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その66 冒険者の死後は切ないです

「リンダァァァ!」


 グレンがリンダの遺体にすがりつきながら涙を流しているが、当然リンダから返事が返って来ることはなかった。ハンスとバウアーもそのグレンの姿を黙って眺めている。


 暫くの間涙を流していたグレンが、意を決した様に起ち上がると、近くの地面に剣を突き刺した。


 突き刺した剣を上下に動かしながら小さな穴を掘ると、剣を地面に置き素手で穴を広げだした。


「グレンさん...一体何を...?」


「決まっているだろう...リンダを埋める穴を掘っているんだ...」


 こんな何もない場所に穴を掘り、遺体を埋めるとは普通とは思えない。せめて街まで連れて行ってあげて、しっかりと弔ってあげるべきだ。


「こんな場所にリンダさんを!?」


「お前は冒険者じゃないから分からないと思うが、冒険者ならこれは当たり前のことだ。サームまでは後2日掛かる。その間リンダを馬車に乗せて走らせる訳にはいかないからな...」


 そうか。確かに冒険者ともなれば何所で死が待っているか分からない。2日くらいの間なら馬車に乗せていても問題はない気がするが、移動に10日間掛ける場合もあるかも知れない。そんな時に遺体を10日も馬車に乗せていたら腐敗もするだろうし、それこそ無残な姿をずっと晒すことになる。


 グレンの判断は冒険者としては当然の決断なのかも知れない。あっちの世界の常識がこっちの世界の常識にはならないのだろう。


 俺は冒険者の最後を重く受け止めることとなった。


 バウアーも穴を掘るのに協力し、10数分が経過すると人1人分が入れる程度の穴が完成した。


「ゴメンな...リンダ。必ずまた戻ってくるからな...」


 グレンはリンダの遺体を抱き上げると穴の方へと運び、穴の底にそっと置いた。


 リンダを穴に降ろすとその上から掘った時に出た土を落とした。暫くするとリンダの身体は完全に土に埋まり、もう姿を確認することも出来なくなっていた。


「馬車に戻るぞ...」


 グレンはそう発すると馬車の方へ向かい歩き始めた。無言のままハンスとバウアーもグレンの後ろに付いて行っている。


「リュート。俺達も馬車に戻るぞ」


「キュイー!」


 俺とリュートも馬車の方へ向かうと、御者席の方で2人の御者が頭を押さえて、身体を丸めながら震えていた。


「盗賊達は全滅したぞ。馬車を出してくれ」


 ハンスがそう伝えると御者達は頭を上げて、安心した様な顔を見せた。


「あの数の盗賊に襲われた時はもう駄目かと思いました! 流石バウアーさんです!」


「今回、俺は殆ど役に立てなかった。盗賊を倒せたのはアイツらのお陰だ」


 そう言うとバウアーは俺達の方を指差した。

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