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その98 お兄ちゃんと呼ばせたい訳ではありません

 「ニア。ここからは俺とニアで街の中へ入ろう。リュートはともかく、流石にシルキーを連れて行くのは無理だ」


「分かりました。シルキー。ここまでありがとう」


「いえ。ニア様の為ならいつでも力になります。また私の力が必要になる時があればお呼び下さい」


 二アがシルキーに手をかざすと、シルキーの足元に、召喚された時と同じく、白く輝く魔法陣が出現した。


 魔法陣が光り輝くとシルキーの姿は魔法陣の中へと飲み込まれていった。


「それじゃあ街で怪しまれない様に俺とニアの関係性を決めておこう」


「私とシオンさんの関係性?」


 ニアは不思議な顔をしている。


「ああ。二アの正体を知られる訳にはいかないから、何か代わりの設定を考えておくんだ。うーん..よし! ニアは俺の妹と言うことにしておこう! 俺が異世界人だということを知っている人間は、サームに居ないと思う。俺の妹と言っておけば二アが魔族だと疑われることはないだろう」


「私がシオンさんの妹ですか?」


「そうだよ。ニアもそのつもりで頼む。俺のことを呼ぶときもお兄ちゃんと呼んでくれ」


 恥ずかしいのか、ニアは顔を赤くしている。


 ちなみに自分のことをお兄ちゃんと呼ばせる為に、兄弟という設定にした訳ではない。


 美少女にお兄ちゃんと呼ばせて快感を得る趣味の者も居る様だが、断じて俺は違う。兄弟という設定が一番しっくりくると思ったからだ。


「分かりました...。シオンお兄ちゃん」


 ニアは恥ずかしそうにそう言った。


 美少女にお兄ちゃんと呼ばれるのは悪くない。俺にも特殊な趣味の人間の気持ちが理解出来そうだ。


「それじゃあ街へ行こうか」


 俺は水筒を、空になった干し肉の袋に入れ、リュートの身体にくくりつけると、二アに左手を差し出した。


 ニアは右手でしっかりと俺の手を握ってくれた。俺はそのままニアの手を引き、街の入り口へと向かって行った。


 街の入り口に居る武装をした男は、どうやら兵士の様だ。城の入口に居た兵士達と同じ様な格好をしている。おそらく入口の警備をしているのだろう。


 ヤブンと違い、この辺りは物騒だということなのだろうか? 兵士に何か聞かれた時の対応をイメージしつつ、俺は兵士の傍に近寄った。


「兄ちゃん。見掛けない顔だな? こんな時間に[サーム]に何の用だい?」


「ドラゴンと従魔契約をする為に来ました。この娘は俺の妹で、どうせなら一緒に旅を楽しもうと思いまして」


「ド、ドラゴンじゃないか!? だ、大丈夫なのか?」


 男はリュートに気付き少し後退りをした。やはりドラゴンは怯えられる生き物なのだろう。


「はい。大人しいので人間に危害を加えることはありません」


「そ、そうか...。それにしても兄弟? 妹の方は凄く可愛い娘だが、兄貴の方はパッと...。いや、何でもない、気にしないでくれ」


 男は言葉を止めたが、俺には男が何を言おうとしているかがわかってしまった。


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