その43 パンイチで靴下は流石に変態です
「この価格でご満足頂けましたでしょうか?」
満足? 満足どころの話ではない。あまりにも予想外過ぎる金額だが、それだけあれば当分困ることはないだろう。にしても穴が開いてなかったら倍だったとか...あの大モグラに対しての憎しみが込み上げてくる。
「え、ええ...その金額なら大満足です」
俺が了承をすると、ナッシーは腰に付けてある袋を手に取り、中から10枚の硬貨を取りだしカウンターの上に置いた。硬貨は直径4㎝程の大きさで白銀に輝いている。
その美しさに俺は魅了されてしまった。この世界で一番最初に手にするお金が白銀貨という人間など、俺くらいなものだろう。
「あの...お客様。お着替えの方は...?」
「あ!? そうか!」
この制服を売るということは、俺はパンツと靴下のみの格好になる。ブレザーの下にカッターシャツは着ているが、異世界の貴重なものだし、買い取りはこれも込みの値段だろう。
パンイチに靴下のみで歩いていたら完全に変質者だ。パンイチだけならまだしも、そこに靴下が合わさることで変態感が増してしまう気がする。先ずは先に新しく着る服を探さなくてはいけない。
「あのー。俺、着替えとか持っていないんで、この店で購入したいと思います。お金が全くないので、その服を売った分から差し引いて貰っても良いですかね?」
「えぇ、構いませんよ。そちらの中にあるもので宜しければ、貴重なものを売って頂くお礼に無料で差し上げますよ」
ナッシーが手を向けた先には10着くらいの服とズボンが掛けられている。無料で良いということはおそらく安物だろうが、別に気にすることはない。前にも言ったが、服なんて着られれば何でも良いと思ってるし、それが防御力に影響しないなら尚更だ。
「ありがとうございます! それではこの中から選ばせて頂きますね」
こちらの世界に季節が存在するのかは分からないが、今は向こうの世界でいう春くらいの気温だ。俺が選んでいるものの中に長袖の服はないが、ズボンは全て長ズボンだった。どの服も似たような感じで、大きく違うのは色くらいなものだ。
俺は適当に青色のシャツと茶色のズボンを手に取った。
「これを着させて貰っても良いですか?」
「ええ。どうぞ」
衣装を持って試着室へ入ったが、試着室には鏡などは付いておらず、服を着た姿を確認することが出来ない。
制服から、持ってきた衣装に着替え終わりじっくり見るとズボンの腰の部分に、長さ20㎝程の袋がくくり付けられていた。
この袋にお金や、ある程度のものは入れることが出来るな。俺は脱いだ制服の胸ポケットからギルドカードを取り出し、袋の中へと入れた。
新しい衣装に着替え終わった俺は制服を手にし、試着室の外へと出た。




