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70/269

その70 お裾分けです

 そんな超危ない奴に狙われるとか本気で嫌なんですけど...だが、俺はタリアに召喚された人間ではない。その点で言えばセーフなのかも知れないが、念の為、今後はもっと慎重に行動をして、異世界人だということがバレないようにしなければ...。


「ありがとうございます。俺、この世界のことが全然分かってなくて...魔族側にも異世界人が居るとか全然知りませんでした...」


「城で説明は受けなかったのか? 一番気を付ける相手として、魔族側の異世界人のことは必ず説明されると思うのだが?」


「は、ははは...」


 あの後、慎吾達は説明を受けているだろうが、勝手に出て来てしまった俺はそのことを全く聞かされていない。ハンスに対して笑って誤魔化すことしか出来なかった。


「そろそろ夜になる。俺は食事にするつもりだが、お前も用意はしているのか?」


「はい。リュートの分もちゃんと用意してあります」


「そうか。では俺は先に食事にさせてもらおう」


 ハンスは腰の袋から食べ物を取り出すと口へと運んだ。俺と同様干し肉と、乾燥させたパンの様な物を食べている。周りを見渡すとグレンとバウアーも食事を始めていたが、ジェシカとアンナには食事を取る素振りがなかった。


 俺が2人に近寄るとアンナが羨ましそうに3人の食事を眺めていた。


「2人は食事を取らないのですか?」


「ええ...恥ずかしながら馬車に乗る為に、持っていたお金を全部使ってしまって、食べ物を買うお金がなかったの...」


 ジェシカは恥ずかしそうな顔をしている。


「だったら俺が用意していた干し肉をお分けしますよ。もちろんお金は必要ありません」


「...流石に貰う訳には...」


「気にしないで下さい。アンナちゃんがリュートと遊んでくれているお礼です」


 リュートは馬車に戻って来てからずっとアンナと一緒にいる。リュートは俺なんかよりも全然アンナに懐いている様に見える。


 俺はリュートに持たせてある袋を開け、2人で食べる分には充分な量の干し肉をアンナに手渡した。


「わぁー、お兄ちゃん! これ、貰っても良いの!?」


「ああ。お母さんと2人で食べるんだよ」


「わぁーい! お兄ちゃんありがとう!」


 アンナは1つだけ残して残りをジェシカに渡すと、干し肉を食べ始めた。余程お腹が空いていたのか満面の笑みを浮かべながら食べている。


「本当にありがとう」


 ジェシカは頭を下げると自分も干し肉を食べ始めた。


「気にしないで下さい。リュートの分が少し減っただけですから!」


「キュイー! キュイー!」


 リュートは俺の言葉を理解したのか、少し悲しそうに鳴き声を上げた。

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