その53 無口で無愛想でも根は良い人みたいです!
流石に名前がたまたま白と黒なだけで、ブラックアイとは関係ないよな? あっちは3人とも山賊の様な格好をしていたが、こっちのパーティーはそんなことはないし、3人の中には女性も混ざっている。
「紹介しておこう。彼女の名前はリンダ。魔道士でDランク冒険者だ」
リンダの見た目は若く、多分俺よりも少しだけ上くらいの年齢だと思われる。腰まで届く長い赤髪に、茶色のローブを身に着けている。手には木の杖を持っているが、結構使い込まれているためか、かなり痛んでいる様に見える。
「宜しくねー!」
「宜しくお願いします!」
普段の顔は普通だが、挨拶をした時に笑顔を見せたリンダは可愛かった。笑顔が似合う女性とはリンダの様な女性のことを言うのかも知れない。出来れば彼女には情けない姿を見せたくないものだ。
「それからこっちの男がバウアー。戦士でCランク冒険者だ」
バウアーは、戦士と言う割にはかなり軽装で、身体には何かの皮で作られた鎧を身に着けているだけだった。大きな斧を手にしているが、あれを自在に振り回せるとしたらかなりの力持ちだろう。
「宜しくお願いします!」
俺が挨拶をするとバウアーは無言で頭を下げるだけだった。
「悪いな。バウアーは無口で無愛想だが、根は悪い奴ではないんだ。多めに見てやってくれ」
「はい。大丈夫です!」
バウアーからは俺と同じでコミュ障の匂いがする。俺はこっちに来てからだいぶマシになったが、バウアーはアッチに居た時の俺よりも酷い気がする。
「それで俺が〖ホワイトアイ〗のリーダーをしている剣士のグレン。Cランク冒険者だ。宜しくな!」
「宜しくお願いします!」
パーティーのランクとしては〖ブラックアイ〗よりも若干低いと言ったところか。
戦闘を必要とする依頼を受けずに、ランクを上げている者もいる筈なので、ランクがそのまま強さに直結する訳ではないと思うが、ある程度の目安にはなるだろう。
これで残り1人以外とは全員挨拶を交わしたが、最後の1人が、頭以外を全身鎧で覆っている男で、顔はずっと無表情のまま。馬車の中でも一番声を掛けにくい空気を出している。
俺が男の方を見ているとグレンが察してくれたのか、男に声を掛けてくれた。
「ハンスさん。シオンが話したそうにしてますよ? ハンスさんは黙ってると恐くて声を掛けにくいですからね」
グレンが冗談交じりに声を掛けると、男は俺の方に近付いてきた。
「おぉ! すまん。すまん。仕事中はいつも緊張感を持ちながらやっているものでな」
男は意外にも気さくに話掛けてきてくれた。




