その93 俺はロリコンではありません! 再
シルキーの走るスピードは馬車よりも遥かに速いスピードだった。
これだけの速さで走っているのに背中に乗っているだけの身体はかなり安定している。
このスピードを維持出来るなら今日中には[サーム]に着けるかも知れない。
「ちなみに聞くけど、何も聞かずに走っているということは、シルキーは[サーム]の街の場所は知っているんだよな?」
「当たり前です。この大陸で私の知らない場所などありません」
それは助かる。シルキーが言っていることが真実ならば、シルキーさえ居れば何所にでも行くことが出来る。もちろん黄昏の迷宮にだって行ける筈だ。
「そんなことより、人間が気軽くシルキーと呼ばないで下さい。それから二ア様に近付きすぎです。いくら二ア様が美しいからと言って、二ア様に手を出すことは許しませんよ」
確かに俺と二アの距離は身体が触れ合う程の距離だった。
だが、それはシルキーの背中という狭いスペースにいれば仕方がないことだと思う。もちろん俺にやましい気持ちはない。
「手を出すか! 俺はロリコンじゃない!」
つい、うっかりと叫んでしまった。
この世界にもロリコンという言葉があるのかは分からないが、キョトンとしているニアを見る限り、二アは言葉の意味を知らないようだ。
「ロリコン? とはなんですか?」
「二ア様。それはですね...」
シルキーが走りながら首を曲げ、二アの耳元へ顔を近付けると、何かボソボソと呟いている。するとそれを聞いた二アの顔が赤くなっていくのがわかった。
「シオンさんはロリコンなんですか?」
二アは顔をこちらへ向けて、じっと俺の顔を見つめている。その顔は変態を見るような顔には見えないので、俺は少し安心した。
「ち、違うよ! だから安心してくれて良いから」
「そうですか...」
そう言うと二アは少しガッカリとした顔をした様に見えた。
俺のロリコン説に一区切りついた所で、気になっていた質問を二アにしてみた。
「モンスターを従属させる従魔契約と、二アの使うモンスター召喚って同じ様に感じるんだけど、何か違いはあるのかい?」
「基本的には同じ様なものなのですが、召喚魔法はその場にいないモンスターを、いつでも好きな時に呼び出せるという違いがあります。また従魔契約をしたモンスターは契約の力により、強制的に主人の命令に従うことになりますが、召喚されたモンスターに関しては違います。モンスター本人の意志で主人に従っています。なので、もしモンスターが心変わりするようなことがあれば、主人に従わないことも起こり得ます。モンスター召喚はモンスターが召喚者に仕えたいという気持ちの上に成り立っているんです」
二アの話を聞き、リュートを従魔契約という形で縛り付けても良いものなのかという悩みが生まれた。




