その251 いきなりドラゴンが現れたらパニックが起きてしまいます
「さぁ二人とも僕の背中に乗って」
ドラゴンの姿になっても話すことは出来るのか。
確かに今のリュートの大きさなら背中に10人近くは乗せられそうだ。
しかし街の近くにドラゴンが現れたら街の人間がパニックになってしまうんじゃないだろうか。
俺が考えているとニアが先にリュートの背中へと乗った。
「リュート。街の近くにドラゴンが現れたら皆がパニックになってしまう。街から少し離れた場所に降ろして貰っても良いか?」
「うん。わかったよー」
リュートからの返事を聞き俺はリュートの背中に乗った。
ワイバーンとは違いリュートの背中には特に掴まる場所などはない。
「リュート。俺達を降り落とさないくらいの速度で頼むよ」
「わかってるよー」
そう言うとリュートがゆっくり上昇を始める。
ある程度の高さまで上昇するとマースに向けて発進する。
リュートの速度はかなり速く、ワイバーンの時よりもスピードが出ている気がする。しかし何故か俺達の身体にそれだけの負担はなかった。
まるで向かい風がリュートの身体を避けて吹いているような感覚だ。
よく見るとニアが右手を前に出し、その手からは魔力のようなものが放たれリュートの身体を包み込んでいた。
ニアの魔法が俺達を空気抵抗から守ってくれているんだろう。
リュートに乗り数十分が経過すると遠くの方にマースの街が見えてきた。
「よし。この辺で降ろしてくれ」
「うん」
リュートが速度を緩め下降を始める。
マースから1キロ程離れた場所にリュートが着地した。
俺達が背中から降りたのを確認するとリュートが人の姿へと変化する。
不思議だ...。人の姿からドラゴンの姿に変化をしたというのに、元に戻れば普通に俺の服を着たままの姿を保っている。
まぁ、その辺は異世界のご都合主義ということで気にするのは止めておこう。
「それじゃあここからマースまでは歩いて行こうか。マースに着いたら先ずは2人の服を揃えて、それから冒険者ギルドに行こう。お腹が空いていると思うけど、もうちょっとだけ我慢だ」
もう外はすっかり暗くなっている。服屋がまだ開いているか微妙な時間帯だと思う。
「メチャメチャお腹空いたよー...今まではシオン達と違う食事をすることが多かったけど、今日からは僕も一緒の物を食べるからねー」
あんな小さな身体の時でさえあれだけの量を食べていたんだ。
今のリュートがどれだけ食べるのか考えるだけで不安になる。
15分程歩いた俺達はマースへと到着した。




