その39 最強の剣かも知れません
村人が武器を装備出来ないと言うが、木の枝はともかく、俺はガンツの剣を使うことが出来た。ユニークスキルのお陰で使える様になったということだろうか? だが、ドラゴンの能力になったことで剣が装備出来る様になるとはおかしな話だ。ドラゴンなんて村人以上に剣を装備出来るイメージがないのだが...。ユニークスキルとは関係なく、俺が特別に剣を装備することが出来るというなら大歓迎の話だ。
「でも、俺がドラゴンと戦った時はガンツの剣を普通に扱うことが出来ましたよ?」
「どの職業でも武器を手にして使うことは出来ます。ですが、適正装備ではない場合、その武器の攻撃力が0となってしまいます。仮に伝説級の武器で攻撃をしたところで、素手で殴るのと攻撃力は一緒になってしまうのです」
...なんてことだ。剣を使って戦っているつもりだったが、あの剣による攻撃の補正はなく、素手で殴っているのと同じだったなんて...。だとしたらドラゴンを素手で殴り殺すとか、俺って凄すぎるじゃないか! などと楽観視している場合ではない。その話が本当ならとても魔王と互角に戦うことなど出来る筈がない。
魔王などと言われてるくらいだ。どうせ物凄い装備を身に着けているに違いない。そんな相手に素手で殴り掛かるとか、拳銃を持ったヤ○ザに素手で殴り掛かる様なものだ。
しかもザコ的相手に楽をするという目標さえ失った。俺が落ち込んでいると、ふと猫耳職員の言葉を思い出した。
彼女は基本的には装備が出来ないと言った。ということは装備をする方法もあるのではないだろうか? 何か方法があるなら俺の英雄になる為の道は閉ざされてはいない筈だ。
「基本的にはって言うってことは、何か村人でも武器を装備する方法はあるんですか?」
「村人でも鎌やクワなどは武器として装備することが出来ますよ」
なるほど...そういうことか...。村人が農作業などで使う道具なら武器として使えると? おそらく鎌と言うのは戦いで使う様な鎌ではなく、草刈りなどで使う様な鎌のことだろう。
キツイ...キツ過ぎる...。仮に最強の武器と同等のクワが存在したとしても、クワで戦う英雄などかっこ悪過ぎる。それならまだ素手で戦った方がマシかも知れないが、素手では魔王を倒すのは確実に無理だろう。俺の心にドンドン絶望の二文字が浮かんでくる。
「あ! でもそう言えば、村人だけが装備出来る専用の剣があると聞いたことがあります」
!? 村人専用の剣? 村人の俺にはかなり心動かされるワードじゃないか。案外そういう武器は勇者が装備出来る最強の剣よりも強かったりするパターンが多い。最初の俺の目標は、その剣を手に入れることに変更された。




