束したのだった。


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