その52 白と黒ですか
箱の中に居たのは6人。少女と30代くらいの女性の2人組。年齢的におそらく親子だと思われる。冒険者風の3人組。そして全身を鎧で固めている男が1人。この男も冒険者だろうか? 明らかに1人だけ重装備をしていて馬車の中でも浮いてしまっている。
「[サーム]まで、ご一緒させて頂くことになりましたシオンと言う者です。皆さん宜しくお願いします」
俺は軽く頭を下げながら挨拶をすると、馬車の箱へと乗り込んだ。その後ろからは干し肉が入った袋を身体にくくりつけながら、宙を飛んでいるリュートが付いて来ている。
「わぁー、可愛いなぁー!」
少女がリュートに近付くなり頭を撫でた。
「キュイー! キュイー!」
頭を撫でられたリュートは嬉しそうに鳴き声を上げている。いきなりリュートに触れた時はビックリしたが、リュートも嬉しそうにしているので良しとしよう。
「本当に可愛らしいドラゴンね」
女性もリュートの頭を撫でている。
「キュイー! キュイー!」
リュートは嬉しそうな顔をしている。子供ならまだしも、大人の女性がドラゴンの頭を撫でるとか、恐怖は全くないのだろうか。
「初めまして。私の名前はジェシカ。こっちは娘のアンナよ。[サーム]まで宜しくね!」
「初めまして。シオンです。[サーム]まで宜しくお願いします!」
ジェシカの格好を見ると街にいた人間と同じ様な格好をしている。街の住民と言ったところだろうか? アンナの方も街の子供が着ていた服と同じ様な服を着ている。
「へぇー、本当にドラゴンの子供じゃないか?」
3人組の1人がリュートに近付いてきた。
男は中分けの金髪で銀色の鎧を身に着けているが、くすんだ色をしているので、素材は銀ではなく鉄だと思われる。
腰に付いた鞘には剣が収まっている。
「アンタ。見た目は村人みたいに見えるんだが、ドラゴンを連れているってことはビーストテイマーなのかい?」
この男鋭いな...。見た目だけで俺を村人だと当てるなんて。そもそも村人の定義って村に住んでる人のことだと思うが、街に住んでる人はどうなるんだ? まぁ深く考えても俺が村人なのに変わりはないので、考えても仕方のないことか。
「いえ。俺はビーストテイマーじゃありません...。一応リュート...そのドラゴンと従魔契約をする為にサームに行こうと思っているんですが...」
「そうか。サームには従魔登録所があるからな。俺達3人はこの街の冒険者ギルドで受けた依頼を果たす為に、サームに向かうことになった〖ホワイトアイ〗というパーティーだ」
〖ホワイトアイ〗...パーティーの名前から嫌な記憶を思い出してしまった。




