その6 期限は半年間しかないようです
「冒険者ギルド?」
「そうだ。冒険者ギルドでは様々な依頼を受けることが出来る。モンスターの討伐依頼なら、モンスターを倒すことで経験値が手に入りLVが上がったり、依頼の報酬で良い装備を整えることも可能だ。また来たるべく半年後に向け、四天王を倒しに行くパーティーメンバーをギルドで探すという方法もある」
はい出ました。このパターン! 普通なら異世界召喚してまで呼んだ人間には、最強の装備を与えるとか充分なお金を渡すとか色々あるでしょ!? でも呼んだ側は一切そんなことはしてくれずに、転移者任せ。考えれば理不尽極まりない話だ。
だが、四天王を倒しに行くのは1人ではなく、パーティーで向かうということらしい。
如何に強い仲間を見付けられるかが、重要になってくるだろう。
「分かりました! それで冒険者ギルドの登録と言うのは、何所で出来るのでしょうか?」
「ここから南にある[ヤブン]という街に、冒険者ギルドという建物があるので[ヤブン]へ行き、登録の方をして来てくれ。[ヤブン]までは弱いモンスターしか現れない筈なので、お前達が危ない目に合うこともないだろう」
王様? 完全に俺のことを忘れてますよね? 弱いモンスターの基準が分からないけど、俺でも勝てるくらいのモンスターなのだろうか。
「お主達には、それぞれモンスターと戦う為の武器を渡しておこう」
そう言うと兵士の1人が慎吾達に武器を渡していた。
慎吾には鉄製の剣、大樹には鉄製の斧、千恵には木製の杖が渡された。木製の杖なんかで殴っても、モンスターにダメージを与えられるとは思わないが、多分、攻撃をする為の武器ではなく、魔法を補助する効果でもあるのだろう。
当然俺が武器を渡されることはなかった。ちょっとステータスが低くて職業が村人だからって、扱いが悪過ぎると思うんだが...。
「半年後までに、異世界から人間を召喚することは出来ぬので、四天王の1人はタリアの精鋭を集めて倒す他ないだろうな...」
「王様! 半年間の間に、私が必ずつよ...ぐはっ!」
王に言葉を伝えようとすると、突如、腹部に強い衝撃と痛みが走った。衝撃で後ろに飛ばされると一瞬目の前が暗くなる。少し落ち着いてから目の前を見ると、こちらに向けて足を振り上げている大樹の姿があった。
「や...山下君...一体何を...?」
「何をじゃねーよ!? クソみたいな雑魚のクセして、強くなれるとか夢見てんじゃねーよ!!」
どうやら俺は、大樹に思い切り蹴飛ばされた様だ。身体が後ろに飛ばされる程の勢いで蹴られたとなると、大樹と俺の能力差からいけば、下手をすれば死んでいてもおかしくないレベルだ。
「お前が春香を突き飛ばしたせいで、春香の代わりにお前の様なクソ雑魚が、こっちに来る羽目になって、タリアの人達の大迷惑になってるじゃねーか!!」
「何と? 今の話しは誠の話か!?」
王は玉座より起ち上がると、驚きの表情を見せている。本来召喚されるべき人間ではない者が召喚されたことは分かっても、その経緯までは分からない様だ。




