その68 何かディスられているのですが?
「なぁ、アンタ。村人なのにあんな凄いユニークスキルが使えるってことは、もしかして異世界人じゃないのか?」
「え? な、何の話ですか?」
グレンの言葉に心臓の鼓動が早くなる。俺が別の世界の人間だとバレたところで何か問題がある訳ではないが、あれだけ低いステータスを見せてしまったこともあり、出来れば秘密にしておきたいところだ。
「隠さなくても良い。あのLVであれだけ低いステータスとなれば逆に異常だ。そんな人間など、この世界にいる筈がない」
グレンの言葉に胸が痛む。グレンに俺のことをディスっているという自覚はあるのだろうか? 確かにステータスの低さは自分でも自覚はしているが、他人に言われると結構ショックを受けてしまう。
「異世界からこの世界に召喚される人間には2通りの人間が存在する。1つは単純に強い人間。ズバ抜けたステータスを持っている者だ」
それは慎吾達の様な人間のことだろう。下手をしたら俺がLV50とかになっても慎吾のLV1のステータスを越えることが出来ないかも知れない...それ程俺と慎吾達には差があった。
「もう1つは特殊な能力を持っている人間だ。アンタのユニークスキルみたいにな。アンタのステータスから察するにアンタは後者の人間だろう」
どちらも違うんですが...そもそも俺は呼ばれてこの世界に来た訳じゃないんです...。異世界に行ったらチートで無双出来ると勘違いして、勝手にこの世界に来ただけなんです! そう言いたかったが、この状況でそんなことが言える程、俺のメンタルは強くはなかった。
「もし俺が異世界人だとしたら何かあるんですか?」
「俺達のパーティー〖ホワイトアイ〗に入って欲しいんだ。もう2度とあんな思いはしたくない! その為にも俺達は強くならなければならない。アンタが異世界人だと言うのならその力を俺達に貸してくれ!」
確かに俺の能力はパーティー内でも役に立つかも知れない。ただグレンには嘘を吐いてしまったため、グレンは俺の能力のデメリットのことを知らない。
俺にはスライム相手にも互角の勝負になってしまうという弱点がある。このことを知ってもグレンが俺の力を欲しがるかは分からないが、パーティーに入ることは俺にとってもメリットがある。正直に〖五十歩百歩〗のことを話せば、ザコモンスターを全て任せることが出来るからだ。
ただ、俺の最終目標は魔王を倒すことだ。このパーティーでそれが可能なのか。俺が悩んでいるとグレンはそれに気付いたのか俺に背を向けた。
「返事は今じゃなくても良い。[サーム]に着いたら聞かせてくれ」
グレンはそう言うとバウアーの元へと戻って行った。




