その38 衝撃的な発言なのですが?
「お姉さんはなんで俺にガンツ達の依頼を受けさせたんですか? 明らかにおかしい依頼だって気付いていたんですよね?」
猫耳職員は暫く黙って考えていたが、意を決したようで口を開いた。
「実は...ブラックアイの方々からドラゴン討伐だと言って、依頼を受ける新米の冒険者を探すように言われていました...。逆にドラゴンの討伐としておけば、新米なら雑用をやらされるだけだと思って、受けるかも知れないからと...」
やはりそうだ。何故、そんなことをしたのかは分からないが、ニーナは完全にガンツ達の片棒を担いでいる。ただニーナから率先をして俺にドラゴンの討伐を受けさせた訳ではない。依頼を受けた時も申し訳なさそうな顔をしていたし、根っからの悪い人ではない気がする。
「何でそんなことをしたんですか?」
「私が従わなければ、妹に何か起こるかも知れないぞと言われました...」
そう言うことか...本当にあの山賊達はクソみたいな奴らだな。一瞬でも良い人だと思ったあの時の自分を思いっ切り殴ってやりたい。
結局この件に関してはニーナも被害者だろう。もう俺に彼女への怒りはなかった。
「それで...今回の件ですが、ギルドマスターに報告されてクビにでもなるようなことがあれば、妹との生活が出来なくなってしまいます。貴方を危険な目にあわせて、本当に申し訳ないとは思いますが、どうかこのことは...」
ニーナは泣きそうな顔をしている。最初から上司に報告する気などは全くなかったが、折角なので情報だけは色々と集めておきたい。
「報告するのは止めるので、後2、3聞きたいことを聞いても良いですか?」
俺が報告しないと言うと猫耳職員はホッとした顔をしている。やはり女性に悲しい顔をさせるのは気持ちの良いものではない。
「私にお答え出来ることでしたら何でもお答えします」
とにかくザコモンスターを瞬殺出来るようになるため、装備だけは良い物を装備しなくては。能力が同等になっても装備さえ強い物を身に着けていれば、ザコモンスターくらいなら一掃出来る筈だ。
「この街で買える最強の装備っていくらくらいするんですかね?」
俺の最初の目標はこの街の最強装備を買うこと。どうせこんな街なんかじゃ、大して高価な装備は売っていないだろう。
「おそらく金貨300枚程あれば一式揃うと思いますが、村人のシオンさんが装備出来る様な物は売っていませんよ? 基本的に村人は武器や防具を装備出来ませんから」
「え?」
衝撃的な発言を聞いたことで、一瞬俺の中で時間が止まっていた。




