その32 最弱モンスターとの再戦です
戦いは終わったが、腹部に受けた傷は当然そのままになっている。
いつもならモンスターと出会わない様に願うところだが今は違う。早くモンスターと出会ってこの傷口を治さなければ、いくら致命傷ではないとは言っても、出血多量で死ぬ可能性が出て来る。
そして何よりも物凄く痛い! 当たり前だ。腹に穴が開いているのに、ちょっと痛いくらいで済まされる訳がない。
必死で辺りを見渡しながらヤブンへ向かい進んでいるが、会いたい時に限ってモンスターに出会えないものだ。そして、もし仮に俺の予想が間違っていて、モンスターとの戦闘になってもHPが回復しなければ、こんな負傷を負いながらモンスターと戦うことになる。
不安材料を抱えながらも辺りを見渡していると、そこにはスライムの姿があった。
スライムは360度どの方向から見ても同じに見えるので、こちらを向いているかが分からない。回復しなかった時の為に背後から回り込んで攻撃をしたかったが、背後が分からないので、仕方なくそのまま突っ込んで行った。もちろんこれが背後からの攻撃になっている可能性もある。
スライムを殴ってやろうと接近すると俺の身体が輝きだし、腹部の傷が塞がった。それと同時にずっと苦しんでいた痛みも完全に消え去っている。
やはり予想は正しかったようだ。そのままスライムの前まで行き、思いっ切り拳を振り上げて殴った。
グニュッという感覚が拳に伝わるだけで、ダメージが入っている感じはしない。だが木の枝を武器に戦った時もこんな感じだったが、結局スライムを倒すことは出来た。俺は何度もスライムを殴った。するとスライムが身体を揺らしながら反撃をしてきた。
スライムの身体が俺に当たると、その拍子に後ろに飛ばされて尻餅を着いてしまった。どうやらスライムの正面から攻撃をしてしまったようだ。俺が飛ばされてもリュートはスライムを攻撃しようとはせず、宙をクルクルと回っているだけだ。
今の攻撃で何となくスライムの正面が分かったので、起き上がるとスライムの背後に回り込み思いっ切り蹴飛ばしてみた。
スライムは真っ直ぐに飛んでいった。
直ぐに追い掛け、上からスライムを踏みつけてみた。
するとスライムは動かなくなり、数秒後には溶けてなくなってしまった。
木の枝で攻撃した時よりも早く倒せたのは、人間でいうところの急所の様な場所を攻撃出来ていたんだろう。
大モグラとの戦いとこの戦いを経て、同じ能力だろうと、戦い方次第では違った結果になるということを実感していた。




