その94 召喚師じゃないですよね?
従魔契約でリュートと契約した場合、契約の力でリュートを無理矢理戦わせることになる。
リュートと意識を通わせて戦って貰うなら良いが、強制的に戦わせるというのは違う気がする。
魔王を倒す為に戦力が欲しいのは事実だが...。
俺が難しい顔をしながら悩んでいると、二アが不安そうな顔をしている。
「シオンさん。どうしたんですか?」
俺は二アに、街中にリュートが居ても人が怯えないように、従魔の証を着けさせるためサームに向かっていることを話した。
俺の話を聞き終わった後、二アはニッコリと微笑んだ。
「やっぱりシオンさんは優しいんですね。それなら良い方法がありますよ」
「良い方法?」
「はい。リュー君と従魔契約をした後で従魔の証を着けることになります。その証を着けた後に従魔契約を破棄すれば良いんです。そうすれば従魔の証は身に着けたままですが、リュー君は従魔ではなくなります」
確かに二アの言う方法なら、リュートに従魔の証だけを着けることが出来る。
戦うかどうかはリュートの意志に任せれば良い。
まぁ、結局は俺とリュートが従魔契約出来ることが前提の話にはなってくるが...。
「ありがとう。二ア。そのやり方でやるよ。まぁ、俺がリュートと契約出来るかが分からないけどね」
「シオンさんなら絶対に出来ますよ! 私が保証します!」
何故、二アは俺をこんなに信じてくれるんだろうか? 俺なんて現実世界ではただのモブキャラだし、こっちの世界でも村人だ。
まぁ、こっちではただの村人ではないが。本当の俺を知ったら二アは軽蔑してしまうだろうか...。
「ありがとう。二ア。そう言えば二アは、シルキー以外にも召喚出来るモンスターが居るのかい?」
「はい。私が召喚出来るモンスターは、ユニコーンのシルキーを含めて10種族になります」
賢者なのにそれだけの数のモンスターを召喚出来るなんて、やはり二アはただ者じゃない。
正直二アならヒュドラすら倒せるんじゃないだろうか。
二アが共に戦う仲間になってくれれば、相当な戦力になると思うが、流石にこんな少女を戦わせる訳にはいかない。
「二アは凄いんだな。でも二アは俺以外の人間の前で、その力を使っちゃ駄目だぞ。二アが特別な力を持っていると知られれば、魔族だとバレてしまうかも知れないからさ」
「はい。ですが、シオンさんの身に危険が及ぶ様なことがあれば、私は迷わず力を使います! 魔族だとバレてしまっても構いません!」
二アが何故、ここまで俺を思ってくれるのか。俺には全くわからなかった。




