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92/269

その92 ただの口の悪い馬なのですが?

「驚いた...ユニコーンって喋れるのか!?」


 ユニコーンはジロリと俺を睨むと視線を二アへと戻した。


「二ア様? この人間は一体なんでしょうか?」


「この人はシオンさんと言うの。シルキーには私とシオンさんを、サームの街まで連れて行ってもらいたいのだけど?」


 ユニコーンの名前はシルキーと言うらしい。


 ユニコーンと言うのはモンスター名で、モンスターにはそれぞれ個体名が付いているのだろうか? シルキーはその名前といい、声の高さといい、メスで間違えないだろう。


「二ア様。私が背中に乗せるのは二ア様の様な、純潔の乙女のみと決めております。匂いで分かりますが、この人間はただの童貞臭いガキじゃないですか。そんな人間を背中に乗せるなど、私の身体が汚れます。せめて二ア様の様に美しい顔立ちをしてくれていれば良いものを、こんなパッとしない顔の男...。私の背中に乗る資格はないと思いますが?」


 こ、このクソ馬が! ボロクソ言いやがって! 匂いで童貞がわかるとか、そんか能力あるのかよ! まぁ、実際に当たってはいるが...。


 聖獣と呼ばれるユニコーンに神聖なイメージを持っていたが、実際はただの口が悪い馬だ。


 何ならここで俺が倒して、俺の経験値にしてやろうかとも思ったが、二アに悪いのでそれは止めておこう。


「シルキー! そんなことを言うものではありません! 貴女は契約者である私の命令に従えないというのですか!?」

 

 あれだけ大人しい二アが、シルキーに対して大きな声を上げた。二アの剣幕に押されて一瞬シルキーが震えた様にも見える。


「申し訳ありません。二ア様...。ご命令に従います」


 シルキーは足を曲げて腰を低くし、俺達が背中に乗りやすそうな体制をとった。


 シルキーには馬の様に手綱などが付いておらず、仮に背中に乗ったとしても、走り出したら直ぐに振り落とされてしまう気がする。


 俺がシルキーの背中に乗ることを躊躇っていると、二アがシルキーの背中へと飛び乗った。


「シオンさんも後に乗って下さい」


 二アに促され恐る恐るシルキーの背中に乗ると、その安定感はまるで椅子に座ってでもいるかの様だった。


 不思議に思い、少し身体を傾けてみるが、バランスが崩れることはなかった。


「あれ? 何か落ちないぞ?」


「ユニコーンの背中には、乗者が落ちないような特別な力が働いています。どれだけスピードを出したとしても、私達が落ちることはありませんよ」


 なる程。やはり聖獣と呼ばれるだけあって、ただの口が悪いだけの馬ではない様だ。


 落馬の不安がなくなり、安心してリュートを二アの前に乗せると、シルキーが腰を上げた。


「それでは出発します」


 シルキーはサームに向けて走り出した。


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