その95 人として好きって意味ですよね?
「二ア。何故、君はそこまで...」
「私...人間の人から優しくされたのって初めてなんです..「。人間は私が魔族と分かると皆、憎しみを持った目で私を見て、危害を加えるだけでした。もちろんそれは仕方のないことかも知れません。魔族と人間は戦争をしているんですもんね...」
二アは人間から危害を加えられていた。
だったら、二アの身体の傷は人間によって負わされたものなんだろう。
ここまでされて人間と仲良くなりたいと言える二アは、俺なんかよりも余程強い心を持っているんだろう。
「二ア...」
「シオンさんみたいな優しい人間に出会って、私はシオンさんが好きになってしまいました。シオンさんさえ良ければずっと一緒に居たいですし、シオンさんを守る為なら何でもします!」
こんな美少女から好きだと言われて嬉しくない筈がない。
だが、二アが好きだというのは男女の好きではなく、人として好きだという意味だろう。
ずっと一緒に居たいと言ってくれるのも嬉しいが、俺はそう遠くない未来にこの世界から消えてしまう人間だ。
二アとずっと一緒に居ることは出来ない。
「二ア...。俺は元々この世界の人間じゃない。だから魔族に対しても特別な感情がないだけなんだ。俺は君が思うような優しい人間じゃないよ」
俺がそう二アに告げると、二アは顔をプクッとさせ少し怒った顔をした。
そんな顔もとても可愛く見えてしまう。
「そんなことはないです! シオンさんは優しいんです!」
正直、誰かにこんな風に思ってもらえることなど、1度もなかった俺には二アの気持ちは嬉しかった。
気が付くと俺の手は自然に二アの頭へと伸び、二アの頭を撫でていた。
「二ア。ありがとうな」
頭を撫でられると、恥ずかしかったのか二アは顔を赤くしている。
「[サーム]の街まではまだ時間が掛かる様ですし、シオンさんのことを色々聞かせて下さい」
「俺の話しか、何か恥ずかしいな...」
サームに着くまで時間もあることだし、俺は二アに全てを話した。
現実世界ではボッチのモブキャラだったこと。
異世界に憧れを持っていて、本来来る筈だった春香の代わりに自らこの世界に来たこと。
折角この世界に来たのに職業が村人で最弱のステータスだったこと。
そして魔王を倒して英雄になろうと思っていること。
誰にも話していない〖五十歩百歩〗のこともニアには話した。
何故か、ニアになら話しても良いと思えたからだ。
二アは俺の話を呆れた顔など一切せずに、真剣な顔をして最後まで聞いてくれた。




